「ジニ係数」で所得格差の推移を確認する
「ジニ係数」とは?
所得格差を示すときによく使われる指標であるジニ係数、0から1までの数字で表され、完全に所得分配ができている(格差がない)状態ならば「0」、一方で1つの世帯がすべての所得を独占している(最大の格差が生じている)状態ならば「1」となる。
すなわち、完全に格差が無い社会があったとしたらジニ係数は「0(ゼロ)」であり、一人のボスが総取りして残りは所得ゼロだとすると「1(イチ)」となる。ただこのジニ係数には「当初所得ジニ係数」と「再分配所得ジニ係数」の2つが存在する。当初所得ジニ係数とは、純粋に前年の所得を対象に計算して求められた数値であり、再分配所得ジニ係数とは、社会保障料および税金の控除をおこない、年金や医療、介護などの社会保障給付をくわえた所得から求められる数値である。
それではこの所得格差を数値で示すジニ係数の意味を押さえた上で、実際に厚生労働省が発表している最新(と言っても2017年の所得に対するもの)を見てみよう。
「再分配所得ジニ係数」で確認する
「当初所得ジニ係数」で見ると、2014年の0.5704がピークとなるが、2017年には0.5594まで低下してきている。一方で社会保障料および税金の控除、更に年金や医療、介護などの社会保障給付をくわえた所得で捉えると、「再分配所得ジニ係数」が示すように、直近のトレンドは2011年の03791をピークに2017年には0.3721と低下してきているのが分かる。逆に2011年は2008年の0.3758よりも増加してしまっており、実質的な所得格差が拡がったと読み取ることが出来る。
すなわち、昨今よく耳にする「株価上昇などにより、所得格差が一層拡大した」というのは単なる「印象」の問題に過ぎないのかも知れない。
問題は分配ではなく、成長なのでは?
因みに、2009年から2012年までの政権与党は旧民主党、2012年から2020年までが自民党安倍政権である。世界の株式市場の中で、旧民主党政権が国家運営をしていた時の株価推移が大きく世界に出遅れたことは市場関係者の誰もが記憶していることだが、今年2月、日経平均株価は30年振りに漸く30000円の大台を一旦回復した。
世界銀行の統計によると、国民一人当たりのGDPは、ITバブルに沸いた2000年当時は日米中の3か国の間では日本が一番高く38532.04USD、次いで米国が36334.91USD、中国が959.37USDとなるが、最新2019年のデータでは、米国が65279.53USDと大きく飛躍する中で、日本は40113.06USD、一方中国は10216.03USDとなっている。つまり変化率で見ると新興国であった中国が10.65倍なのは兎も角として、世界一の経済大国である米国でさえ1.80倍と飛躍した中で、日本は1.04倍とほぼ横ばいなのが問題なのではないか。
更に言えば、米国も中国も基本的に右肩上がりにGDPを伸ばしているが、実は日本の一人当たりのGDPは2015年に34524.47USDへと大きく減少している。東日本大震災の影響が長らく尾を引いたということもあるが、少なくともコンスタントに右肩上がりの成長を続けてきた訳では無い。また「少子高齢化で非生産人口が増えているから」という見方も出来るが、将来を展望する株式投資の為などではなく、この国の将来の為にも「成長」の可否こそ重要な課題だと思われる。「分配」については、イメージ論や感覚で語るのではなく、やはり定量的な統計に目を向けるべきであろう。