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【2022年版】半導体関連銘柄の決算書の読み方
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(Fund Garage編集部)
前編より続きます。
半導体関連銘柄の決算書から何を読み解くか?
前編では半導体関連企業の二つの川上や川下への辿り方を見てきた。
整理すると、
- 半導体を作るための原材料の流れを確認し、原材料の流れに支障が無いか、受注動向に動きや変化は無いかを確認するという方法
- 実際、過去にはシリコンウェハが品不足になって半導体が作れないという時もあったし、台湾で大地震があった為、仕掛品のみならず、フォトマスク(フィルムの役目のようなもの)が大量に割れてしまい、やはりTSMC(台湾積体電路製造)などでの半導体製造が止まってしまったことがあった
- シリコンウェハなどは、この為長期契約(製造側の供給する義務、購買側の購入する義務を担保する)が基本となっており、スポットで購入される比率は低くなっている
- 半導体企業及びファンダリーなどの設備投資意欲がどうなっているかを調べるという方法
- 半導体製造装置は、仮に製造する工場建屋があったとしても、中に入れる製造装置はAmazonのPrimeサービスで翌日配送されるわけではない。購買、設置、立ち上げにはそれなりに時間が掛かる(半年でも難しい)。という事は、足許で如何に半導体がダブついていたり、需要が失われていたりしたとしても、最終製品からのサプライチェーンは、そんな近視眼的なところでは動いていない
以上の2点が決算書を読み解く着眼点となる。
決算発表時点で入手可能な情報源と内容
通常は決算発表後、各社のWebページのIR情報(投資家情報)などのコーナーには、次の書類がPDFなどでアップされる。
- 決算短信
- 決算説明会プレゼンテーション資料
- 決算説明会の質疑応答集
- 決算説明会の動画中継(録画を含む)
上記4点が全部揃っていれば一番良いのだが、最悪のケースは決算短信だけアップしている会社があること。
また決算説明会プレゼンテーション資料は、発表当日中にWeb掲載される場合が普通は殆どだが、中には数日後になる場合もある。そして4の動画はYouTubeなどの普及もあって、掲載する企業が増えていることは大変好ましいことなのだが、肝心な報道関係者や機関投資家やアナリストとの質疑応答風景や内容はカットされている場合が多い。それでも質疑応答集が後刻でも掲示されれば良いのだが、日本企業では無い場合の方が多いとも言える。
ただ、このセクターで言えば、シリコンウェハの信越化学工業は決算説明会の質疑応答まで含めた要旨をWebページに掲示しており、また東京エレクトロンやアドバンテストなどは説明会のすべてを動画配信してくれている。質疑応答は聞いていて実に面白い。
実際に何を調べれば良いか?決算短信は不要?
決算短信
主たる目的は「今後を知ること」である。本来企業分析をする為には、売上や営業利益の推移、或いは増益率や利益率の推移なども過去に遡って決算短信などから拾い集め、エクセルなどを駆使して(大島式My四季報など)深い分析をする必要がある。だが、取り分け今回は業界動向を探ることから始めるのが目的なので、極端なことを言えば「決算短信は見なくても良い」。出来れば、「経営成績」や「経営方針」の欄のように、読み物になっているところは読めたらベスト。その後に続く「連結財務諸表等」という欄は、これは読み飛ばして構わない。
決算説明会プレゼンテーション資料
基本的にはこれが重要。そして重要さから言えば、終わった期の決算内容を説明しているページでは無く、
「今期以降の見通しについて図表などを使って説明している部分」
また、
「中期経営計画などのアップデート」
があればその部分が重要となる。要するに将来をどう見ているかを示す部分を見れば良い。そこには要約された見通しのエッセンスが詰め込まれている。
質疑応答集と決算発表の動画
時間があるならば、東京エレクトロンやアドバンテストの決算説明会の動画は最初から最後まで見て貰えると、半導体業界の今の状態と、それを取り巻く機関投資家やアナリストの着眼点が見えるのでチャレンジしてみて欲しい。最悪、飽きてしまいそうならば質疑応答だけ聞いてみて欲しい。その次に見て欲しいのは「今期や来期の見通し」の部分。
動画が無くても、質疑応答集があるならば、それは必ず目を通しておこう。
この方法の最大のメリットは、細かい個社の数字を分析することなく、会社側やその経営陣が「言葉で語る、(定性的な)将来見通し」が容易に分かるという事だ。川下では「まだ足元の状況はなかなか厳しい」と言っていても、川上に遡ると「引き合いがあります」とか、「受注が入りそうです」と言った話になっている場合がある。当然逆もあるのだが。
またどの四半期がボトムになって、どの四半期から回復しそうと企業側が読んでいるか、川上から川下まで見通すことで、時系列の状態が段々よりクリアに見えて来る。仮に4/5が同じことを言っているのに、1/5が違うことを言っていれば、その信憑性の確認を深めれば良い。
B to B型の産業を投資対象とするなら川上、川下をチェックすること
この方法で業界動向が読み取れるのは、半導体業界が典型的なB to B型の産業だからだ。B to Cの場合はこうはいかない。何故なら、Cは気紛れ自由勝手だからである。逆に言えば、このやり方で多くのB to B型産業の決算書から業界動向を読み解くことが出来る。
さらに、日本企業だけでなく、米国企業のそれも確認するとより確度が高い仮説に至ることができる。因みに、Fund Garageのプレミアム会員向けのレポート類では、米国企業のそれらを私が噛み砕いて解説している。