新入行員諸君!シリーズの連載開始にあたって
はじめに
期待に胸を躍らせ…たかはわかりませんが、入社式を終えて早1週間。新入行員/社員の皆様は研修の真っ只中でしょうか?少しずつ早起き生活にも慣れてこられた頃と推察します。
銀行に入ってみて、研修が多いこともさることながら、受けなければならない試験の多さに驚かれたことでしょう。まずは証券外務員第一種ですよね。入行前に取得された方も多いでしょうか?他にも、行内の資格試験、業界の諸々の資格・認定試験も多種多様にあります。
それは何故か? …そうです。
「リスク商品」
即ち、証券関連商品や保険関連商品を販売するにも、銀行員といえども当然専門の知識が必要です。そして、知識が一定水準以上はあることを証する認定が無いと販売出来ないのです。銀行名だけで許してくれる時代ではありません。
また「自分は銀行に就職したのに、なんで証券外務員や保険販売員の資格を取らなければならないのか?」と疑問に思われるかも知れません。金融マンである以上、自分が販売に直接関わることもさることながら、敵の手の内を知ることも重要です。銀行のライバルはライバル銀行のみならず、証券会社や保険会社なのですから。
連載する内容について
さて、前置きはこれくらいにしましょう。
Fund Garageでは、これから毎週月水金の3回ずつ、「新入行員諸君!シリーズ」を連載していきます。回数としては、15回程度の予定です。
新入行員の皆さんがその毎日の限られた時間の中で勉強しなければならない、
- リスク商品のことについて。
- その販売の仕方や商品そのものについて。
を解説していきます。
私には金融業界に40年近く、色々な形で携わってきた経験があります。
- 銀行員
- ファンドマネージャー
- 投信投資顧問会社の社長
- 外資系プライベートバンクの商品・運用ソリューション・チームのヘッド
これらの経験から得たもので役に立ちそうなことを、エッセイの形でお伝えしていきたいと思います。もちろん、少しずつ、日々の勉強の邪魔にならない程度に。
そしてこのエッセイは、
銀行の研修課が行う学術的な話ではなく、現場での実学的な経験上の見地からの話です。
この連載が、これから最前線で頑張る皆さんへの応援歌になればと思っています。
現在公開中の記事
現在公開中の記事は、下記リンクからご覧いただけます。
- 「リスク商品の基本①」
〜リターンとリスクの関係について〜 - 「リスク商品の基本②」
〜コストはパフォーマンスを悪化させる要因〜 - 「オプション活用の基本」
〜オプションの価値判断、できますか?〜 - 「リスク商品の基本まとめ」
〜3つのポイントを押さえましょう〜 - 「リスク許容度①」
〜相手の実力を把握しよう〜 - 「リスク許容度②」
〜十人十色のリスク許容度〜 - 「リスク許容度のまとめ」
〜金融業界の常識を世間の常識と思うな〜 - 「コンポージャー」
〜冷静さとリスク許容度は違う概念〜 - 「コンポージャー②」
〜実際の販売時に注意する点はどこか?〜 - 「市場参加の覚悟」
〜お客様は心の準備ができているか?〜 - 「金融知識の自信」
〜真の知識人と耳年増の違いを見抜けますか?〜 - 「運用の委任志向」
〜お客様が本当に任せたいことはなんでしょうか?〜 - 「専門家への信任」
〜金融のプロフェッショナルとは〜 - 「お客様を知るのまとめ」
〜まずは自分自身を評価してみよう〜
新入行員の皆さまにお伝えしたいこと
手元に、金融庁が9,829人を対象に2021年1月実施したアンケート調査*1があります。これによると、リスク商品を使った資産運用の経験が今まで無い人は全体の37%です。運用を止めた人はこれには含まれていないので、更に多くの人が現在資産運用をしていないことが考えられます。
一方で、未経験者のうち約11%の人がリスク性金融商品を購入したいと思っています。中でも20代と30代の人は20%以上が購入したいと考えています。つみたてNISAやiDeCo等の制度的な改革は皆さんご存じでしょう。リスク商品に触れ易い環境が整備されてきたこと、インターネット上で情報を得られるようになったことから、確かにリスク商品は少しずつ身近になってきています。しかしこの調査からは、リスク商品が消費者に対して完全に普及しているわけではなく、如何に資産運用ニーズが潜在的には存在しているかを見ることが出来ると思います。
もうひとつ面白い質問があります。
「もし、あなたの立場に立ってアドバイスしてくれたり、手続きをサポートしてくれる人がいたら、リスク性金融商品を購入したいと思いますか。」
です。この質問に対しては、20代の5割、30代の4割が「購入したい」と回答しています。これは如何に皆さんの積極的な正しい内容での顧客セールスが実を結ぶ可能性が高いかを示しているでしょう。フィディーシュアリー・デューティー*2が喧しく言われる昨今、フレッシュな新入行員の活躍の場が多そうなことを示していると思いませんか。
新入行員・社員、若手の皆さまだからこそ
私は皆さんにノルマを課して尻を叩く立場ではありません。私のインセンティブは、長年この業界に関わってきた者として、
- まだ無垢の皆さんに正しい知識を身につけて頂き、
- その結果としてより多くの個人投資家の皆さんに適したリスク商品が投資家の間に広まりゆくこと
です。つまり、業界と投資家のWin Winの関係の構築です。これは金融庁の最近の考え方に反していません。
ただ実は、既に長年の経験で自分の営業スタイルが出来てしまった方に、フィディーシュアリー・デューティーを説きながら、それを踏まえた営業スタイルに変わって頂くのはかなり難しい。なぜなら、彼らには彼らの方法論があり、築き上げた長年の結果がそれを示しているからです。
結論に代えて
上記アンケートによれば、潜在的顧客層のリスク商品デビューを妨げている理由として、最も多い理由は「余裕資金がないから」ですが、続く2位と3位に下記が連なっています。
- 資産運用への「知識不足」
- 資産運用への「不安・リスク拒否姿勢」
投資家がどうしてこうなってしまうのか、しまったのか、全く分らなくはありません。ニーズはあるのに「知識不足」が大きな理由なのは何故でしょう?きちんと商品説明の合間に正しい知識を説明してこなかったからです。
「ひとつの籠に卵を全て盛るな」
という、分散投資を薦める決まり文句がありますが、通り一遍の説明は出来ても、その本質的な分散投資の理論と効能を説明出来る営業員は、案外少ないものです。(効率的フロンティア、相関、分散、共分散を正しく説明できますか?)。周期的にバランス型ファンドや、ファンドラップなどの商品のブームが来ることが明らかな証拠です。
残念ながら、この結果はこの業界がそうさせてしまったのだと素直に受け取らざるを得ません。だからこそ、まだフレッシュな皆さんに、手垢のついた教育がされていない皆さんに、正しい理解をして貰えたらと思い、この連載を始めます。これからの連載に期待して頂くと共に、是非、宜しくお付き合いください。
用語解説
*1. 金融庁「リスク性金融商品販売に係る顧客意識調査結果」, 令和3年6月30日, https://www.fsa.go.jp/news/r2/kokyakuhoni/202106/004.pdf
*2. フィデューシャリー・デューティー: 受託者責任。顧客本意の業務運営のこと。
おわりに
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ではまた次回の記事でお会いしましょう。
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(編集:Fund Garage 編集部)