【連載記事】新入行員諸君!リスク商品でござる vol.10「お客様を知る⑥ 市場参加の覚悟」

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はじめに

皆さまゴールデンウィークは楽しまれていますか? それともちょうど配属が決まって緊張で一杯一杯でしょうか? 重い5月病にならないよう、休める時は確りと休んで英気を養いましょう。

さて、金曜日に更新した「お客様を知る⑤」はお楽しみいただけたでしょうか?今回は、「市場に参加する覚悟」についてお伝えします。「お客様のリスク変動に対する考え方がわかった次は、心の準備ができているかどうかを探りましょう。」といった内容です。

また、ここまでの内容をお読みいただいてご意見やご質問もあると思います。「正直、ここが全然わからん。」「もっとここを詳しく知りたい。」というご意見も、勿論大歓迎です。(ご意見頂ければ、編集部から主宰に直談判します。

是非ご遠慮なくSNS(TwitterFacebookInstagram)やお問い合わせフォームからご連絡ください!

では、本文をどうぞ。

3つ目の項目は「市場に参加する心の準備が出来ているか」という観点

前回までで、お客様を知る上で押さえておきたいポイントとして二つ、

  1. 「リスク許容度」:長期的なリスクに対するお客様の考え方
  2. 「コンポージャー(Composure)」:日々の市場変動に対する「落ち着き, 沈着, 平静、冷静さ」

という概念について綴ってみた。ここまではご理解頂けたであろうか?

ここまでで、長期のリスク変動に対するお客様の考え方短期的な市場変動に対する感じ方が分かった。すると次に知りたいことは、お客様が「市場に参加する心の準備が出来ているか」ということになる。

例えば、お腹が空いていないパートナーをいくら高級なレストランに連れて行ったとしても、その効用は空腹時の半分以下だろう。逆に、ペコペコにお腹が空いているパートナーならば、公園の屋台のホットドックとコーラの組み合わせでも、2人の間には最高の笑顔が広がる筈である。

これが「心の準備が出来ているかどうか」ということである。

1. 海の中に初めての一歩を踏み入れる時のようなもの

私は、スキューバダイビングのインストラクター・ライセンスを持っている。なので、友人知人を中心に、初めてのダイビングにお連れすることは案外多い。

ダイビングと言われて思いつくポジティブなイメージは、

「碧い海、たくさんの熱帯魚、ウミガメやイルカとの出会い」
などなど綺麗で、気持ち良さそうで、リラックスしそうなもの。

だが同時にネガティブなイメージとしては、

「荒れた灰色の海、映画JAWSのような人喰いザメ、ウツボなど狂暴そうな魚との遭遇」
そして何より「溺れたらどうしよう」

というものがある。

普通の場合、初心者の人はそのポジティブなイメージに浸り、それを実体験したいと思う。だからネガティブなイメージの部分を心の片隅に押しやるか、インストラクターを質問攻めにするなどする。そして何とか心の中の折り合いをつけて、海の中へ初めての一歩を踏み入れる

そして大抵の場合、多少海の状況が悪くても、海から上がってきた最初の一言は

「楽しかったぁ。凄いきれい、挑戦してみて良かったぁ!」

という喜びの声となる。

ふふふ、これでインストラクターの勝ち!インストラクター冥利に浸りながら、また1人、海人が増えたとほくそ笑む。

投資の世界に一歩足を踏み出すのも、これと同じようなもの

以前(だいぶ古いが)、日経新聞朝刊が「動かぬ個人資産1800兆円(1)投機か預金 育たぬ投資家」と現実を嘆いて見せた。しかしこれは、上述のインストラクターのような上手な水先案内人が居ないからだ。今になって金融庁に言われてFD宣言している金融機関が殆どだが、きちんとお客様の心に寄り添うインストラクターが居れば、きっと答えは違ってきていただろう。正直、今までの金融機関の営業スタイルは、銀行も証券も、金融機関の収益に寄り添いすぎた。

ダイビングの世界でも、経験のない人に海の中の話をすると必ず聞かれることがある。「サメとかにあったりしないのか?」という事と、単刀直入に「エア切れで溺れたりしないのか?」という耳学問で膨らんだ沢山の疑問だ。丁寧にひとつずつ疑問を解きほぐしていくと、大体次は費用の話になり、既に気持ちは「ダイビングに行きたい!」という方に傾いている

これは投資も同じ。

お客様が投資という世界に、どのような心理的なハードルを持っているかを把握すること。
そして、そのハードルを丁寧に解きほぐしてあげること。

これが出来れば、お客様は既に半分以上、投資の世界に足を突っ込んでくれたのと同じことになる。誤解無きように言うが、決して怪しい、如何わしい世界へ誘うというのでは無い。

3. まずは耳学問の多さを質す

インターネットの発展により、ブログやSNSで個人が自由に情報を発信出来るようになった。それはそれで大変素晴らしいことなのだが、Fake News(虚偽の情報)と呼ばれるように、中には間違った情報や、意図的に誤らせようという悪意の情報までもがネット上を駆け巡っている。有り体に言えば、胡散臭い輩も尤もらしくきれいなWebサイトやSNSで情報発信しているという事だ。

実は大変残念なことなのだが、

大手の金融機関のSNSだから正確な情報が綴られているというのも善人過ぎる解釈

なのが事実。

仮に、コンプライアンスでのチェックは完了していても

  1. コンテンツそのもののチェックはされていない
  2. 執筆を任された担当者の独断
  3. 自社商品販売の為のワンサイド・インフォメーション

であったりすることは日常茶飯事である。商品パンフレットに悪いことはあまり書かれていないと言えば、ご同意頂けるであろうか。まずはそうしたところから、どの程度の耳学問をされているかを見極めるのが肝要である。

4. 取引金融機関を探る

ひとつのヒントは、どの金融機関と取引があるかを探ることである。おおよそのことは、その方の取引金融機関からヒントを得ることが出来る。銀行か証券会社か、日系か外資系か、大手か中小か、といった形式論だけでも大体の耳学問の内容は推量は出来るものである。

何故なら、同業他社が何をやっているかを知ることこそ、孫氏の兵法の基本だと以前も説いた。上司、先輩、同僚、或いは業界仲間などから幅広くそれらの情報は得ることが出来る

5. 過去の取引経験を探る

もうひとつ大事な情報の宝庫は、過去にどんな金融商品の取引をされていたかである。可能な限り遡って聞き出せることが望ましいが、時系列で話してくれる方など、まず100%居ないと言っていい。

まずは話の流れの中で、市場で話題となったイベントの時にどうしたかを聞いてみるのもひとつの手だ。

例えば、「バブルの頃のこと」を

「私はまだ産まれてなかったのでバブルの頃のことをよく知らないのですが、上司などは色々な経験をしたようで・・・」

などと振り出してみる。お客様の方から

「あの頃は面白い位に儲かったねぇ」

ポジティブな答えが来るか、

「あれで酷い目にあったわ」

とネガティブな答えが返るか。

この探りひとつで、お客様の投資に対する心理的ハードルが多少見えてくる。勿論、前者は前向きであり、後者は「どう酷い目にあったのか?」を解きほぐさないと、預金からお客様が出て来られることはまず無いであろう。

6. 子供の頃に溺れた経験がある人にダイビングを教える

酷い経験をした人でも、それを乗り越えられた例をスキューバ・ダイビングの話からひとつ綴ってみよう。

実は結構な割合で出くわすが、幼児期に溺れた経験があり、本当は水自体が怖いという人が居る。その事実を、さあはじめようかと海辺についた段階でカミングアウトされたりする。この心のハードルはかなり高いが、それこそインストラクターの腕の見せ所でもあり、実は燃えるところでもある。笑顔で「大丈夫だよ、ちゃんと教えてあげるから」と決して慌てない。

まずはカウンセラーの気持ちになって、

  1. 慌てずに当時の状況(何が起きたのか)を聞く。
  2. 一方で水辺で足を水につける。
  3. 器材に触って貰いながら役割を説明する。

などなど、兎に角、リラックスした状態でもう水辺に居ることに慣れて貰う。水が怖いと言っている以上、いきなりバシャーンと水に飛び込むなんてのは以ての外、まるでゆっくり露天風呂に入るかの如くに緩々と一緒に水に入る。必要ならば手をつないで入ってあげる。重い器材はインストラクターが肩代わりして持ち、本人は身軽なまま水と戯れて貰う

そこまでできたら、先ずはダイビングの器材さえあれば、不安なく顔を水に浸けられることを実感して楽しんで貰う相手の心のハードルの高さに合わせて、慌てずにゆっくり時間を掛けてあげれば、やがて必ずその状態を楽しんでくれるようになる。最初の一日目は、最悪それだけで終わってしまっても仕方がないぐらいの覚悟で丁寧に教えてあげれば、今までの経験上、子供の頃に溺れたことがあるという人でも、殆どの人が心のハードルを克服して立派なダイバーとなってくれた

きっと投資の世界も、

お客様の気持ちに寄り添って、心のハードルの高さに合わせた導き方をしてあげれば、きっと自ら飛び込んでくれるようになる。

何故なら、その先にある世界がどんなに素晴らしい面を持っているかの耳学問は充分にされているのだから。

おわりに

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

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ではまた次回の記事でお会いしましょう。

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vol.11「金融知識の自信」

(編集:Fund Garage 編集部)

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ファンドガレージ 大島和隆

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