【検証】新型コロナ「感染爆発 重大局面(オーバーシュート)」をどう捉えるか?

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定性的表現は、極めて主観に左右される

東京オリンピックが中止された翌日に、いきなり東京都知事が「ロックダウン」(首都封鎖)などと言う英単語も混ぜながら発言すれば、スーパーマーケットの棚から商品が瞬時に消えても当然だろう。普通に「今週末は外出を自粛して欲しい」と説明し、また「物流停滞などは無いので安心して対応してください」とでも言えば、「買いだめパニック」などもおこらず、翌日東京市場を「百合子ショック」と呼ばれたような下落は襲わなかった可能性は高い。一晩あれば、市場が考える時間はあるし、NY市場はお構いなしに1,351ドルも上昇して帰ってきたのだから。

 

ただ、実際に行われたのはこれだ。「感染爆発 重大局面(オーバーシュート 重大局面)」と書いたパネルを掲げ、危機感を煽った。首都東京の知事が自ら緊急の記者会見を突然開き「今の状況を感染爆発の重大局面ととらえこの認識を共有したい」、或いは「今週になりオーバーシュートの懸念がさらに高まっており、今まさに重要な局面だ。平日についてはできるだけ仕事は自宅で行い夜間の外出は控えてほしい」そして「週末は急ぎでない外出は是非とも控えていただくようお願いしたい」と強い危機感を示せば、「都知事なのだから、何か特別な情報を持っているのだろう」と一般庶民が恐慌をきたしても当然だろう。

なぜカタカナを多用したがるのかは別として、「重大」とか「感染爆発」という表現は個人の主観的なもので、極めて定性的だ。正しく状況を理解するには定量的に数値で語るのが基本。勿論、特別な別の意図があるのならば「言葉遊び」も有効かも知れないが・・・。

投資家ならば感染状況は数値で定量的に把握しよう

私は医療関係者では無いので、どの位の感染拡大レベルを「爆発」と言ったり、「急激な増加」と表したりすべきなのかは分からない。政治家でも無いし、ましてや知事でも総理大臣でも無いので、特別な情報など持ちえないし、知り得ない。手に入るのは公表されているデータだけだ。

世界中の感染状況を最もリアルタイムで公表しているとして、信頼性も含めて多くの人に指示されている感染状況のデータはジョンズホプキンス大学が公表しているデータだ。ジョンズホプキンス大学がどんな大学かは是非Googleなどで検索してみて欲しい。下の画像は、もう多くの人が一度や二度は最低でもご覧になったことがあるだろう。(画像をクリックすれば、リアルタイムの方へジャンプします)

 

(出所:ジョンズホプキンス大学)

これは今朝3月29日午前8時過ぎに取得したデータだ。左上にあるのが、世界177ヶ国の累計の新型コロナウイルスの感染者数。世界地図を挟んで右側の白い数字が亡くなった人の数、そして黄緑色の数字が既に回復した人の数である。

すなわち、感染者数累計660,706人、亡くなった人30,652人、回復した人139,415人、ということで、「660,706-30,652-139,415=490,639人」の人が、今現在陽性反応を示して、自宅で隔離されていたり、入院されていたり、或いはICUなどで集中治療を受けていたりしているということだ。

赤い「660,706」という数字に下には、国別の感染者数が、国名と人数と共に大きな数字から並んでいる。そのひとつをクリックすれば、その国の亡くなった人の数と回復した人の数が分るようになっている。

因みに一番下のやや左側に「177」とあるのは、感染者が出た国の数である。

日々のデータを取り込んで、総人口を加えて時系列のデータベースを作る

2月の終わりぐらいまでは、この画面のスクリーンショットを日々記録として残していた。ただ感染が欧州に拡がり、米国に拡がるにつけ、日本の順位が段々と下がり出し、今では下にスクロールしないと表示されないようになってしまった。その流れの中で、今では毎日、国別に感染者数、死亡者数、回復者数をエクセルに取り込むようにし、各国の総人口は個別にネットで調べてひとつのデータベースを作っている。

要は最初は中国が圧倒的に大きな数字だったので、人口14億人の大国と、1億人前後の人口の国をそのまま比較しても、国土の広さも違うし、意味が無いと思ったからだ。大きな発見は、恥を晒すようだが、やはり日本はそれでも人口の多い方の国で、欧州の国々は予想以上に少ないということが分かったことだ。

そこで最初にこちらを見て頂こう。これはその国の人口何人当たりに1人の割合で、感染者や亡くなった人が居るのかを計算した表だ。亡くなった人の割合で降順にソーティングしてある。

一番状況が厳しいイタリアにおいては、現在人口6,034人に1人の方が亡くなっており、654人に1人の割合で感染者となっている。真ん中の黄色い線で示したのが米国である。現在、感染者の総数は12万人を突破し、中国をも完全に抜いて第1位である。誰も嬉しくはない第1位なのだが。ただ人口が3億3千万人近いこともあり、亡くなった人の割合は人口161,500人に1人の割合であり、感染者自体も2,693人に1人の割合だ。感染者の割合で言えば、ルクセンブルグが一番酷く人口328人に1人は感染していることになる。

そして最後に日本はどうかと言えば、亡くなった人の割合が約244万人に1人であり、感染者数は74,897人に1人の割合だ。ただ感染者数に関してはPCR検査が少ないという批判が沢山あるので、これでどうこう考察をするのは難しいだろう。

【検証1】実際に日々どの程度絶対数は増えているのだろうか

日々実際にどの程度の人数が増えているのかを感染者数に限って言えば、このWebページの右下のチャートが役に立つ。明らかに3月中旬以降、放物線状に増加傾向が加速していることが明らかだ。

因みに、朝のデータが660,706人であったのに対して、12時45分現在のそれは既に664,695人と4千人も増えている。ただ回復した人の数が741人増加、亡くなった人も195人増えているというのも事実だ。

感染者数についてみると、先週半ばの3月25日にはまだ422,989人しか(?)居ない。それが26日には460,250人、27日が526,044人、28日が590,594人となり、今朝でついに660,706人と一気に60万人台後半に突入した。恐らく明日には70万人となっているだろう。

では日本の感染者数についてはどうかと言えば、25日が1,193人、26日が1,307人、27日が1.399人、28日がなぜか減って1,387人、そして本日29日が1,693人となる。

一方、日本で亡くなった人の数だが、25日が43人、26日が45人、27日が47人、28日が49人、そして本日29日が52人である。

【検証2】「感染爆発の重大局面」で日本はどの程度爆発したのか?

多くの人が自宅で外出自粛要請に応えているこの週末、昨日と今日とでどの程度の感染者数と亡くなった方の数が増えたかを確認してみた。それが下の表である。

左側の表が感染者の絶対数の増加、右側が亡くなった方の絶対数の増加である。感染者数の上位30ヶ国の内からそれぞれ20位までの抜きだした。

まずは眼に着くのが米国の+20,761人だ。これは世界で断トツのトップだ。次がスペインで+8,950人、ドイツが+6,824人と続く。翻って日本はどうかと言えば、前日の数値がややおかしかったのでより増加数が水増しの計算となっている可能性もあるが、前日比+306人で世界第20位である。トップを走る米国に比べると約68分の1、第2位のスペインと比べるとほぼ30分の1である。

続いて右側の表を見てみよう。こちらは亡くなれた方の増加数だ。今度はトップが断トツでスペインとなる。その数1,042人は第2位のイタリアよりも153人も多い。米国も前日比で445人も増えている。ならば日本はどうかと言えば、前日比で+3人だ。これはルクセンブルグや沈静化し始めた中国と一緒で、特に足許で加速した様子はない。

新型コロナウイルスには2種類あるらしい

ここまでつらつらと数字を見てきたが、都知事が「感染爆発 重大局面(オーバーシュート 重大局面)」と訴えるほどに「爆発」或いは「オーバーシュート」しているとは数値上は感じられない。更に付け加えると、ここでは人口を一切加味していないのにだ。勿論、このあたりが臨界点で、これを超えると一気にゼロの数が二つ三つ増えるギリギリの線なのかも知れないということ可能性は否定しない。そうなのかも知れない。ただ常識的にはピンと来ないのは事実だ。

首都東京の総人口は約1,400万人だ。実は23区内の人口だけでベルギー、チェコ、ポルトガル、スウェーデン、オーストリア、イスラエル、スイスなどの一国の総人口に匹敵する。これは住民票を置いている人だけで、日中に隣県から通勤や通学してくる人は含まれていない。

またこれらの欧州などの国々に感染が拡がり始めた時間は当然日本よりもひと月以上遅れている。にも拘らず、既に感染者数は3千人台から7,8千人に及び、最悪のスイスにおいては、人口が23区のそれよりも100万人近く少ない857万人にも関わらず、既に感染者数が13,000人にもなっている。東京都は3月28日までの累計で362人だ。

冒頭申し上げたように、私は医療関係者ではなく、政府の要人でも無いので公開されていない情報は持ち合わせない。ただ日本医事新報社の緊急寄稿されている白木公康 (千里金蘭大学副学長,富山大学名誉教授(医学部))の記事で、新型コロナウイルスにはL型とS型の2種類があることを知った。

素人の私が要約すると間違える可能性が高いので原文をそのまま引用させて頂く。曰く「新型コロナウイルスの103株の遺伝子を比較した結果,2万8144番目の塩基の違いによってアミノ酸をセリン(S型)とロイシン(L型)に分けると,L型は中国・武漢で,1月7日以前の分離株の約96%であった。S型は武漢以外で,1月7日以降の分離株では約38%を占めていた。そのことから,L型はS型よりaggressiveと報告されている1)。両者は,約1万個の特定部位のアミノ酸の1つの違いなので,免疫学的に違うウイルスではなく,2回かかるとは思われないが,ウイルスの病原性や広がりの研究には重要と思われる。」だそうだ。もしかすると、より強力な方が上陸してくる(既にしている)のかも知れない。

もしかすると、この辺りのことについて、政府関係者や医療関係の専門家の人達だけが知り得る何かがあるのかも知れない。だが、単純に数字だけを解きほぐすなら、上述のような結果になる。この結果についてそれでも「感染爆発 重大局面(オーバーシュート 重大局面)」と捉えるかどうかは各人のご判断にお任せする。当然、国や地方自治体からの要請には従うというのも当たり前の話だということもお忘れなく。

市場関係者としては、兎に角、一刻も早くこの大騒ぎが沈静化してくれることを望むばかりである。

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ファンドガレージ 大島和隆

Fund Garageへようこそ。主宰の大島和隆です。投資で納得がいく成果を得る最良の方法は、自分自身である程度「中身の評価」や「モノの良し悪し」を判断が出来るところから始めることです。その為にも、まず身近なところから始めましょう。投資で勝つには「急がば回れ」です。Fund Garageはその為に、私の経験に基づいて、ご自身の知見の活かし方などもお伝えしていきます。