はじめに
月曜日に更新した「リスク商品の基本まとめ」はお楽しみいただけたでしょうか?
今回からは、「お客様を知る」をテーマとした記事を投稿していきます。商品をお客様に販売するに当たって、お客様を知ることは何より大事なことです。是非、この記事を読んで、ファンドマネージャーの知見を取り込んでみてください。
これまでの記事も以下にリンクを掲載します。もしまだご覧になっていない方は、是非こちらからご覧ください。
また、ここまでの内容をお読みいただいてご意見やご質問もあると思います。「正直、ここが全然わからん。」「もっとここを詳しく知りたい。」というご意見も、勿論大歓迎です。(ご意見頂ければ、編集部から主宰に直談判します。)
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では、本文をどうぞ。
1つ目の項目は「リスク許容度」という観点
「彼を知り、己を知れば百戦危うからず。」
これは孫氏の兵法の一節。相手の実力や現状をしっかりと把握し、自分自身のことをよくわきまえて戦えば、何度戦っても、勝つことができるものである。
同時にこうも記されている。
「彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。」
「彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆うし。」
一方「相手を知らずして、己を知れば、一たび勝ちて、一たび負く。更に相手を知らず、己を知らざれば戦うごとに必ず敗る」というものだ。これは戦の為の兵法だが、営業、リスク商品の販売についても、そっくりそのまま当て嵌まる。
約6割以上の人に、資産運用の経験があるのが日本
ここに面白い統計がある。「貯蓄から投資へ」と国家ぐるみで資金移動を促しても、日本ではお金が動かず銀行預金に滞留したままだと言われている。しかし実際には、約6割の人が資産運用の経験があるというのは驚きでもある。一方、「一度も資産運用をしたことが無い人が、約4割もいる」とも捉えられる。
また、現在資産運用を継続している人の約半数は60歳以上のシニア層で、その約6割は自分自身で資産運用の内容を判断している。これだけ見ると、営業マンの入り込む余地は一見少なく見える。しかし、資産運用について自分自身でよく勉強しているという人の割合は約3割程度である。
つまり、何かに流されて銘柄選びをされていることがわかる。孫氏の兵法に従えば、まだかなりな割合で掘り込むことが出来るという事だ。
お客様の何を知ったら戦に勝てるか?
前職では、英国の行動経済学の専門家達が開発した優秀なシステムを利用していた。リスク商品を販売する上で、お客様の何を知れば良いのかを自動的に解明するシステムだ。さすがプライベートバンキング・ビジネスの本場欧州でのノウハウである。
しかし、そんな高度なモデルを使わずとも、お客様のことで知るべき項目は地道に要領よく掴んでいくことは出来る。(多少時間はかかるが…。)自己流であれやこれやとお客様を質問攻めにしてはいけない。唯でさえ「商品のリスク説明」なる義務上の長い説明でその気が失せかけているお客様を、目の前から逃しかねない。ポイントはいくつかあるが、大事なことは2つ。
- お客様が投資を始めるにあたっては何を重視し、
- 実際に投資を始めたらどんなことを考えるようになるか
だ。「良い商品は何かあるの?」と問い掛けるお客様は多い。しかし「良い商品」は、買う前も、買ってからも、お客様毎に千差万別だ。
「リスク許容度」という重要だが、誤解の多いポイント
銀行のみならず、多くの金融機関がリスク商品の販売に際して、まずこの「リスク許容度」なるものをお客様毎に見極めて定義付しようとする。知っている人はわかると思うが、スコアリング・シートなどのあれである。それは高齢者取引ルールなども含めて、「適合性の原則」というコンプライアンス上の要請が必須だから行っている。
しかし、その内容の実態については極めて誤解を招きやすい。何故なら多くの場合、それは「他の金融機関との取引を含む、過去の取引実績」に依存する場合が多いからだ。決してゴルフに行った時に、どんなクラブ選択をするか?といったような質問から考えたりはしていない。
お客様が過去に受動的に言われるがままに、薦められるがままに投資してしまったものまでも含まれることが多いのだ。
一番手っ取り早いのは、お客様とゴルフを18H一緒に回ること
何をふざけたことを言っているんだとお叱りを受けそうだが、お客様のリスク商品との関わり合い方を端的に知る良い方法は、ゴルフを一緒に18H回ることだと真剣に思っている。私のようなダイビング好きにならば、一緒に一日海に行って2本程度潜るという方法もある。
どちらのスポーツにも大切な共通項は、
リスクマネージメント
だからだ。やり方はそれこそ千差万別ではあるが、「いいスコア」「楽しいゴルフ」「素晴らしいダイビング」をする上では、その人なりのリスクマネージメントが必要。そして、その巧拙が結果へと繋がる。
ミドルホール攻略法で見えてくるもの
ゴルフを例に考えてみよう。
ゴルフ場には様々なホールが18種類用意されているが、それは4つのロングホール(PAR5)、10種のミドルホール(PAR4)、そして4つのショートホール(PAR3)の18ホールである。PARとは最初の一打から数えて、何打目でグリーン上のカップにボールをめでたく沈められるかという意味である。
18H中に10Hもあることからも分かる通り、このミドルホールを如何に攻略するが/出来るかで、最終的なスコアに大きな違いが出て来る。何故なら、2打目まででグリーンに乗せられれば、あとはパターでボールを2度転がすだけでPARが取れるからだ。だが最初のその2打に関しては、大して距離があるわけではなく、正に戦略が左右する。あとでその理由を明らかにするが、私は飛距離をバンバン出せる若い頃から、実は一度も老練の、正にベテランの父親にスコアで勝てた例がなかった。
例えば、テクニカルなドッグレッグのミドルホールならば…
ドッグレッグとは犬の後ろ足のように、ホールの途中がグイっと左右に曲がっているホールのこと。
そのカーブの内側に池があったり、林があったりする。上手く打てて、その上を予定通りにボールが真っ直ぐ飛び越えてくれれば、1打目でグリーンが捉えられる。だがその分、ちょっとだけ無理して距離を稼げるように打たないとならない。一方、安全に左の曲がり角のちょっと先位までの中距離を飛ばし、更に2打目でもう一度残りの短中距離を丁寧に運べば、2打目でグリーンを確実に捉えられるようなホールでもある。
お客様のこうした場面での攻め方ひとつを見るだけで、過去の取引実績など関係なく、本質的なリスクマネージメントの姿勢を垣間見ることが出来る。
今回はここまでとしよう。次回もリスク許容度について語ってみようと思う。
おわりに
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(編集:Fund Garage 編集部)