FG Free Report 株式投資における銘柄の賢い見方とは?(1月9日号抜粋)

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みなさまは投資判断を下す際、何を軸に行っているでしょうか。また、どのような銘柄に、どのようなアプローチ方法で着目していけばよいのかという悩みも多いかもしれません。今回は、世界の自動車業界をリードするトヨタ自動車を例にとりながら、上手な銘柄の見方をプロのファンドマネージャーがお教えします。

投資での資産形成をお考えの方も、既に投資を始められている方も、ご自身の知識と照らし合わせながらご覧ください。

(Fund Garage編集部)

CY2023が始まった

2023年が穏やかに幕を開けた。

年末年始のこの2週間で、株式市場の水準は殆ど変わっていなかったことが、それを裏付ける。

穏やかとは言えど確かに、例えばロシアは相変わらずウクライナ侵攻を続けたままだし、ゼロコロナ政策を突然方向転換した中国の景気失速は今後も気になる。また中台間の問題も米国が絡んでもつれたままであり、北朝鮮のミサイル問題だって絶えない。

そのような世界情勢を受けて、様々なセンチメントが沸き起こり、目先の市場は過敏に動くことがあるかもしれない。

しかしそれを悲観的にばかり捉えてしまうのは、決して良いことではない。未来予想は、あくまで「予想」に過ぎないのだから。

 

ではそんな今年、みなさまがどのように投資先を吟味し決定していくのがよいかということを、今回はトヨタ自動車(7203)の例を見ながらケーススタディ的にお伝えしていく。是非今後の投資のご参考にしてほしい。

(私の専門分野が自動車関連と半導体分野であるため。自動車関連分野にあまり詳しくない方にも理解していただけるように説明するので、最後までお読みいただけると幸いだ。)

投資する銘柄の見極め方

銘柄は何種類選ぶのがよいか?

トヨタの話題に入る前にまず、投資家には二つのパターンがあるという話をしたい。

ひとつは常に新しい銘柄を追い続けるタイプ(「広く、浅く」タイプ)で、もうひとつは大体いつも同じような銘柄をフォローしているタイプ(「狭く、深く」タイプ)だ。

どちらのやり方が正解というものはない。ただ、前者の方法だとどうしても、短期に回転売買を繰り返すような方法を取らざるを得なくなる。

一方、後者だと個々の企業についての深堀が出来る。さらに慣れてくると個々の銘柄の株価運びや、居心地の良い株値位置なども直感で感じられるようになる。

だから自らパッシブ運用を行うのでなければ、通常の個人投資家が「コア」として捉えるべき銘柄数は5銘柄程度もあれば良いと私は考える。

すると、そのコア銘柄に関わる周辺銘柄が次第と必ず視野に入ってくる。

つまり、「コア」として5銘柄、「周辺銘柄」として15銘柄、合わせて20銘柄程度が自動的に「よく知る銘柄」という感じになるだろう。

その程度まで膨らんだら、もう新しい銘柄は意図的に増やさないようにしても良いだろう。経験を積んでいくうちに自ずと目に入ってくる銘柄は増えてくるものだ。

CY2023、トヨタ自動車に期待する理由

では、今回のレポートのメインテーマに移ろう。

そもそも私がトヨタ自動車(7203)に期待する理由は3つある。それは、

①水素エンジンの完成度

②カーボンニュートラルへの取り組み

③社長の人となり

である。

それぞれ次から詳しく見ていこう。

①電気自動車 vs. 水素自動車

昨年のクリスマス、米国本土を大寒波が襲った。NY州でも記録的な大雪となり、米国のほぼ全土で異常気象が話題となった。同様に日本でも、24時間を超えて国道が立ち往生に陥った例が各地で報じられた。

そんな中、話題となったのが電気自動車の「ガス欠」ならぬ「電欠」問題だ。

ガソリン車でもディーゼル車でも、或いはHEV(ハイブリッド車)でも、大雪の中の立ち往生時に問題となるのは排気ガスから出る一酸化炭素だ。エンジンを動かしたままヒーターを作動させていると、排気管周りに雪が溜まって徐々にクルマの周りに一酸化炭素が充満する。これは一酸化炭素中毒死を引き起こす可能性があるため、大変危険だ。

だからもし、雪道でクルマが立ち往生したら、寒さを堪えてエンジンを切るしかない。ちなみにJAFによると、車内はあっという間に車外と変わらない温度まで低下してしまうらしい。

この点において、一見すると排気ガスが無いBEV(電気自動車)に利があるように思われるが、残念ながら、24時間以上の立ち往生の間中、BEVもバッテリーでヒータを作動させ続けることは殆ど出来ないという。

またBEVはバッテリー残量が5%になるとバッテリー保護の観点から自動的に電源が落ちる仕組みなっている。つまり立ち往生してしまった場合、ヒーターに使える電気容量はかなり限られているということだ。

さらに立ち往生が解除になった時、また問題は起きる。

それは、BEVのバッテリー充電にはたとえ高速充電器を利用しても30分程度の時間を要するため、即座に移動ができないという問題だ。

ガス欠になってしまった車に対しては、自衛隊が携行缶で燃料を補給することができたが、電気自動車についてはレッカー車で移動させるしかなく、更なる手間が掛かった例が後を絶たない。

では一方で水素自動車やFCEV車(燃料電池自動車)はどうか。

水素を燃料としている場合は、一酸化炭素中毒の問題は発生しないので、立ち往生中においても「水素切れ」になるまで普通にヒーターを使うことは可能だ。

ただガソリンや軽油のように携行缶で運ぶわけにはいかないので、水素を積んだ専用トラックから充填することにはなるだろう。

それでも充填にかかかる時間は満タンにする場合で約3分と言われており、ガソリン車と変わらない。

つまり、今後災害救助の器材に移動式の充填装置が搭載されるようになれば、数分で自走させることができるということだ。

そうなれば一酸化炭素中毒を気にしてヒーターを切らずに済み、雪国で好まれる可能性だって大いにあるだろう。

 

こちらの動画も併せてご覧いただくと、より理解が深まるだろう。

②全方位でカーボンニュートラルに取組むのはトヨタ自動車だけ

昨年ドイツのBMWは、BEVだけでなく、燃料電池車(FCEV)の開発も行うと発表した。

水素エンジンについてはトラック向けのコンソーシアムを組んだ。元々BMWは7シリーズで水素エンジンの開発を行っていたことがあったが、一旦は中止している。

そして今回「iX5ハイドロジェン」として開発を進めているようだが、どうやらその燃料電池部分はトヨタ自動車製を利用するようだ。

このように欧州勢が近時BEV一本足打法から方針転換をしているのは、電力供給事情によるところが大きい。

ロシアのウクライナ侵攻後、EU圏のエネルギー政策は一変した(ヨーロッパの電気代急騰については『FG Free Report アフターコロナの働き方改革』もご参照いただきたい)。

つまりもし発電総量が充分に確保出来なければBEV化は夢物語でしかないのだ。

しかし各社がカーボンニュートラルへのソリューションで混乱する中、トヨタ自動車だけは当初から全てのソリューションを並行して開発してきた。

初代プリウスが公道を走るようになって約26年が経過したが、普通に公道を走れるBEV、HEV、PHEV、そしてFCEVを生産する唯一の自動車メーカーがトヨタ自動車なのである。

前述の通り、水素エンジンの開発は相当な完成度にまで仕上げている。

実際に走る水素エンジン車については、是非、このYouTubeを見て欲しい。タイトルは「ついに欧州で「水素エンジン車」が初走行! モリゾウに密着取材 WRC 2022 Round9ベルギー|トヨタイムズ」だ。

 

③株主として社長「豊田章男氏」を見る

トヨタ自動車の場合、社長であり、同社のマスタードライバーであり、時にレーシングスーツを着て自らモータースポーツ競技に参加するモリゾウこと豊田章男社長の魅力は、投資家としてかなり高く評価したいポイントだ。

何故なら「クルマ屋の社長がクルマ好きなことがダイレクトに伝わってくる」からだ。これは、企業への大きな信頼につながるのではないだろうか。

会社は社長で随分と変わる。私が過去35年間の市場関係者としてキャリアの中で見てきた山のような数の社長やCEOの中で、間違いなく豊田章男社長は3本の指に入るほど「好き」な社長だ。

ここで敢えて「好き」と表現したのは、例えどんなに辣腕で、経営者として傑出した「凄い人」だとしても、その企業をグイグイ引っ張れるかと言えばそうではないからだ。

その一方で株主は、取締役を株主総会で選任する権利を持つ。そしてその中から誰が社長や専務、或いは常務や平取りとなるかを決めるのが取締役会だ。もうその段階で株主の手から企業の運営は離れていることは忘れてはならない。

だからこそ、投資家は株主として企業を所有しようと思うのならば、それ相応の納得感を持てるほどに、その企業なり、経営陣なりについて知るべきなのだ。

何を作っているのか、どんなサービスを提供しているのか、どんな人が経営の舵を握っているのか、どこに向かって走っているのか、今風に言えば、ESGやSDGsへの対応はどうなっているのかなどを知るべきなのだと私は思う。

その意味で練習台のひとつとしてでも、是非とも「トヨタイムズ」の他の動画も見て頂きたい。きっと多くの気づきが得られることだろうと思う。

例えばこちらは全編で1時間13分もある動画だが、この年末年始で私が最も感銘を受けたものの一つであるのでご紹介する。

「【豊田章男×富川悠太】激動の2022年を語る「電気?ハイブリッド?水素?カーボンニュートラルの今」「”ロシア生産事業終了”決断の背景」「自然災害とどう向き合う?」たっぷりとお伝えします」という長いタイトルにも見合うだけ、充分に見応えがあるものだった。

投資家として、なぜCY2023はトヨタ自動車に期待出来るかが詰まっていた。

株主になるとはどういうことか

株式投資の原点は「株主としてその企業を所有すること」だと私は考えている。

勿論値上がりすれば嬉しいし、配当や株主優待(日本株だけ)を貰うことも嬉しいものだ。

ただ本当の意味での長期投資、つまり多少の値上がり値下がりなどを気にせず、納得・安心して持ち続けていられる銘柄(企業)に出会えた時ほど、投資家として嬉しいものは無いと言える。

そして不思議と(実際は理屈通りなのだが)そうした株式投資が投資家として報われなかったことは無い。(※勿論、株価が一直線に右肩上がり、途中の下落で評価損を抱えることもないという意味では決してない。)

極端なことを言えば、株式投資で損益が確定するのは株主というステータスを放棄する時だ。つまり株を手放した時。

株主であり続ける限り、時価と比較した評価損益は日々刻々と変化するが、それはあくまでも評価損益であり、実現した損益とは全く違うものだからだ。

ならば投資家はどんな時、株を売ろう、すなわち「株主でいるのは諦めよう」と思うのだろうか。

実はこれは、投資判断を下す際に、最も重要となるポイントを反対側から捉えている質問だ。

是非、ご自身でも一度考えてみて欲しい。「なぜ、株主を諦めよう・止めよう」と判断するのか。

この答えを自分なりに見つけるには、まずは「株主になる」、或いは「株主としてその企業を所有する」という株式投資の根源的な意味を自分なりに考えてみる必要があることがお分かり頂けると思う。

今回、その意味でたっぷりとトヨタ自動車の株主になることの魅力を垣間見ることが出来る動画を見つけた。私はそもそも根っからのトヨタLoverではあるのだが、あらためてその株主であることの原点となる喜びを見つけられた。

(下記の画像をクリック)

お気付きになっただろうか。この1時間余りの動画の中で、トヨタ自動車の収益状況のことは全く語られていない。

語られているのは、CY2022にトヨタ自動車が直面した課題と、それに際しての社長や社内の対応、考え方、その時の雰囲気などだ。言い換えれば、トヨタ自動車のCY2022の実務のリアリティだ。

もうひとつ重要なテーマは、「カーボンニュートラル」に対する業界トップ企業の、そのまたトップのコメントだ。

いわゆる「電気自動車一神教(いっしんきょう)」の人からは反論も聞こえてきそうな話が、トップのコメントとして伝わってくる。ここまで言ってしまって大丈夫かと、こちらの方が俄かに心配さえしてしまうほどだ。

しかしその考え方に納得するかしないかは、投資家が株主になるかならないかを含めて判断をすればいいのだ。

もちろんFund GarageではCY2023も、この切り口については多くのヒントも含めてお伝え出来るように取り組んでいくつもりだ。

その傍ら、誰にでも出来るのが「企業のWebページ」をあっちこっち見て回ることがある。

そしてその会社が最も伝えたいと配慮していることが何なのかを探る。

繰り返しにはなるが、トヨタ自動車の場合、まずはこの「トヨタイムズ」の他の動画を観ることだ。何故なら、IRページなどは必要に迫られて作っているが、この「トヨタイムズ」は誰に強制されたものではないからだ。これはトヨタ自動車が伝えたいことがあるからこそ、用意されたページだ。

これをフックに他企業にも拡げて行けば良いかも知れない。そうした中で、何か疑問点や質問が生じれば、遠慮なくFund Garage宛に質問メールを投げて頂ければと思う。

まとめ

今回は企業を深堀りするケーススタディとしてトヨタ自動車を取り上げた。

まとめると以下の通りだ。

  1. 株式投資の原点は「株主としてその企業を所有すること」
  2. この株式投資の根源的な意味を今一度確認してみて欲しい
  3. 会社の経営を深く知ることで、安心して長期投資できる銘柄を選ぼう
  4. 数字だけでなく、経営陣の人となりのような定性的なことも大事だ
  5. こうして個々の企業について深掘るのならば、コア保有銘柄は5種類程度で十分

 

あえてトヨタ自動車の内容については総括していない。この記事に捉われず、ご自身でも投資する企業については考え・調べてみて欲しいからだ。

だがもし、今回の記事・動画が気に入って、徐々に自分自身でもトヨタ自動車について掘り下げるようなことになれば、自動的に「デンソー(6902)」「アイシン(7259)」など、直系のTier1サプライヤーは目に入るようになるだろう。

更にバッテリーだ、水素だということになれば、「パナソニック(6752)」や「岩谷産業(8088)」なども気になるかも知れない。

点を一つずつバラバラに追い掛けるより、脳のシナプスが繋がるように連続する流れで追い掛けると相乗効果も期待出来るというものだ。

ちょうどオセロゲームを思い出して貰えば良いかと思う。バラバラに自分の駒を置くよりも、四隅を押さえに行く。するとある段階で連続して相手の駒もひっくり返して自分の色に変えることが出来る、正にあれと同じ考え方だ。

目先の市場はCES2023でホンダとソニーが発表した電気自動車などの話題を一時的には重視するかも知れない。

しかし、それが企業収益にインパクトを与えるまでになるのはかなり先の話だ。

これまでのレポートでも何度かお伝えしているように、世間一般の見方や一時的な数字に惑わされることなく、ご自身の目で見てよく吟味したうえで投資判断をしてほしい。

これが何よりも大切だ。

編集部後記

こちらは、Fund Garageプレミアム会員専用の「プレミアム・レポート」の再編集版記事です。
公開から半年以上経った記事になりますので、現在の情勢とは異なる部分がございます当時の市場の空気と、普遍的な知見を皆様にお届けできれば幸いです。
また、こちらは無料版記事のため、最新の情報個別企業の解説についてはカットしております。
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