『緊急事態宣言』から『首都封鎖』待望論が突き進む方向が正しいのか?

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メディアやネットの書き込みは『緊急事態宣言』から『首都封鎖』待望論が溢れかえる

先月、小池都知事が緊急記者会見を行い、週末の不要不急の外出自粛を要請し、これに呼応するように、神奈川県、千葉県、埼玉県、山梨県などの周辺県知事もどうような要請を県民に呼び掛けた。

この時、小池都知事は「感染爆発 重大局面(オーバーシュート 重大局面)」というプラカードを掲げ、「ロックダウン(都市封鎖)」という英単語も交えながら、危機感を熱弁された。

これ以降、メディアやネットの書き込みには『緊急事態宣言』や『首都封鎖』を求める声が増え、政府が『緊急事態宣言』を発しないことを、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の時と同じように「対応が後手後手だ」と批判する声が日に日に高まった。当然、今は更に加速している感じだ。

併せて、日本医師会も安倍首相に『緊急事態宣言』を早期に宣するように要請し、ついには4月1日に日本医師会が独自に『医療危機的状況宣言』なるものを発表した。

これを受け、メディアやネットでは現状の米国ニューヨークの状況を伝えるショッキングな映像や画像が飛び交い、「日本もいずれニューヨークのようになるぞ」と言う声が沢山聞こえてき始めた。

『都市封鎖』に怯える日本株市場、バリュエーション指標は役立たずのまま

そして株式市場も「都市封鎖」が実際に東京で起きたらどうなるのかと怯え、売買代金も先々週の4兆7千億円近くから既に半分近い2兆3千7百億円にまで減少し、ダラダラと下落している。先週一週間の日経平均株価の下落率は△8.09%、TOPIXは更に悪く△9.21%である。医療崩壊が起こって飛んでも無いことになっていると言われる米国株式市場が、NYダウで△2.70%、NASDAQが△1.72%の下落に留まっているにも関わらずだ。この不甲斐なさは「煽られた恐怖心」が一番の原因だと考える。

その一例は、株価のバリュエーション指標と呼ばれるPERもPBRも全く意味をなさないということだ。特にこの時期は3月末決算の発表待ちなのでPERは意味が無いかも知れない。誰もが大幅な減益を見ているので、この議論は噛み合わないだろう。

だがPBRは別だ。「株価÷一株当たり純資産」で計算されるこの指標の「一株当たりの純資産」は2019年3月期に確定したものが殆どだ。つまり2020年3月期の決算で大きな赤字を出して資産を食い潰し、その後も回復の見込みが立たない場合だけが通常はPBRの1倍割れが正当化される。それが株の根源的な価値の議論だからだ。

下の表を見て頂こう。これは4日の日経新聞朝刊マーケット総合面に掲載されている日本株のバリュエーション指標だ。真中にPBRがある。ご覧頂けるように、日経平均採用銘柄のそれが0.87倍、東証1部全体でも0.96倍となっているのが確認出来る。

つまり、こういうことだ。2月中旬から大騒ぎになった新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、前述したように、それまで営々と積み上げてきた企業の純資産が2020年3月期の決算、もしくはその後の決算を通じて大きく毀損し、そう簡単には回復しないと想定しているのと同義だ。因みに、日経平均採用銘柄のPBR(現状0.87倍)は、昨年の4月3日は1.14倍となる。つまり今よりも3割以上も上である。仮に今のPBRが昨年と同水準ならば、単純計算で株価は23,350円となる。何の意味も無い数字だと言われるかも知れないが、この差の約5,500円分程度は市場が自信を無くしている証拠と言える。確かに悲観論を唱える人(慎重そうで賢そうに見えるのも事実)は圧倒的に多いし、実際「緊急事態宣言」に次いで「首都封鎖」などという事態は、市場は一度も経験したことが無いから怯えて当然だろう。でも、冷静に考えてみて、本当に現在の日本はそんなギリギリの状態なのだろうか?(危機意識が足りないと叱責されるかも知れないが、敢えて議論を試みる)

日米の状況を数値で比較してみる

詳細は別記事で毎日データを更新している「新型コロナウイルスの感染者データ・アップデート」の中にある世界全体の感染者状況などのデータを整理した表を参照して貰いたいが、ここでは単純に日米の状況比較だけを行ってみる。日本の人口は約1億3千万人であり、米国は約3億3千人と約2.5倍以上となるが、今回は敢えて絶対値のままで比較してみる。

まず下の表を見て頂きたい。これは直近の日本の新型コロナウイルスによる死亡者数と米国の感染者数及び死亡者数推移を比較した表である。日本の感染者数に関しては、①ジョンズホプキンス大学のデータと国内で発表されている各メディアのデータが一致しないこと、②検査数が少ないので隠れ感染者が居る筈だという議論が多い事、などから亡くなった方の数値だけを取上げた。但し、日本の4月1日以降に関しては、ジョンズホプキンス大学のデータよりも、日経新聞発表のデータの方が絶対数が多いので、敢えて数字が多い日経新聞社のそれを利用している。

まずひと目見て日米の比較で人口差がとても2.5倍に過ぎないとは思えない展開となっている米国の現状に驚かされる。感染者数は検査の件数が多いからという言い方が出来るのかも知れないが、明らかに亡くなられた方の絶対値も、その増加率も日本のそれとは比較にならない状態だ。

果たして、この米国の現状の状態に日本も「感染爆発 重大局面」ということで、あっと言う間に追いつくのだろうか?

だがどうしても疑問が残る。新型コロナウイルスの感染が国内で始まったのは、明らかに日本の方がひと月以上早い。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」も寄港し、下船した人が公共交通機関で帰宅されている。首都圏に向かう通勤電車は、だいぶ空いているとはいえ、「社会的距離(ソーシャル・ディスタンシング)」とは程遠い状況がずっと続いている。にも拘らず、亡くなった方の数は75人対6,889人だ。人口差を考慮して、日本のそれを2.5倍としたところで、188人対6,889人と圧倒的な違いだ。

更に、日本の亡くなった人の増加率は概ね一桁%台だが、米国のそれは20%~30%台と圧倒的に高い。この増加率もどこかで一気に日本も20%以上に跳ね上がるのだろうか?その長く変わらなかった状況が、今ここで大きく変わるという論拠はなんだろうか?

日本の感染者の詳細なデータが発表されずに定性的な話ばかり

東京都は病床が足りないという話があった。対策としてPCR検査で陽性ながら発症していない人や軽症者はAPAホテルなどから都が借り上げたホテルに移り、病院の病床は重傷者の為に開けるという施策が取られるらしい。

つまり逆に見れば、日経新聞社が発表している4日の感染者の数3,039人の内、実際にICUに入らなくてはならなかったり、人工呼吸器、或いはECMO(体外式膜型人工肺)を利用しないとならない状況の人は何人ぐらいいるのだろうか?また年齢別の状況、既往症の有無などはどうなっているのだろうか?

最新の日経新聞社のデータによれば、感染者の累計は3,039人、回復された方が498人、残念ながら亡くなられた方は75人となるので、現時点で陽性反応を維持したまま何ならかの医療的な手当てが必要なひとの数は日本全国で2,466人ということだ。

厚生省の発表によれば、感染が確認された症状のある人の約80%が軽症、14%が重症、6%がが重篤となるが、重症化した人も約半数は回復しているという。とすると、2,466人の内、約1972人が軽症、494人が重症、うち148人が重篤と言う計算が成り立つ。

これは日本全国の数値なので、首都圏や東京都に限ったらより少ない数値になる。正直、このレベルで首都東京の医療は崩壊寸前になるようなものなのだろうか?人口13,942万人を擁する首都東京の医療体制というのは、これだけ「首都直下型地震」などと騒がれながら、或いは「南海トラフ巨大地震」の可能性などが騒がれながら、更には「富士山噴火」の可能性なども言いながら、そんな脆弱なものであったのだろうか?東京都の行政は何をしていたのか?オリンピックにばかりお金をかけるよりも、こうした医療体制の充実を先行させるべきだったのではないかと思ってしまう。

実は現場の医療関係者に個人的に取材をしてみた。その結果分ったことは、現場が求めていることと、行政が行っていること、或いは専門家委員会と称する学者達の集まりが考えていることはイコールではないということだ。民間企業で言えば現場の意見が聞かれずに上層部が勝手に判断をしているという感じだ。専門家委員会なるものの発表を聞いて、毎度違和感を何か感じている人が多いのは、たぶんこれが原因だ。現場の声を無視したトップダウンの意思決定が成功するのは「カリスマ経営者」が率いている会社だけだ。

そう考えた時、今の大騒ぎの仕方と、株式市場の怯え方と、そして実体経済への今後への影響を考えると、実は非常に何か末期的なものが見えてきてしまう気がする。早く正常化して欲しいものだ。

ただはっきりとこれだけは言える。今の日本の状態が維持出来ているのは、現場で献身的に自己犠牲を惜しまずに働かれている医療関係者の皆様のお陰だ。多くの犠牲を払いながらも頑張って下さっているそうした方々には心からの謝意と敬意を表したい。ありがとうございます。

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ファンドガレージ 大島和隆

Fund Garageへようこそ。主宰の大島和隆です。投資で納得がいく成果を得る最良の方法は、自分自身である程度「中身の評価」や「モノの良し悪し」を判断が出来るところから始めることです。その為にも、まず身近なところから始めましょう。投資で勝つには「急がば回れ」です。Fund Garageはその為に、私の経験に基づいて、ご自身の知見の活かし方などもお伝えしていきます。
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