国際分散投資シミュレーション 2020年1月末

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ポートフォリオの概況

Fund Garageが国際分散投資用に提案する「リスク中程度のモデル・ポートフォリオ」の1月末までのパフォーマンスは、ドル建てポートフォリオで設定来が月末184.36%となり、前月末の184.66%から騰落率で△0.16%の下落となった。円建てポートフォリオは設定来が170.30%となり、これは前月末170.13%から+0.10%の上昇だ。為替が108.67円から108.95円まで円安になったことがプラス要因となっている。

アセットクラス別にベンチマークを見ると、1月は債券クラスが総じて好調で投資適格債が+2.65%、先進国国債が+2.06%と健闘し、ハイイールド・新興国債券も僅かだがプラスを維持した。一方で先進国株式は△0.61%だったが、新興国株式が△4.66%と足を引っ張っている。また指数としては原油価格の下落が響いたコモディティが△10.82%となった。

ただお分かり頂けるように、マイナスなものがあれば、プラスのものがある、というのがこうしたバランス型運用の特色であり、だからこそ、単一のアセットクラスに集中投資するよりも安定したリターンが狙える

但し、何度もお伝えした来たように、正しく各アセットクラス(資産クラス)間の相関性を計算して組み立てられたアセットアロケーションでなければ、リスクとリターンの最適解(効率的フロンティア)とはならない。「ローリスク・ローリターン」、「ミドルリスク・ミドルリターン」或いは「ハイリスク・ハイリターン」というバランスの取れた関係は、「エイや!」で決めた割合では成り立たないことが良くあることは注意が必要だ。下手の分散休みに似たりにたり、つまり「ミドルリスク・ローリターン」とか、悪くすれば「ハイリスク・ローリターン」なんてこともあり得るからアセットアロケーションの決め方はきちんと行いたい。

米国債のイールド・カーブの変化

2019年年末から1月末までのひと月間の米国債金利の変化を各債券の期間毎にみると下記のイールド・カーブの変化の図となる。青い点線が昨年12月末を現し、赤い点線が1月末である。その上の緑色の実線が2月10日を示している。

ご覧頂けると通り、12月末のイールド・カーブは基本的には期間が長い金利の方が高くなる正常な状態に戻っていたが、年明けから始まった中東の緊張が世界経済への悪影響を想起させ景気悪化を織り込むように金利は低下した。FRBがコントロールするFFレートの誘導水準は変わらないので、市場が反応しやすいのは流動性に富む2年債から10年債の部分だ。世界の投資家が安全資産として米国債を買い込んだ(債券価格の上昇=金利低下)ことが分かる。

その後、中東情勢の緊張は薄らいでも、月の後半は新型コロナウイルスのパンデミック化に対する懸念からやはり債券が買われて金利が低下する状態となったのが分かる。2月の第一週は新型コロナウイルスの感染拡大懸念もやや弱まり、株価が上昇したことで金利はやや戻している。ポートフォリオのパフォーマンスに反映しているのは赤の点線部分までなので、ポートフォリオは金利低下の恩恵を享受出来たと言える。

 NYダウは月末に大きく下落した

もう一枚チャートを見て頂こう。右から数えて一本目の縦線がちょうど2020年1月の始めという事になるが、株価は中東情勢をあまり気にしないままに上昇していたが、新型コロナウイルスの話が聞こえ始めてから下落、特に1月24日と1月31日の週末に大きく下落している。

米国株式市場の下落はその時価総額の関係もあり、先進国株式のインデックスに大きな影響を与えるが、更に影響を受けたのが新興国株式市場である。前述の通り、先進国株式のインデックスの下落は△0.61%に留まるが、新興国株式市場のそれは△4.66%にも及ぶ。

これと同じ意味が、先進国国債は+2.06%、投資適格債も+2.65%であるのに対して、ハイイールド・新興国債券市場が+0.59%でしかないことの意味に繋がる。要は「格付けが低い」⇒「利回りが高い」⇒「景気悪化や諸リスクに弱い」という結果に繋がっている。恐らく「ハイイールド債券ファンド」の類の1月のパフォーマンスは悪い筈だ。

債券投資のウェイトを引き上げるべきか否か

この国際分散投資のモデル・ポートフォリオは「リスク許容度中程度」のものとしてアセットアロケーションを決めているが、それでも短期金融商品を含めて債券周りへの投資は約4割だ。つまり既にある程度リスク回避的に組成している。

一方、前述の米国債のイールド・カーブをもう一度見て頂きたい。イールド・カーブの形やその絶対的な水準から見て、今以上に債券が買われて金利が低下する余地があると考えるかどうかだ。

因みにこのアセットアロケーション・モデルは、戦略的アセットアロケーション(SAA : Strategic Asset Allocation)として考えており、戦術的アセットアロケーション(TAA : Tactical Asset Allocation)の要素は入れていない。通常は前者で見直しは1年に1度、後者の見直しが3か月に1度程度というのが、この手の国際分散投資のオーソドックスな考え方だ。それもあくまで見直しの頻度であり、見直しの結果「変更なし」とすることの方が一般的には多い。

勿論FRBがFFレートの誘導目標を更に引き下げる利下げを行えば、期間の長い方の金利も低下するかも知れない。しかし2月7日に発表された米国雇用統計はFRBの利下げ打ちきりをサポートするのに充分な内容だった。一方で、あまり日本で報道されてはいないが、米国は新型コロナウイルスよりも今はインフルエンザの感染拡大の方がシリアスな状況にある。具体的には、米疾病対策センター(CDC)によると2019~20年のインフルエンザシーズンは患者数が1,900万人、死者数は1万人を超えたという。

この先、新型コロナウイルスの感染拡大が全く改善の兆しなく続き、完全に中国経済が麻痺するようなことになれば、この問題をきっかけとしたアセットアロケーションの変更も考慮せざるを得なくなるかもしれない。しかし現状ではそこまでの対応は必要ないと判断している。

正にその為の「リスク許容度中程度の国際分散投資のモデル・ポートフォリオ」なのだから。一番避けるべきは、投資を止めてしまう事だろう。一度撤退したら、もう一度再投資の決意を固めるのは非常に難しいことは容易に想像つく筈だ。

Fund Garageでは、お客様の投資特性に合わせたモデル・アセット・アロケーションをご紹介している。最終的な決定は、更にご相談の上で決定させて頂いている。

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ファンドガレージ 大島和隆

Fund Garageへようこそ。主宰の大島和隆です。投資で納得がいく成果を得る最良の方法は、自分自身である程度「中身の評価」や「モノの良し悪し」を判断が出来るところから始めることです。その為にも、まず身近なところから始めましょう。投資で勝つには「急がば回れ」です。Fund Garageはその為に、私の経験に基づいて、ご自身の知見の活かし方などもお伝えしていきます。