ポートフォリオの概況
2021年2月の月間パフォーマンス
「リスク中程度のモデル・ポートフォリオ」の2021年2月末までのパフォーマンスは、ドル建てポートフォリオで設定来が月末201.63%(設定来年率5.17%複利)となり、2020年年初来のパフォーマンスは絶対値でプラス9.19%となりました。円建てポートフォリオは2月末時点で181.60%ですから、2020年年初来のパフォーマンスはプラス6.74%となります。ドル建てと円建てポートフォリオのパフォーマンス差は為替が要因です。多くの為替ストラテジストは今年の為替見通しを円高と予想していましたが、3月中旬時点ではドル円は109円台まで、ユーロ円は130円台、ポンド円は152円まで円の全面安が予想に反して進んでいます。この恩恵は勿論円建てポートフォリオは受けておりますが、2月末時点ではドル円がまだ106.23円でしたので、2019年年末の108.67円に比べるとまだ円高となっています。
単月のパフォーマンスはドル建てポートフォリオが久し振りにマイナスとなり△0.08%、円建てポートフォリオは為替の円安分を反映してプラス+1.59%となりました。
「すわ、金利上昇」と過剰反応に見える米株式市場
2月の中旬以降は株式市場はかなりボラタイルな状況になりましたが、それでも国際分散投資のポートフォリオのパフォーマンスは総じて安定していると言えます。株価がボラタイルな状況になった背景には米国等が景気回復期待から長期金利が上昇したからですが、かなり株価の方は過剰反応のように思われます。確かに昨年パンデミックが始まった直後の金利が低下した水準に比べれば「長期金利が上昇した」という表現に間違いはないですが、その水準は概ねパンデミックの直前の水準に戻しただけであり、またFRB議長を始め、各国中央銀行の姿勢には何ら変化はありません。
またやはり長期投資を成功させるには、長期的な時間軸で物事を推し量る必要もありますが、下記に示す米国金利の長期推移の通り、現状は歴史的見てかなり例外的に低い水準にあることがわかります。
「長期金利が上昇するとグロース株のプレミアムが剥落する」とも言われますが、上記チャートから2000年前後のドットコム・バブルの頃の金利水準を確認してみて下さい。ほぼ全期間の金利が6%前後にあることは明らかです。果たしてあの頃買われたのは「バリュー株」だったのでしょうか?冷静な判断が必要かと思います。
前回ご案内しました通り、今年もSAA(Strategic Asset Allocation)の変更はありません。併せて、リスク許容度が中程度のモデル・ポートフォリオも現状維持としております。
Fund Garageのアセットアロケーションの投資比率などは、プレミアム会員に年間契約頂いたお客様には、ご照会の都度ご案内させて頂いております。
<EVよりもFCVに期待>
欧州勢、中国勢がEV車に熱心な本当の理由
欧州自動車メーカー、及び中国自動車メーカーを中心にEV(電気自動車)への関心が高まっていることはご高承の通り。ただ本当にEVがICE(内燃機関車)の代替として全世界的に普及するのかと言えば、非常に疑問だと言わざるを得ない。確かにEVはクルマが走る段階においてはゼロエミッションではある。だが、その生産段階で排出されるCO2や、そもそも毎回の充電に使われる電力がどこから来るのか、どうやって発電するのかということを考えると、カーボンニュートラルにするのは、少なくとも米国、日本、そして実は中国も含めて、その電力発電の現状を考えると非常に難しい。フランスは原子力発電のウェイトが高く、また地続きにEU諸国へ電力融通も出来ることから、EV化という流れも可能に見えるが、実は欧州全体の電力供給能力には余裕はさほどなく、寧ろ冬場や夏場には不足している。そこに全車両の消費する電力を賄える供給能力を付加するのは、相当に困難な道が待ち受けている。原子力発電は解決策候補にはなり難い。
なぜ欧州が電気自動車化へ急激に舵を切っているのかと言えば、当然表向きは「脱炭素社会」であり、「カーボンニュートラル」を志向してのことだが、実ももう少しドロドロした政治的な思惑が見え隠れする。EU圏にとっても自動車産業は日米同様に裾野の広い重要な経済の礎であるが、技術的な優位性を日米自動車メーカーに譲ってしまった。それが環境エンジンとして「ディーゼルエンジン」の存在だ。
クルマの排出ガス規制の歴史自体は古いが、欧州で厳しくなったのはそう古い話では無い。逆に言えば、欧州はそんなことを気にしないで内燃機関のメリットを謳歌してきた。それ故、2000年以降に急激に高まった環境意識の中で、既にハイブリッド車を販売していた日本勢とガチンコ勝負出来る技術は無かった。
一方、例えばトヨタは51年排出ガス規制などの時代からこうした問題に取り組んでおり、1997年に世界で初めてハイブリッド車「プリウス」を市場投入する一方で、引き続き燃料電池車などの開発も進めていた。その中に実はディーゼル・エンジンも含まれている。
黒煙を吐き出すイメージの強いディーゼル・エンジンに米国ではアレルギー反応が強かったが、ハイブリッド車は環境意識の高いカリフォルニア州などでも素直に受け入れられた。メルセデスなどもハイブリッド車を開発していたが、プリウスなどのそれとはモーターを使う意図のベクトルは若干異なっていた。それはつまり環境よりもハイパワーの方だった。
欧州勢としては独自に技術的優位性を発揮出来るものをメインに据えたかったが、ハイブリッド車には出遅れたこともあり、ディーゼル・エンジンに目を向けた。だが実はディーゼル・エンジン車を環境に優しいものとする基礎技術を作ったのは日本だということはあまり知られていないかも知れない。たとえば高圧燃料噴射装置の「コモンレール」を最初に開発したのはデンソーだが、当面日の目を見ないとして温存していたのをドイツ・ボッシュが目をつけて商品化した。またパティキュレート・フィルターと呼ばれるハニカム構造の排出ガス・フィルターを作ったのも日本ガイシや特殊陶業だ。
それらの裏事情を飲み込んでも欧州では「アウトバーンなどの速度無制限高速道路があり、日本やカリフォルニアのような渋滞の多い道路事情とは異なる」という理屈付けでディーゼル・エンジン車を政府も後押しした。だから欧州ではディーゼル・エンジン車が一旦はデファクトとなった。だが、2014年にフォルクスワーゲンが排出ガス規制逃れの不正をしていたことが発覚すると、一気にディーゼル・エンジンへの信頼は低下して今日に至っている。
欧州勢は今更日本が先行するハイブリッド車の世界には入り難い。同様に中国にも米国よりも優位になれる技術が欲しいという覇権争い欲(半導体と同様)があり、これが欧州と中国が揃って電気自動車EVに舵を切っている背景と言われている。表向きの事情とは異なる、かなりドロドロとして大人の事情が垣間見える。
実力を見せるトヨタの環境対応技術
2000年代、自動車業界でハイブリッドだ、ディーゼルだ、燃料電池だ、或いは水素そのものだと議論が喧しく展開されていた頃、自動車各社も自社の注力方針を明確にしていった。だが、トヨタだけは「全方位開発」を続けると宣していたことを強く記憶している。事実、決算説明会やアナリスト説明会で著名な自動車担当アナリストが「なんで一つに絞らないんだ。研究開発費の無駄遣いだとは思わないのか」という主旨でどんなに攻め込んでも、「どの技術がメインとなるかはトヨタとしてもまだ見えないので、全方位で研究開発を続けます」と返答を繰り返していた。それが一時期、トヨタ株への評価低下の大きな理由にまでなったぐらいだ。
だが目に見えて伸びたのはHVであり、PHVだ。ディーゼル・エンジンは当初欧州メーカーから輸入してヤリスなどには搭載していたし、EVそのものは日産が先行したようにも見える。ホンダがFCVに注力しているようにも見えたが、やはり地道にFCVをトヨタも開発していたようだ。
写真はトヨタのミライというFCV(燃料電池車)の2世代目だ。これを昨年12月9日から販売していることはご高配の通り。ガソリンではなく、水素で走る。価格は710万円から805万円。エコカー減税や環境性能割、グリーン化特例といった税制面での優遇に加え、CEV補助金(クリーンエネルギー自動車導入事業費補助金)の対象となり、117万3000円が交付されるので、ちょっとした輸入車を購入するよりも安いぐらいでもある。つまり手の届く存在。
でもサラッとこの車両価格を見ていてはトヨタ自動車という日本を代表する企業の底力を見逃すかも知れない。実はこの価格でこのクォリティを実現するために「初代と比べると、半減以上に進められた」と開発責任者が語るのは燃料電池(FC)システムのコストだ。これを2分の1にしたという。燃料電池が最初に注目を集めた頃、つまり2000年前後だが、当時燃料電池で名を轟かしていたのはカナダの「バラード・パワーシステムズ」という会社だ。荏原製作所とのジョイントベンチャーで荏原バラードという会社まであったぐらいだ。だが現在、カナダのバラード社は2007年に自動車分野から撤退してしまっている。荏原バラードも2009年には解散している。バラードが自動車分野から撤退した理由は、価格を下げる有効な解決策が見出されず実現不可能と判断した為と言われている。でもそれをトヨタ自動車は実現してしまった。正に「Cool‼」としか言いようがない。
水素ステーションは今現在ではまだまだインフラとして少ないが、それでも初代ミライより+約30%となる850km(Gグレード)の航続距離を実現している。クラウンのハイブリッド車の満タンでの航続距離が僅かに長いぐらいだから、航続距離でそんなに不安は無くなってきたとも言える。ADASなどの安全装備は当然充実している。
日本でも東京都が2030年に全国レベルより先行して脱エンジン車と都知事が表明しているが、電力供給事情の大きな変革はまだまだ起こりそうもなく、EVの中にはHVも含まれるという中途半端な内容になっている。また米国でクルマにガソリンの様に電力を供給するとなると、発電所の動力問題もさることながら、実は送電網のインフラ老朽化の問題に突き当たる。米国の電力供給が日本のように安定していないのは有名な話だ。だから無停電電源装置などがIT機器の安定動作の為にも必要だというのは偽らざる事実だ。それならば寧ろ水素ステーションを新たに作った方が早いだろう。
ただ更に言えば、水素をどうやって取り出すかという問題は残されている。真にカーボンニュートラルを求めるのならば、川下だけでなく、川上まで遡って総合的に考える必要がある。「CCS:Carbon dioxide Capture and Storage(二酸化炭素回収・貯留)」という技術なども掘り下げてみて行く必要がある。
<日本が自動運転のトップに躍り出た>
ホンダがレベル3自動運転搭載のレジェンドを発表したことの意味
日本の自動運転対応は遅れていると思っている人が多いと思うが、これで日本がトップに躍り出たことになる。実は市販で購入でき、公道を自動運転(レベル3だが)で走ることが可能な世界初のクルマとなったからだ。AUDIのA8の方が早いと思われているかも知れないが、実はハードウェア的には準備が整ったものの、ドイツの法整備が追いつかず、結局形式指定は受けれていない。日本は2020年4月に道路交通法と道路運送車両法の一部を改正した法律の施行。改正道路交通法ではレベル3自動運転のクルマが道路を走ることを可能とし、改正道路運送車両法ではレベル3自動運転のクルマがどんなものであるかを定めることが出来た。これによって、日本ではレベル3自動運転のクルマが世界に先駆けて走ることが可能になり、レベル3自動運転のクルマが社会的に存在することが可能になった。
自動運転のレベル毎の違いを確認する
因みに、レベル1からレベル5までの自動運転車の定義を国土交通省のペーパーで確認する。レベル3以上で初めて「システムだけでクルマを走らせる」状況が特定条件下と雖も存在することになる。
ならば、今回発売開始となったホンダ・レジェンドのレベル3自動運転とは如何なるものか、まずは簡単にYouTubeの映像をご覧あれ。(画像クリックでYouTubeに飛びます)
実際の動画を見てどう感じられただろう。私の率直な印象を言えば、あまり驚きは無い。というか、寧ろ「この程度なんだ」というのが正直なところだ。既にAUDI A8で発表されていたものとハードウェア的にはそう違いを見つけられない。ただ確かに法整備がされて、それに準拠したものとして形式指定を受けられたのだから、かなり厳しい品質条件などはクリアしているのだろうと思う。僅か100台だけのリース販売とは言え、100台の自動運転車が街中にデビューすることになるのだから、その点は凄いことだとは思う。
レベル3の自動運転が普及するのは当分先と思われるが・・・
だがまだ普及には時間が掛かりそうだと感じたのも事実。まず価格が1,000万円(消費税抜き)とは驚いた。通常のホンダ・レジェンドが659万円(消費税抜き)なので、341万円、すなわち車両価格の半分相当以上をプラスして得られる効用が「自動車専用道路において速度が約30km/h未満の渋滞に近い混雑状況時に限り得られる自動運転」だということだ。幾らリースとは言え、恐らく特殊なニーズを持っている場合以外にこれを欲しいと思う人は少ないだろう。
少なくとも惜しげもなく大金をフェラーリに払うような層は買わないだろう。ショーファードリブンのクルマならば買う人も居るかも知れないが、ロールスロイスでもベントレーでもなく、ホンダ・レジェンドでは金額の絶対値では無く「レベル3の自動運転」という事にプレミアム感を持てなければ無理だ。既存のカーマニアには遡及しないし、成金趣味にも受けないだろう。値段がそれだけ高くなってしまっている理由は、制御技術やセンシング技術などの問題ではなく、全てが2重系統になっているフェイルセーフの為だ。
Honda SENSING Eliteと呼ばれるこのシステムには、フロントカメラユニットを2基備えている。フロントカメラを複数備えたシステムはスバル「アイサイト」や日産「プロパイロット 2.0」があるが、ホンダの場合2重化のために2基備えている。つまり、1基のフロントカメラと車体のセンサーでレベル3自動運転を実現し、もう1基のフロントカメラは、ほかのカメラになんらかの故障が生じた場合のための冗長性の為の予備だという。同様の冗長性は各所に確保されており、LiDARセンサーは5つ、レーダーセンサーは5つ備え、作動させる電源もセカンドバッテリとDC-DCコンバータにより完全2重系で構築されている。車両を制御するブレーキやステアリングも2重で内蔵と先進安全運転システムが2台分搭載されたような状態だ。これでは余程コストが下がらない限り普及価格帯には当分なりそうもない。おまけに世間は現在半導体不足だ。
となると、やはり当面はレベル2の段階のものを徹底的に普及させ、かつてパワーステアリング、パワーウインドウ、ABSなどがオプション装備から標準装備に変わっていった流れを踏襲するのがベストだろう。それらと同時に起こっている脱炭素化の流れもある。いずれにしてもクルマが膨大な量の半導体を使い始めようとしているだけは確かだ。ただそれはスマホやパソコンのビジネスモデルとは違う。上述の様なフェイルセーフがきっちりと組み込まれた考え方だ。そう考えた時、アップルの自動車産業参入というのは、仮に製造請負企業が出てきたとしても基本的な部分で設計思想が違うだろうと考えてしまう。暫くは中止することが必要だ。