はじめに
新入行員諸君!読者の皆さま。
月曜日に更新した「お客様を知る③」はお楽しみいただけたでしょうか? 今回からは前回までの「リスク許容度」に続き、「コンポージャー(Composure)」という概念についてお伝えします。耳馴染みのない言葉だとは思いますが、非常に大事な観点です。是非ご覧ください。
また、ここまでの内容をお読みいただいてご意見やご質問もあると思います。「正直、ここが全然わからん。」「もっとここを詳しく知りたい。」というご意見も、勿論大歓迎です。(ご意見頂ければ、編集部から主宰に直談判します。)
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では、本文をどうぞ。
2つ目の項目は「コンポージャー(Composure)」という観点
正直な話、
「リスク許容度」として分析される結果は、金融機関側の「ご都合主義」に思えてならない。
何度も繰り返すように、たとえ株式投資の経験のある人でも、それが10年を超えるような長期投資を目指す資金であったとしても、損失が発生するのは嬉しくない。
確かに、ダイナミックに動く局面があることに関しては理解して受け入れることが出来る人はいる。しかし、買値よりも値下がりして、損失が膨らんでいる時に、「お客様はリスク許容度が高い方ですし、これは長期投資ですから、特にご心配なさっていないですよね?」などとは言えるわけがない。
つまり、お客様にリスクをご納得頂いた上で、株やデリバティブなどのハイリスク商品を買って頂いているというポーズを作るための、金融機関側の免罪符を作っているようにしか思えない。
だが、これから綴る「コンポージャー」という考え方は、リスク商品をお客様にお薦めする上で、実に重要な着目点になると考えている。
投資した後のお客様の投資態度は、程度の差はあるが、大きく2種類ある
「Composure」を直訳すると「落ち着き、沈着、 平静、冷静さ」となる。
お客様の投資リスクに対する考え方のひとつで、把握しておくと大変重宝するものだ。これは「リスク許容度」の高低とは関係なく、やはり高い人と、低い人とが存在する。案外、これが一番商品をお客様に進める上で、最も重要な項目となる場合が多い。
着目点は、過去の投資経験の話や、昨今の市場動向の会話の中で、
どの程度日常の中に市場変動への気配りが行われているか
などで、これらを知れば程度を見極めることが出来る。
例えば、コンポージャーが高いタイプからは、
「今持っている投信はいつ見ても同じような値段しかついていなくてね。」
などと、あまり日常的には気にしていない発言があるだろう。
逆に、コンポージャーが低いタイプからは、
「この間買った〇×投信は、上がったり下がったりが凄くて、毎朝基準価額を新聞で見て疲れちゃうよ。」
というような、日々チェックしていることを示唆する発言があるかもしれない。
どういう人が「コンポージャー」が高いか?
実社会のビジネスでリスクを取ることが多いようなタイプの人は、「コンポージャー」が高い場合が多い。鶏と卵の関係と同じにはなるが。腹が座っているというか、肝が据わっているというか。
アントレプレナー(起業家)タイプの人
である。
因みに私のような人間は当然ながら「コンポージャー」はとても高い。でなければ、ファンドマネージャーなど務まらない。
なので、こういうタイプの人が社長の会社の場合、そのNo.2となる副社長や専務に「コンポージャー」が低い人が居ると、リスク管理などがきちんと上手くいき会社の経営も安定する。謂わば「豊臣秀吉」に「黒田官兵衛」のような軍師の関係である。当然逆の場合もあるが、前者が新興企業、後者が大手金融機関ということも出来る。
高くても、低くても、悪いわけじゃないのがポイント
日本語にすると「落ち着き」がある・ない、或いは「冷静さ」が高い・低いと曲解してしまうことがある。すると、「コンポージャー」が低い方が悪いように思われてしまいがちだ。
しかし、行動経済学でみるところでは、
一旦投資を始めた段階で、お客様がその投資対象の値動きに日々どう対応されるか
ということを見ている項目である。高いから良くて、低いから悪いということは全く関係ない。
「コンポージャー」が高いと何が起こるか?
一般にこの「コンポージャー」が高い人の場合、投資を始めれば、市場がどう動こうがあまり気にしない。
何故なら、色々なことを当初に熟慮して投資を始めたのだから、日々のちょこまかしたことで、いちいち一喜一憂したりしないという意味である。その為に充分吟味したのだから、初志貫徹とでも言おうか、動じないタイプである。
だが、これが災いするときがある。本当にポジション変更などが必要な時でも、「このままで良いんだ」とほったらかしになってしまう可能性があることだ。こういう方には、担当の営業マンが状況の変化をきちんとご説明して、ポジションの変更を提案することになる。
逆に低いとどうなるか?
一般論で言えば、日々の状況の変化にソワソワし「どうなってるんだろう」と落ち着かないタイプである。
仮に「リスク許容度」が高かったとしても、このタイプはいる。このタイプには、市場が動いた時、正に今回のロシア情勢のような時には、細かな電話フォローなりをして、逐一状況のアップデートをしてあげる必要がある。タイプとしては、銀行のマネージメント層のような人に多い。
だが、リスク管理をきちんとしてさえあげれば、特に問題は無い。この点を見極めておく必要がある。
推奨する商品で注意を要する点
「コンポージャー」が低いお客様に対してお薦めする商品で一番のポイントとなるのが、
流動性と換金性
である。
たとえ「コンポージャー」が低くて、日々の市場変動にハラハラドキドキしてしまう方でも、好きな時にいつでも換金出来ることが担保されていることを説明してあげれば、「リスク許容度」に即した商品をお勧めすることが出来る。
逆にいくら「リスク許容度」が高くても、流動性/換金性が低い商品をお勧めして保有して貰ってしまうと、市場が短期的に良く思えない状況になった時に「一旦ご売却されては如何ですか?」というセールスが出来ず、「売りたい時に売れないなんて、聞いていなかったぞ」と事故の原因になったりするので注意を要する。
次回もコンポージャーについて、もう少し掘り下げてみたいと思う。
おわりに
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(編集:Fund Garage 編集部)