ポートフォリオの概況
Fund Garageが国際分散投資用に提案する「リスク中程度のモデル・ポートフォリオ」の2月末までのパフォーマンスは、ドル建てポートフォリオで設定来が月末175.96%となり、前月末の184.36%から騰落率で△4.58%の下落となった。円建てポートフォリオは設定来が163.17%となり、こちらも前月末170.30%から△4.19%の下落だ。こちらは為替が108.95円から109.40円まで円安になったことが若干のプラス要因となっている。
アセットクラス別にベンチマークを見ると、1月と同様に債券クラスが総じて好調で、株式、商品、不動産が軟調でした。先進国国債が+1.72%とベスト・パフォーマーで、先進国株式が△8.45%とワースト・パフォーマーとなった。
この2月ひと月でみると、連日「新型コロナウイルスの感染拡大」のニュースがテレビ、新聞、インターネットからパニックを煽るように垂れ流され、NYダウは△10.07%、ナスダックは△6.38%、日経平均は△8.89%、TOPIXは△10.30%、マザースは△14.91%そしてジャスダックが△13.15%の下落と、とても厳しい展開と感じられたが、やはりこうした時は国際分散投資のバランス型運用の強みが遺憾なく発揮されたという感じだ。
米国債のイールド・カーブが示す利下げ催促
原稿執筆時点では既にFRBが緊急利下げを行ったことが分かっているので、後出しジャンケンに思われてしまうかも知れないが、実は米国債のイールド・カーブの変化の仕方で、FRBが利下げに踏み切らざるを得ないところまで追い込まれてたは明らかだった。この際なので先週末3月6日までのイールド・カーブの形状変化を12月末から追ったものを下記に示す。
ご覧頂けると通り、12月のイールド・カーブはこの先に起こることなど何も想定しないで緩やかに景気回復を期待するような順イールドになっている。それが中東問題に始まって、新型コロナウイルスの感染拡大の話へと拡大していく中で、緑のラインまで、主として中長期ゾーンの債券が買われ、金利が低下している。イメージとしては、景気回復速度の鈍化程度と言っていいかも知れない。
それが2月に入り、新型コロナウイルスの感染拡大が続き、世界中に拡がる勢いになり始めると、サプライチェーンの寸断、或いは中国景気の大幅減速が世界景気にかなりダメージを与えることを市場は想定するようになり、緑のラインから2月末の赤のラインに向けて中長期ゾーンのみならず、短中期ゾーンまでが急激に低下、更に3月最初の取引日となった3月2日は更に短期ゾーンが低下して利下げ催促となった。
結果、3月3日はFRBがFOMCを待たずに緊急利下げの形でFFレートの誘導目標を0.5%引き下げた(紺色のライン)。だが市場が貪欲なのは、その後も株価が落ち着かないことを確認すると、更なる「利下げラブコール」を送るようになり、3月6日のイールド・カーブは黒いラインのようになっている。実に、6か月物は0.37%、1年物が0.38%、指標となる10年国債で0.79%と史上最低を更新している。
VIX指数(恐怖指数)の水準はそろそろ底打ちを暗示している
恐怖指数とも呼ばれるVIX指数、中身はS&P500指数のオプション価格から逆算されるボラティリティ(予想変動率)なのだが、これには理論的にも説明されている通り、株価と明確な負の相関関係がある。すなわち株価が上がれば、VIX指数は下がり、株価が下がればVIX指数は上がるというもの。そして恐怖指数が一気に跳ね上がるような状況が起こると、株価の急落は底打ちを迎える。逆に考えると、株価の急落からのダメージを少しでも回避しようとした投資家がプットオプションの買いに走ることによって、恐怖指数と呼ばれるVIX指数は跳ね上がり、その頂点で感極まったところで相場は底を打つという定性的な言い方も出来る。そのチャートがこれ。
先週末、見事に過去3年の急落時のピークを上回る41.94までVIX指数は上昇している。是非、他の期間の動きも見て頂き、明確な負の相関関係をご実感頂きたい。
この原稿執筆時、株価は急落、大きく円高が進んでいる
この原稿を書いているのは3月9日の11時以降からである。日経平均は見る影もなく値を消して19,473.07円(△1,276.68円安:△6.15%)で前場を終えた。ドル円は101円台にも一時突入して102円台で推移している。もうひとつ凄い展開になっているのが原油価格である。WTI原油先物は2016年以来となる30.73ドルとなり、日本に影響のある北海ブレントの先物34.02ドル(△24.78%)となっている。
勿論、原油価格の下落には新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済停滞から需要低下が価格の下落要因に含まれているが、どちらかと言えば、OPEC加盟国と非加盟国の減産合意が出来ず、サウジアラビアが増産を打ち出したことなどが影響している。
良い話が少ない中で、この話題は悪くない話だろう。冬場のヒーティング・オイルの需要が衰えるとは言え、原油価格の下落は多くの産業の基礎コストを引き下げる。米国のシェールガス関係は原価割れとなり勢いを落とすだろうが、基本的な原材料費の値下がりには違いない。数年前に米国の自動車産業が持ち直したのは、原油価格の下落によって、利幅の厚い大型SUVの需要が高まったからというのは記憶に新しい。温暖化ガスの問題だけは間違いなく議論の対象となっていくだろうが・・・。
テレワークや在宅勤務が注目されれば、必要とされるのはネットワークのインフラだ
急に多くのところでテレワークや在宅勤務、或いはイベントのオンライン・カンファレンス化などが急ピッチで始まっている。そして恐らく多くの利用者が「ネットワークの問題」とその機器の性能不足に気がつくであろう。
ネットワークのインフラが、優先と無線と両方で拡充が必要となる。皆が好き勝手ところから自由にクラウドにアクセス出来るようにするには、それなりなインフラが必要だ。これは今の時代の多くの情報通信革命の流れをポジティブに刺激する。911同時テロの後、WiFiの必要性が、エアラインの需要停滞と反比例して増加したことを記憶する人も多いだろう。
また巣篭もり消費の典型はゲームだ。昨今の流れで言えば、これは端末の能力も必要だし、或いはネットワークも必要。何故ならクラウドが介するからだ。こうした着目点は今までの流れを後押しすることはあっても足を引いたりはしない。
忘れられた株価のバリュエーション
株には原価がある。そしてそれに適正なプレミアムをつけて取引されるのが本来の姿だ。だが、短期的には市場のセンチメントに左右され、エモショーナルに変動する需給によって株価は動く。だが最終的には本来あるべき水準に回帰する。それが価格裁定の基本原理だからだ。
株価が純資産価値を割り込んでいる状態と言うのは、この先に欠損が発生しないとなりたたない。多少でも黒字ならば、純資産価値は目減りしないのだから。投資家はそうしたことをどこかのタイミングで冷静に思い出すだろう。それまでは集団ヒステリーのような短期的な需給に振り回されるのは仕方が無い。すべきことは冷静に狙いを定めておくことだ。
感染拡大の状況は冷静に分析しよう
カリフォルニア州サンフランシスコ沖合に停泊している「ダイヤモンド・プリンセス」の姉妹船「グランド・プリンセス」を発端としたサンフランシスコ(シリコンバレーのお膝元)の状態、或いはNY州の緊急非常事態宣言なども加わって、またイタリアや韓国での感染者数の爆発なども騒がれるので、状況は冷静さを欠いているように思われる。報道される人数が増えれば怯えるのも無理はないが、やはり分母を考えて、確率で捉えるようにしないと要らぬパニックに巻き込まれる。この辺は「簡単、冷静に市場動向を読み解く方法。天邪鬼の奨め」なども参考にして欲しい。
下記に直近の状況をジョンズホプキンス大学が公開しているデータから纏めたものをご紹介する。注目すべきは感染者数だけではなく、感染者数から回復者数を除いた「現在も感染中の人達」の人数の増加だろう。そしてすべて分母は人口として捉える必要がある。
画像をクリックして貰えれば「ジョンズホプキンス大学のWeb」自体が開くので、ご自身の目で確認して欲しい。