無料版の始めに
こちらは、Fund Garageプレミアム会員専用の「プレミアム・レポート」の再編集版記事です。
公開から半年以上経った記事になりますので、現在の情勢とは異なる部分がございます。当時の市場の空気と、普遍的な知見を皆様にお届けできれば幸いです。
最新の情報や個別企業の解説、<FG Free Report では割愛>となっている箇所に関心をお持ちになられた方は、是非プレミアム会員にお申し込みください。 前置きが長くなってしまいました。では「プレミアム・レポート 2022年8月8日号」の一部を無料抜粋という形でご覧頂きましょう。
記事のポイント
- 真に美味しいところを持っていけるのは、メディアを信じる人ではない。生の決算からメッセージを読み取れる人だ。
- 投資家の多くがメディアなどが報じる内容に振り回される最大の理由は「定義が曖昧だから」。
- これらの定義については、【2022年版】半導体関連銘柄の決算書の読み方などで解説している。
- メディアだけではなく、証券会社のレポートにもかなりいい加減なものがあることは覚えておいて欲しい。
———–<以下、プレミアム・レポートより抜粋>———–
カビが生えた固定概念は捨てましょう
4-6月期決算からのメッセージを読み間違えないこと
市場の大きな関心事であったFOMCを先々週の7月26日と27日に終え、0.75%の利上げが決まり、そして4‐6月期決算発表もほぼ終了した。その他の指標発表もされたが、これら諸々のビッグイベントを終えても、株価はかなり堅実な展開で終わった。
Covid-19の感染拡大が終わった訳でも、ロシアがウクライナから撤退した訳でも、米中関係が改善した訳でもない。パソコンやスマホが急にバカ売れし始めた訳でもない。それでも株価は堅実な展開であった。
すなわち日経平均株価は28000円台を2カ月ぶりに回復し、米国ナスダックは5月初め以来の水準を回復した。繰り返しになるが、米国の利上げは引続き異例の3回分と言われる0.75%で行われたにも拘らずだ。
これらの謎を解くカギは、すべて4-6月期の企業決算の内容にある。読み進まれる前に、ご自身でもその理由をまずは考えてみて頂きたい。頭の中で、多少は整理出来てますか?
恐らく、保有する株式の評価損益が改善したことを喜んでいる人は多いだろう。だがこの局面で新規のポジション構築に向かえた人は殆ど居ないだろうと推察するがどうだろうか。
その大きな理由の一つは、一流メディアと信頼を集めるテレビ、新聞、或いは尤もらしい能書きを説く市場関係者の多くが、常に「悲観的なものの見方」に論旨をすり替えるからだ。「ダメ出し項目」若しくは「暗黒面」を無理にでも見つけてきているように見える。だが実際に美味しいところを持っていけるのは、固定概念に囚われない自由な考え方で素直に市場を見極められる人だ。今回も多くのメッセージが4-6月期決算発表の中にあった。
「半導体、パソコン、スマホ」って何ですか?
恐らく、投資家の多くがメディアなどが報じる内容に振り回される最大の理由は「定義が曖昧だから」だと思われる。その最たるものがメディアの昨今の報道スタイルだ。
例えば、未だに「半導体が不足している」と単純に言うが半導体の定義を明確にしているものは少ない。パソコンやスマホも同様だ。
具体的に説明すると、先週(8月4日)の日経新聞朝刊の記事(原文)などが好例だろう。
曰く
「電子部品の在庫が膨らんでいる」
という話なのだが、その理由として記事の中ほどに
「サプライチェーン(供給網)の混乱が収束しないうちに最終需要が急速に悪化している。減速幅が大きいのがスマホやパソコン(PC)などのエレクトロニクス製品だ」
とある。
前回もお伝えしたが、確かに「パソコン」の最終需要低迷でインテル(INTC)は苦戦していると4-6月期決算発表でコメントし、また「スマホ」の低迷でクアルコム(QCOM)もスローダウンを余儀なくされた。だが一方でインテルと同じ「CPU」という半導体を作っているアドバンスドマイクロデバイス(AMD)は好決算(詳細は後述)を発表、「スマホ」のAppleも記録的な好調だと述べている。
これらの定義については、【2022年版】半導体関連銘柄の決算書の読み方や【2019年版】半導体関連銘柄の決算書の読み方にて解説しているので、お時間のある時に是非ご覧いただきたい。
いい加減な証券会社のリサーチ・レポートもある
上述の例は新聞であり、あくまでも広く遍く一般の人に報じるだけの機能で充分というスタンスで見れば、この程度のものでも仕方が無いのかも知れない。だが同じ業界人として情けないとまで感じさせるいい加減な「証券会社のリサーチ・レポート」もある。それは某大手証券会社がイビデン(4062)について6月1日付で発表したレポートだ。証券市場の信用失墜リスクにも繋がりかねない。証券会社は売買手数料を稼げるが、投資家はそれに加えて実損も膨らむことになる。下手をすれば、これは「風説の流布」にさえ、該当するのではないかとさえ思ってしまう。
レポートの内容は前述の「パソコンの最終需要が急速に悪化」しているという見立てをもとに、パソコンの出荷台数予想引き下げ、併せてインテルのサーバー用CPUの新製品量産出荷の後ろ倒しリスクなどで、業績予想を大幅に下方修正、営業利益は23年3月期が会社計画670億円に対して608億円、24年3月期は市場予想864億円に対して639億円を予想と変更したというものだ。その結果、投資判断を「オーバーウェイト」から「アンダーウェイト」に2段階格下げ、目標株価も7500円から3750円にまで引き下げた。どこにそこまで引き下げる根拠があるのかと訝しんだが、やはり決算内容は全く異なるものだった。
そもそも目標株価を「半値に引き下げる」というのは常識的にあり得ないのだが、8月2日の取引終了後に発表された同社4-6月期連結決算は2桁営業増益だった。そして23年3月期通期業績予想で営業利益670億円は据え置いた。某社の予想のように607億円になど低下していない。それはデータセンター向けを中心としたサーバー市場が堅調に推移し、パッケージ需要が底堅く推移したことに加えて、ハイエンドスマートフォン向けにマザーボード・プリント配線板の売り上げが増加したことが寄与したからだと発表された。周りも含めて普通に見ていれば、当然の結果でもある。
ご承知の通り、一口に半導体と言っても、CPUもあれば、GPUもある。DRAMもあればNANDフラッシュもあり、FPGAがあり、ASICがあり、更に言えば、LEDだって半導体の一種だ。この他に、アナログ半導体があり、パワー半導体がある。ならば足りない半導体とはどれですかということでもあり、肝心なのは付加価値はどれが大きいですかということでもある。
頻繁にご紹介している下記のチャートは半導体の種類に分けて捉えるためにも役立つ筈だ。
すなわち、各社の主戦場の違いだ。
米国景気の先々を読む
米国の利上げが急ピッチで行われることから、「金利差拡大」という視点だけで単純に「1ドル=140円」を超えての円安論もあった。これについても、
一方的なドル高は米国景気にとって経常赤字の拡大など、決してポジティブな話では無く、景気のオーバーキルを常に考慮しないとならない
とお伝えしてきたつもりだ。結果はイールドカーブが示していた通り、やはり景気のスローダウン懸念が根強く、為替も「1ドル=140円」を超える前に、寧ろ一旦「1ドル=130円」に押し戻されてきた。週末の終値は135.01円。「円安は日銀が利上げをしないせいだ!」という論調もいつも間にか収まっている。利上げして日本景気を失速させるリスクを回避した日銀を評価したい。
その一方で、相変わらずFRBの一部タカ派の連銀総裁が相変わらず利上げの正当性を主張する「タカ派」発言を続け、なぜか米国のメディアもこの手の話は良く拾う。その結果何が起きているかと言えば、かなり厳しい長短金利の逆転現象、「逆イールド」の発生だ。つまり、債券市場は米国景気がオーバーキルによってスローダウンすることを危惧している。下に示したのは先週0.75%の利上げ後の週末のイールドカーブと、先週月曜日、水曜日、金曜日のイールドカーブ。
先週末、市場予想を超えて確りとした米国雇用統計を受け、またタカ派の連銀総裁コメントが地均ししていたこともあり、イールドカーブは利上げ後で一番の上方(金利高)に擦り上がった。だがその赤い線を見て貰えば一目瞭然、2年債金利と10年債金利の逆イールドの度合いは0.42%にまで膨らんでいる。前週末7月29日のそれは0.23%に過ぎないので、かなり危険信号である。
恐らく雇用統計に驚いて惹起された利上げ予想は早晩消えるように思われる。まず7月の雇用統計は7月11日で始まる週の数値、つまり過去のもの。その後にマクロ景気の悪化は続き、再び人員削減の話や新規採用中止の話が飛び交っているというのがひとつの理由。確かにサービス業や観光産業などでは人を採用出来ずに高賃金化をして呼び戻しているという事実もあるが、企業収益とのトレードオフであることには注意が必要だ。つまり無限に賃金を上げられるほどに企業収益は上がらないということ。そうしたことをイールドカーブは示している。
米ISM製造業景況指数、同非製造業景況指数
<FG Free Report では割愛>
右肩上がりのビジネス・トレンド
あまりにも違いが際立ったAMDとインテルの決算
8月2日の本市場引け後、AMDのプレスリリースを見た市場では時間外取引で株価は最終的には約6%の下落となって決算内容に失望したかの顔を見せた。
<FG Free Report では割愛>
言い訳がましいインテル、理路整然と強気のAMD
今まで多くの企業のCEOのプレゼンやそれに続くQ&Aセッションを聞いたり、現地まで赴いて、自らCEOに直接質問したりもしてきたが、ポジティブなCEOには共通項がある。
<FG Free Report では割愛>
Data CenterとClientビジネスの比較
<FG Free Report では割愛>
問題はインテルが「世界の半導体の巨人」という固定概念
<FG Free Report では割愛>
まとめ
トヨタ自動車(7203)の決算にみる「男前」
トヨタ自動車が8月4日に発表した第一四半期決算の内容は、短期的には株式市場を満足はさせられなかったようではあるが、為替見通しを115円から130円に見直して6700億円の増益効果を織り込むが、同時に資材価格の高騰分と原価改善のマイナスと併せて△3500億円の減益要因としたことの含意は、今後の同社経営に大きく貢献して来る筈だ。
トヨタ自動車については、ネット上などではよく「下請けを絞り上げて自分達だけ肥え太る」というような批判が昔からある。だが今回、原価改善を△1000億円とした真意をよくよく投資家は汲み取っておくべきだと思う。すなわち、「爪に火を点す」ような原価改善に邁進してきた同社が、「原価を膨らます」わけだ。つまり数字だけ見れば原価改善の失敗なのだ。そして本来のトヨタ自動車は、そんなことが許される程に緩い会社ではないことは誰も知るところだろう。
要するに、下請けなどを含めて、親分が腹を切ってでもトヨタ組のサバイバルを考えた結果と受け止める。以前にもお伝えしたことがあると思うが、90年代の急激な円高の時、トヨタは他社と違って「三河の雇用を守る」として国内生産に拘った。過去私は多くのトヨタ自動車の取引先企業も訪問調査をしてきたが、当時のことを知る人たちはそのトヨタの真意をよく教えてくれたものだ。「義理人情浪花節」ではないが、良い意味での「日本型経営」の典型だろう。今回も同種のものだと思われる。
それでも尚、このマクロの状況下で、あれだけの企業サイズ(世界最大の販売台数をVWと常に競り合っている)ながらも1000億円の上方修正をしたこと、きっと市場は何処かのタイミングでこれを評価せざるを得ないことになるだろうと思われる。それは決して目に見えて「あの時のあれが」と言えるものでは何だろうが。
予想配当利回り2.44%(8月5日現在)、為替リスクを取る米国10年国債の利回りが2.82%、リスクは無い日本の10年国債の利回りが0.160%、日本の投資家のポートフォリオには本来なくてはならない銘柄だと思っている。
My favorite Companies List(株主となって所有したい企業のリスト)
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———–<以上、抜粋終了>———–
(編集:Fund Garage編集部)
編集部後記
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