こんな惨めなインテルは見たことが無い(四半期決算)

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微細化の壁にぶつかったまま、遂に堪え切れなくなった

インテルが微細化技術の壁にぶつかったまま、過去に見たことがない醜態をさらしている。既に7社のアナリストが即日レーティングを引き下げている。10nmプロセスでの歩留まりを挙げられず、グラフィックス機能を省いた、ウェハの周辺チップ(昔ならば不良品)などを正式なコードを付けて販売するなど、苦肉の策で窮状をかわしてきたものの、遂にここで堪え切れなくなったようだ。巡航速度のデータセンタなどの需要ならば、まだ凌げたのかも知れない。しかし、COVID-19のパンデミックは、リモートワークやリモート学習という新しい波、若しくは既存のDX(デジタルトランスフォーメーション)の流れを加速させてしまった。

インテルが23日に発表した決算内容は、数値自体は市場予想を上回るものだった。慣れていなければ「何が悪いんだ?素晴らしい決算じゃない?」と思われるかも知れない。だがそれはもう生産能力が限界を超えているインテルを更にギリギリまで追い込んだ結果なのだろう。正直、「インテル Lover」の私としては、今日のカンファレンスコールは聞きたくなかった。というより、聞くべきでは無かった。Bob Swan CEOとGeorge Davis CFOが代わるがわる言い訳にしか取れない説明を続けていたが、アナリスト達からの質問に対する返答は、CEOの「もう勘弁してくれ」という心の声が聞こえてきそうな内容だった。

7nmのプロセスは半年から1年は遅れる

プレゼンテーションの中で、最初さらりとBob Swan CEOは「Turning to our 7-nanometer technology. We are seeing an approximate six-month shift in our 7-nanometer -based CPU product timing relative to prior expectations.(7nmの技術に話を変えましょう。私たちは現在だいたい6か月から12か月の当初の見込みからの遅れを考えています)」と言ってのけた。しかし、恐らく多くのアナリストがこのコメントを聞いて椅子から転げ落ちたと思われる。何故なら、この6か月から12か月が意味するところは、最初のクライアントPC向けCPUローンチで2022年後半から2023年はじめ、データセンタ向けCPUでは2023年前半を意味するからだ。

現在競合のAMDはTSMCをファンダリーとして既に7nmを量産し、更に2022年までに5nmのZen 4を立ち上げる。TSMCは2021年には3nmプロセスによるリスク生産を開始し、同年後半には正式な量産に入ると発表した。このような段階において、尚2年から3年先にまだ7nmがやっと立ち上がる予定だとインテルが白状したからだ。何世代分の技術開発の遅れとなるのだろう。

想像以上に力強いデータセンタなどの需要に応えるために、恐らく必死で未だ歩留まりの上がり切らない10nmのプロセスでCPUを作ることに全力を傾注したのだと思う。需要があり、商品を出荷したのだから4-6月期の決算は記録的な数字が出ても当然であろう。だが、その分だけ7nmへの対応が更に後手に回ったということだ。

今更ながらサードパーティー(ファンダリー)を使うと言い出した

インテルの凄みのひとつは、世界最大の半導体メーカーであり続けながら、最先端の技術を欲しいがままにしてきたことだ。微細加工技術の最先端には常にインテルが居た。言い方は悪いが、サムスン電子なんて目じゃなかった。ただそれはもう3年以上も前迄の話になる。

昨年「インテルCPU供給の遅れに潜む問題と今後の影響」と題するPart1~Part3に及ぶ記事を書いたのも、インテルが既に14nmから10nmへのシフトで混乱の極み達し、モノが供給されないことが半導体業界のみならず、多くのハイテク業界の業績に影響しはじめたからだ。CPUが無ければ、パソコンもサーバーも当然作れない。クラウド化で顧客ニーズがドンドン高まるデータセンタなどの需要にサーバーが行き渡らないのだ。それはすなわちCPUが足りないから。

ただそれでもインテルは自家製に拘った。恐らく王者のプライドがファンダリーにCPU製造を委託することを良しとしなかったのだろう。その他の種類の半導体ではファンダリーを使い始め、自社リソースは可能限りCPUに集中し、何とか14nmから10nmへのトランジションを成功させて、歩留まりを挙げようと必死だった。ただそこに神風が吹いてしまった。パンデミックによる「STAY HOME」の風だ。

インテルはそれでもパッケージングの新開発の技術を作り、異なったノードのダイを混載することで、少しでも10nmでの生産負担を減らし、かわそうとしてきたが、遂にそれも限界に来たようだ。具体的な名前はまだ公表せず、単に「サードパーティー」とか「ファンダリー」という言い方をBob Swan CEOはしていたが、最先端品の生産をついに外部に依存する決断をしたようだ。

既に多くの顧客はNo-Intelの策を講じ始めている

Cloudビジネスの最大手と言えばアマゾンドットコムのAWSだ。既に彼らは自前のサーバー用CPUをARMベースで開発し、利用し始めている。Googleも同様だ。そして記憶にもまだ新しいと思うが、AppleもMac向けのCPUをインテル製から自家製に変えることを決めた。表向きには「Steve Jobsの命令だった」と内製化に戻ることを説明していたが、恐らくインテル製CPUの供給不安も大きかったと思われる。

「Wintel」と呼ばれた蜜月時代を歩み、黄金期を過ごしたことのある盟友マイクロソフトはまだインテルのXeonプロセッサーに執着してくれていた。その結果、残念ながらマイクロソフトの4-6月期決算について、厳しい結果をもたらした。

さすがにマイクロソフトのSatya Nadella CEOもAmy Hood CFOも直接言及はしなかったが、このパンデミックの追い風が吹いている中、誰がどう考えてもOffice製品群などを抱えて、マイクロソフトのAzure(クラウドサービス)が加速しないわけがない。Microsoft Teamだってある。だが、確かに対前年比では+50%となったものの、前四半期に比べると61%の成長に減速した。恐らくその理由の一つに、データセンタのキャパシティの問題があったのではないかと訝ってしまう。能力を増強したいにもかかわらず、インテルから肝心のXeonプロセッサーが充分に供給されなければ、新たなサーバーを設置するわけにはいかない。その結果として、1-3月期に比べて成長率が落ちたというのは理が通る。まだマイクロソフトがCPU開発に乗り出すという話は聞こえてこないのがせめてもの救いだ。

過去25年間で一番輝かない愛しきインテル

私がインテルを真剣にカバーし始めてから既に25年が経つ。勿論良い時もあれば悪い時もあった。ただそれでも、インテルのロードマップだけは素晴らしかった。最先端の技術開発は続いていた。微細化にしても、パッケージングの進化についても、常にインテルが業界の先頭を歩いていた。だからインテルが新CPUのラインナップを更新する都度、新しいパソコンを組めば、何がどう変わったのか、半導体業界が何処に向かっているのかが見えたものだ。

残念ながら、その時代は完全に終わったようだ。6月にチーフアーキテクトのジム・ケラー氏が退任した陰には、何かもっと奥深い理由があるのかも知れない。

市場がこれをインテルの固有の問題を捉えてくれれば良いが、そうでないと市場全体が踊り場を迎える切っ掛けになってしまうかも知れない。24日のナスダック市場が開始されたが、始まって約10分、インテルの株価は△17.12%となる$50.06となっている。

頑張れ、インテル!

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ファンドガレージ 大島和隆

Fund Garageへようこそ。主宰の大島和隆です。投資で納得がいく成果を得る最良の方法は、自分自身である程度「中身の評価」や「モノの良し悪し」を判断が出来るところから始めることです。その為にも、まず身近なところから始めましょう。投資で勝つには「急がば回れ」です。Fund Garageはその為に、私の経験に基づいて、ご自身の知見の活かし方などもお伝えしていきます。