半導体とひとことで言っても、メモリ半導体やロジック半導体といった様々な種類が存在します。その中でもメモリ半導体(特にDRAMやNAND)を主力として扱うのが、マイクロンテクノロジーです。
今回は、同社の2024年第4四半期決算結果で抑えるべき5つのポイントと、メモリ半導体とは何かについて詳しく解説する内容となっております。
投資での資産形成をお考えの方も、既に投資を始められている方も、ご自身の知識と照らし合わせながらご覧ください。
(Fund Garage編集部)
マイクロンテクノロジーが見せた「右肩上がりのビジネス・トレンド」
マイクロンテクノロジー(MU)の決算
先週現地25日の取引時間終了後に発表されたマイクロンテクノロジー(MU)の決算は、市場を歓喜させ興奮させるのに十分な内容だった。
- Non-GAAP EPS(一株あたりの純利益) は$1.18で、市場予想を$0.07上回った。
- 売上は$7.75B (+93.3% Y/Y)で、市場予想を$100M上回った。
特に記録的な売上高を更新したのは、NANDおよびストレージ事業であった(データセンターおよび自動車市場でも高い売上を記録した)。さらに2025会計年度に向けては、DRAMの最先端技術(1-beta DRAM)や232層のNAND技術(G8 NAND)をはじめとする製品の競争力強化に注力すると発表。
そのほかにも、HBM(高帯域幅メモリ)・AI対応PC・自動車用メモリなどもマイクロンの成長を支える分野であり、2025年度は大幅な収益改善と利益拡大が見込まれるとした。
マイクロンテクノロジー決算が示す、5つのインプリケーション
今回のマイクロンテクノロジーの決算説明および質疑応答は、現在のテクノロジー業界を考えるうえで非常に示唆に富んだものであった。特に象徴的な5つのポイントに分けて、以下に整理していく。
1. HBM(高帯域幅メモリ)の成長と普及
同社の予測によると、HBMの市場規模は2025年に250億ドルを超える。特に、AIサーバーや高性能コンピューティング用途での利用が拡大中。
⇨今後データセンターやAI処理の基盤技術として、HBMが不可欠な存在に。
2. AIデータセンターの需要拡大
データセンター向けのメモリおよびストレージソリューションが急成長しており、なかでもAIサーバー向けの高容量DRAMやLPDDRメモリの需要が著しく増加していると述べている。
⇨AIデータセンターを支えるために必要なインフラの進化を示唆。
3. PCおよびスマートフォン市場におけるAI対応機能の増加
AI対応PCやスマートフォンの普及が今後加速すると同社は予想。特にAI対応PCではメモリ容量が急速に増加しており、16GB以上のDRAMが標準となりつつある。
⇨データセンターやクラウドのみならず、エッジデバイス上でのAI処理能力の強化が今後の差別化要因に。
4. NANDメモリ市場の供給・需要バランスの変化
NANDメモリ市場は、業界全体で見れば技術移行は緩やかに、キャパシティへの投資は減少している。
⇨NAND市場が成熟期に入りつつあることを示し、今後の技術革新が緩やかになる一方で、長期的な収益性が確保されることを示唆。
5. 自動車市場におけるメモリ需要の持続的な成長
マイクロンは自動車向けメモリの売上が2024年に記録的な水準に達し、今後もインフォテインメントシステム(インフォメーションとエンターテイメントを合わせた車載システム)やADAS(先進運転支援システム)での需要が増加すると予測。特に、AI技術の進展により、自動車内のメモリやストレージの重要性が増している。
⇨自動車向けメモリは、メモリ業界にとって今後重要な新興分野に。
以上5つのポイントの中には、過去の無料記事で「右肩上がりのビジネス・トレンド」としていくつかご紹介してきたものもある。FundGarageが注目しているこれらの「右肩上がりのビジネス・トレンド」は、現状として力強く右肩上がりを続けており今後も成長が見込まれるということが、今回のマイクロンの決算結果からも明らかになったと言える。
参考記事はこちら
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・『FG Free Report AMD〜AI分野のオールラウンダー〜(11月4日号抜粋)』
・『FG Free Report AIの学習と推論とは?(12月25日号抜粋)』
・『FG Free Report 「データセンタAI」と「エッジAI」って何?(6月16日号抜粋)』
・『FG Free Report 多種多様な半導体の世界(7月3日号抜粋)』
マイクロンテクノロジーの主力製品、DRAMの進化
以上、マイクロンテクノロジーの決算内容を見てきたが、同社は半導体の中でもメモリ半導体「DRAM(揮発性メモリ)」を主力とする企業である。
なお、半導体を「メモリ半導体」と「ロジック半導体」に分けて見やすくした図を以下に載せておくので、ご参考になれば幸いだ。
昔はDRAMと言えば一種類だったのだが、現在のDRAMは用途やデバイスによって異なり、以下の3種類が重要な役割を果たしている。ただこれらはすべてがメインストリームというわけではなく、各分野において主流となっているものもあれば、特定のニッチ分野で使用されているものもある点は注意が必要だ。
DDR5 (High-capacity D5)
サーバー・デスクトップPC・ワークステーションなどの高性能コンピューティング用。大容量かつ高速なDDR5は、特にデータセンターで求められる技術。
LPDDR5 (Low Power DDR5)
モバイルデバイス・自動車(ADAS)・IoTデバイス用。主にエッジデバイス向けの省電力メモリ分野で現在の主流となっている。
HBM (High Bandwidth Memory)
HPC(高性能コンピューティング)・AI・データセンター・GPU・アクセラレータ用。特にAIや高性能コンピューティングにおいて重要な役割を果たしているが、一般的なデスクトップやラップトップPC向けのメモリではない。高い帯域幅と低レイテンシが求められる特定の分野で主流となっている。
まとめ
今回は、メモリ半導体分野で活躍するマイクロンテクノロジーについて以下の内容でお伝えした。
- マイクロンテクノロジーの2024年第4四半期決算内容は、NANDおよびストレージ事業で記録的な売上高を達成するなど、好調な結果であった。
- マイクロンの決算から見えてきた5つのポイントは、①HBM(高帯域幅メモリ)の成長と普及 ②AIデータセンターの需要拡大 ③PCおよびスマートフォン市場におけるAI対応機能の増加 ④NANDメモリ市場の供給・需要バランスの変化 ⑤自動車市場におけるメモリ需要の持続的な成長。
- 以上5つのポイントは、FundGarageが注目している「右肩上がりのビジネス・トレンド」が、現状として力強く右肩上がりを続けており今後も成長が見込まれるということを示唆している。
- マイクロンの主流製品であるDRAMは、現在も進化を遂げており、データセンター用・エッジデバイス向けの省電力メモリ用・AIなどの高性能コンピューティング用の3つがある。
おそらく世間一般ではあまり知られていないかなり詳しいところまで切り込んだが、いかがだっただろうか。
DRAMと一言で言う(これが言えるだけでも半導体への最低限の理解はあるのだが…)だけでは技術理解が不足することがある。だから今後も、既存の技術だとしても知識はアップデートし続けていきたいものだ。
編集部後記
こちらは、Fund Garageプレミアム会員専用の「プレミアム・レポート」の再編集版記事です。
公開から半年以上経った記事になりますので、現在の情勢とは異なる部分がございます。当時の市場の空気と、普遍的な知見の皆様にお届けできれば幸いです。
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