国際分散投資シミュレーション 2021年1月末 <プレミアムレポート2月1日号の一部抜粋付き>

Facebook
Twitter
INDEX

ポートフォリオの概況

2021年1月の月間パフォーマンス

「リスク中程度のモデル・ポートフォリオ」の2021年1月末までのパフォーマンスは、ドル建てポートフォリオで設定来が月末201.80%となり、2020年年初来のパフォーマンスは絶対値でプラス9.28%となりました。円建てポートフォリオは12月末時点で178.75%ですから、2020年年初来のパフォーマンスはプラス5.07%となります。ドル建てと円建てポートフォリオのパフォーマンス差は為替が要因です。2021年1月は多くの為替ストラテジストの予想に反して円安に動いてはいますが、2019年年末の108.67円から見るとまだまだ円高が△3.86%になっているのが円建てポートフォリオがドル建てに対して負けています。

単月のパフォーマンスはドル建てポートフォリオが+0.63%、円建てポートフォリオもプラス+1.61%となりました。ただ月末よりもその前の週の方がパフォーマンスは優れています。何故かと言えば、やはりRobinhood Marketsの齎した問題で市場が揺れる直前だったからでしょう。先進国株式がその後調整をしています。その結果、1月を通じてベストパフォーマンスとなったアセットクラスは何とコモディティです。原油のじり高基調が続いているのが影響していると思われます。穀物も上昇しています。次が新興国株式となり、債券関係は金利がやや上昇していることからマイナスとなっています。

毎年、1月は毎年全体アセット・アロケーションの変更を検討するタイミングですが、結論としては変更はしていません。パフォーマンスの9割はアセット・アロケーションが決めるというセオリーの中で、アセット・アロケーションの微調整をしながらそこからも超過収益を得ようというTAA(Tactical Asset Allocation)という運用方法がありますが、このモデル・ポートフォリオはSAA(Strategic Asset Allocation)というコンセプトなので、そもそも頻繁にAllocationの変更はしません。

またリスク許容度が中程度のモデル・ポートフォリオということもあり、現状のままとすることと致しました。パフォーマンスとして上がっている成果も、上記チャートでご覧頂ける通り、悪くない結果になっていると思われます。SAAが良いのか、TAAが良いのか、という議論は別途他の記事でさせて頂きますが、基本的にどちらが優れているというものでもなく、投資家の考え方(投資特性)によるというのがFund Garageの考え方です。

Fund Garageのアセットアロケーションの投資比率などは、プレミアム会員に年間契約頂いたお客様には、ご照会の都度ご案内させて頂いております。

 

<プレミアムレポートからの抜粋にあたって>

「バブル」或いは「バブっている」という表現が簡単に使われるが、単に上昇の理由を説明し切らなくなると「バブルだ」と決めつける方が多いように思う。だが、本当のバブルとはそんな生易しいものでは無く、「バブル?」などと問う冷静さを誰もが無くした時が歴史上は「あとから振り返ってみて、あれはバブルだった」と実感するもの。今のように、単に「高所恐怖症」の人が増えた程度では「バブル」ではないと言えるだろう。少なくとも各国の中央銀行のスタンスが変わるまでは。

一方で、「投資」と「投機」は違うもの、という話は「バブルかどうか?」という議論とは別途にされるべきものだ。明らかに単なる「モメンタム・プレイ」や超短期的な需給で上下しているものは厳然と存在するが、それをして全体を論じるのは単に投資機会を失うだけ。

以下は「FG Premium Report 2月1日号(ロビンフッドは庶民の味方か否か?)」からの抜粋。1月の最終週の週末、米国市場はこのロビンフッド問題に身構えた。米国市場が身構えたロビンフッド問題とは何か、そしてその時何をどう見たのか。そして2月の第一週が大きな波乱なく過ぎ去ったことで、日米の株式市場の2月第2週の動きがあった。下記のレポートはその前夜となる1月31日の夕刻にプレミアム会員向けに配信されたものの抜粋。何かの参考になれば幸い。

【以下、「FG Premium Report 2月1日号(ロビンフッドは庶民の味方か否か?)」抜粋】

安易なマネーゲームには必ず落とし穴がある

2021年1月最終週(1月25日~1月29日)もアメリカの株式市場の動きが日本の株式市場の動きを左右したが、米国市場はごく一部の投機的な動きをしていた銘柄を除いて全体は大した動きにはなっていない(下のテーブル参照)。話題になっているのはロビンフッド・マーケッツ社が同社の株式投資アプリで提供しているプラットフォーム上で投機的な売買を行う個人投資家の動きと、その代表例としてのGAMESTOP(GME)の値動きだ。

チャートでその動きを確認すると、その動きには寧ろ感嘆してしまう。昨年9月からの日足チャートだが、ローソク足の右から6本目、すなわち先週木曜日(1月21日)の終値は43.03ドルでその前一週間は概ね40ドル台で推移している。ただ出来高だけは急に10百万株台に増えている。それ以前に遡ると価格は15ドル台から20ドル前後でしかない。話題となったのは現地1月28日の値動きで、チャートのローソク足で言うと一番右側だ。なんと一日の株価の値幅が369.45ドル(高値482.95ドル、安値113.5ドル)にも及ぶ。朝の寄付きは289.99ドルで終値は193.6ドルだからローソク足のボディー部分だけでも96.39ドルもある。日本株にはストップ値幅制限があるので、こんな激しい値動きは有り得ないが、幸か不幸か米国株式に値幅制限はない。そしてすったもんだがあって週末終値は325ドル、前日よりも+67.87%も上昇して終わっている。正に天国と地獄のギャンブル・ゲームだ。

ただ、このギャンブルに参戦した誰もが胆力勝負で「天国と地獄」を味わっているかというと、案外そうでも無さそうだ。

実は現物株式の裏側でオプション取引が活発に行われている。少なくとも先週の内に現物株だけでなく、コールオプションの買い建てポジションを作っていれば、今週はどんなに乱高下しても相当にウハウハな結果になっている筈だ。なにせ原資産価格が最高値だと約12倍にもなっているので、オプション価格が100倍になってもおかしくない。先週だけで軽くフェラーリが買えるほどに稼いだデイトレーダーも居るだろう。これはほぼ間違いなくオプション取引に絡む「ガンマ・スクイーズ」がひとつの要因だと思われる。「ガンマ・スクイーズ」については何れ別稿として説明する(専門的過ぎるので、中途半端に説明すると余計な誤解を招く可能性がある)ので、ここでは省略する。

これに伴う大きな問題はオプション取引や先物取引などのデリバティブ取引は、現物株式とは違って「ゼロ・サム・ゲーム」だということ。大儲けした人がいれば、必ずその儲け分をロスした投資家がいる。問題はそれが誰かということだ。「ガンマ・スクイーズ」などについても問題なく理解している人達が参加しているのならば全く問題は無い。そこまで分かってやっているのならば単純に自己責任だからだ。

今回の舞台となった個人投資家のデイトレーディングのプラットフォームを提供しているRobinhood Markets社(ロビンフッド・マーケッツ)のWebページからも推察出来るのは、従来からの個人投資家層とは違う投資家層が参加していること。それは余裕資金などまだ蓄えていない若い世代、まだ投資に不慣れだろうと推察出来る世代だ。米国ではメインはミレニアム世代が主たる顧客だと言われている。もし彼らが不勉強なままで、単に手数料が無料なこと、小額から市場に参加出来ることだけに注目して飛び込み、「現物株式の買い」以外の取引を行っていたら、つまりオプション取引もおこなっていたら、今後ひとつの社会問題に発展する可能性は充分に考え得る。そもそもRobinhood Markets社は2011年の「ウォール街を占拠せよ」にインスパイアされて、「収入に関わらず誰もが利用できる金融サービス」を目的に、金融の民衆化を目指して起業されたのだから。ただやっていること自体は下手なヘッジファンドも真っ青な玄人、いやそれより専門家レベルなことだ。

フェラーリを買えた投資家の反対側の人、つまり「コールオプションの買い建てポジション」を持っていた投資家のカウンターパーティーは当然「コールオプションの売り建てポジション」を持っている。フェラーリ組の投資家が儲けたのと同額の損失を被っている。もし、1人の大儲けを10人のカウンターパーティーが支えているならば、フェラーリ1台が仮に3000万円だとすれば、1人の損失は300万円で足りる。ヘッジファンドなどがカウンターパーティーならば、ファンドが最悪解散して清算に追い込まれるかも知れないが、ミレニアム世代に数万ドル相当の損失は大変な金額の筈だ。それも相当な人数に及ぶ筈だ。

もうひとつの可能性がコールオプションの買い建てを引き受けたマーケットメーカーだ。これが先程の「ガンマ・スクイーズ」と関係するのだが、理屈上、彼らはリスクを取っていない。

カバードコール戦略(Covered Call Strategy)は、通常はリスクが低い

「ポートフォリオ・インシュアランス」、つまりポートフォリオに株価の下落に備えた保険を掛ける時のアイデアとして代表的に説明されるのがプットオプションの買い建てだ。株価が万が一下落した時、その下落による損失を補うために損害保険を掛けるという発想で、仮にそれが金利や配当金などの「インカムゲイン(利子配当所得)」で賄えるならば、掛け捨て保険もありだろうという発想。だが、自動車保険、或いは60歳満期の定期生命保険がなどが一般にそうであるように、「元が取れる」という事態はあまり発生しない。元が取れてしまった時は、寧ろ大けがをしているか、亡くなってしまった時で、総論はOKでも、各論では痛い思いや、もっと悲しいことが起きている。つまりプレミアムの支払いだけずっと継続して掛け棄てていることになる。

これに対して、カバードコール戦略と呼ばれる「コールオプションの売り建て」は、満期時損益線だけを使った適当なテキストや評論家の解説だと「ハイ・リスク」という説明がされるが、実は機関投資家のファンドマネージャーなどは最も頻繁に行う効率が良いヘッジ取引の一種だ。ターゲットとしている値段まで原資産である株式が値上がりしなければ、そのオプション料は全額受け取り利益となるからだ。腕の見せ所は、そのオプションの満期時までの株価の上限推定。普通は巨利を狙うものでは無く、薄利を積み上げるものなので、結構な上値の余裕を見込んでポジションを取る。イメージとしては「小銭がチャリンチャリンと入って来る」感じとでも喩えると分かり易いかも知れない。だから基本的にはローリスクな取引と言える。

だが、原資産価格が一週間で約12倍にもなると話は全く違ってくるし、その事態はまず間違いなく想定していない。よくビギナーズラックに浮かれるファンドマネージャーが「9勝1敗で全ての利益をすっ飛ばす」と言われるが、どう考えてもその比ではなく、「小銭をチャリンチャリン稼ぐ」感覚のロー・リスク取引と思って大損失を被っている状態が容易に想像出来る。今後、被害状況などの全容が見えて来るだろう。報道されているように、ヘッジファンドなどの空売り筋だけがロスを積み上げたのならば極地的な問題として片づけられるだろうが、多くの個人投資家、それもミレニアム世代を巻き込んでいるとなると、やや余計な騒ぎになるかも知れない。

因みに、Robinhood Markets社のWebページには、オプション取引の基礎が書かれているが、当然ながらCovered Call Strategyの基礎的な説明がついている。すなわち、顧客がそれをしている可能性は高いということ。あの程度の説明でデリバティブに手を出しているとしたら、無防備に市場の暴風雨に晒された可能性が高い。

市場全体で見ると、特に大騒ぎするような下げでは無い

一方で局地戦から市場全体に目を向けると、下記のテーブルが示すように概ね3%台半ばの下げで一週間が終わっており、普通に考えて「上げ過程のスピード調整」と言える。これは「Healthy な下げ」と呼べるものだ。

日米各株式市場の先週の終値と週間騰落率

マザーズ市場の下落が大きいように思われるかも知れないが、年初来の動きでみると、実はマザーズも、次に下落率が高いNASDAQもまだプラスの領域にいる。それを示したのが下記のテーブル。表の中ほどの2月の行、当然現在はゼロが並んでいるが、CY2020Q4の企業決算の状況を見るかぎり、2月が終わって締めてみれば、結果はプラスだったということになりそうだと考えている。

各種市場のデータから読み取れること

市場には前述したような短期売買の仕掛け取引を行う人もいれば、純粋に投資価値を見極めて丁寧に下値を拾いながら長期投資を行う人まで様々な人々が入り乱れている。いつもお伝えしているように、短期的な価格は需給が決め、長期的には株価は企業収益のトレンドに収斂していく。だから明日の株価など、特別な水晶玉でも持っていない限り、誰にも本来は分からない筈だ。だが往々にして誰もが尤もらしい小理屈を言う人の声に耳を傾けがちである。本来は市場動向こそ冷静にデータを分析して、目先の動きに動じないで、投資価値を見極めてポジションを取り、それを続けるべきだ。

その意味でも株式市場はRobinhood Marketsのデイトレーダーから、ソフィスティケートされた長期投資家の巨大年金基金まで様々の人があつので面白味が膨らむのだが、冷静にマネーの動きを見極めるには債券市場の動きを見ておくことが非常に大切だ。超低金利に久しく放置されてもいるため、債券市場の発信力が弱まっているという見立てもあるが、参加者が機関投資家などの専門家にほぼ限られることから、景気見通しを含めてまだまだ債券市場が語ってくれることは多い。その意味でも、イールドカーブ分析は非常に有益だ。

先週26日、国際通貨基金(IMF)が2021年の世界経済見通しをプラス5.5%とし、昨年10月時点の前回見通しから0.3%上方修正した。新型コロナウイルスワクチン普及によって下期にかけて回復に弾みがつき、日米などによる景気支援策が成長押し上げに寄与するとの認識だ。

また米連邦準備理事会(FRB)が26─27日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利を現行のゼロ%近辺に据え置くと同時に、国債などを買い入れる量的緩和も現行水準を維持すると全会一致で決定した。新型コロナウイルス感染拡大で引き起こされた景気後退から完全に回復するまで、こうした景気支援策を継続すると改めて確約した。つまり金融のバルブはまだ当分は開けたままだということ。

これがITバブル頃、或いはその前の80年代後半の大バブルの末期との一番大きな違いだ。今をバブルだと論じるものは多いが、何をもってバブルと呼ぶかの定義はさておいて、日銀がインフレ抑制の為に金融調節を引き締め、利上げを続けた80年代末期、或いはグリーンスパン元FRB議長が「根拠なき熱狂」と断じて金融のバルブを締めているにもかかわらず株価が上昇したドットコム・バブル時との決定的な違いだ。

上記は先週一週間のイールドカーブの動き。データを記録しているのが馬鹿らしくなるぐらいにほぼ毎日同じ水準から動かない。そしてドル円相場も2021年は円高見通しを主張する為替ストラテジストが殆どだったが、少なくとも最初の1か月間、彼らの見通しは全面的に外れた。下のチャートはドル円相場のこのひと月間を示す。月末の終値は104.68円だ。

株式市場が発信している数値データ

先週の急落の中で株式市場も「きちんと正しく慌てて」いる。それを示すのが下記のチャート。S&P500指数の下落に合わせて、VIX指数(恐怖指数)と呼ばれるS&P500のインプライド・ボラティリティはきっちりと上昇している。それだけヘッジ・ニーズが高まって、ポートフォリオ・インシュアランスでは無いが保険を掛けている人が多いという事だ。みんなが保険を掛けた時、すなわち利食いたいもの、損切りたいもの、或いは現金比率を上げるための売りもの、そうしたものも併せて動いたという証拠だ。ならば、更にその下値を叩くように売る需要は余りない。売る人がいなければ下がらないという理屈に繋がる。

先週、日経平均はTOPIXが△2.58%下落する傍らで△3.38%と余分な下落を演じたが、これはまさしくNT倍率の調整。日経平均の方が割高に買われていた分の一部が修正された。これも下記のチャートをみれば一目瞭然だ。赤線で示したNT倍率が低下している。数値にして高値の15.48倍から15.29倍と0.19倍分の調整。日経平均の値幅で言うと343.67円程度だ。下のチャート、値幅を示す線は前週1月21日現在の日経平均とTOPIXのスプレッド(開き)を示すが、TOPIXの終値に合わせると青い線の日経平均がより下落して幅を狭めているのが分かる。だから印象的により下落したように感じるかも知れないが、その差分を調整すると週を通じた下落幅は△968.06円から△624.39円幅へと変わる。

 

無料のニュースレターに登録しませんか?

ウェブサイトに掲載した旬な話題を随時お送りします

ファンドガレージ 大島和隆

Fund Garageへようこそ。主宰の大島和隆です。投資で納得がいく成果を得る最良の方法は、自分自身である程度「中身の評価」や「モノの良し悪し」を判断が出来るところから始めることです。その為にも、まず身近なところから始めましょう。投資で勝つには「急がば回れ」です。Fund Garageはその為に、私の経験に基づいて、ご自身の知見の活かし方などもお伝えしていきます。