FG Free Report サイバーセキュリティ:基本知識と投資のポイント(12月4日号抜粋)

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昨今、世界的パンデミックの影響でリモートワークの機会が増え、クラウドサービスを頻繁に使うという方は多いのではないでしょうか。そのような状況で特に重要視されているのは、「サイバーセキュリティ」分野です。

今回は、サイバーセキュリティとはどのようなもので、具体的にどのような種類があるのか、そして投資のポイントをプロのファンドマネージャーが解説していきます。

投資での資産形成をお考えの方も、既に投資を始められている方も、ご自身の知識と照らし合わせながらご覧ください。

(Fund Garage編集部)

サイバーセキュリティへの理解を深めよう

サイバーセキュリティとは何か?

昨今、サイバーセキュリティの重要性が日増しに高まっている。

例えば、

  • AIの発展
  • クラウドサービスの伸長
  • リモートワークの普及
  • エッジAIの将来性
  • 自動運転車の拡大

といった技術の発展が、サイバーセキュリティの需要増加を後押ししていると言えよう。

ただサイバーセキュリティという言葉自体、非常に定義が曖昧に使われているからか「関連銘柄」と検索してみると、実に日本株だけで75銘柄もあるのには驚いた。ただここにリストアップされた銘柄で、グローバルに通用しているネームがあるかと言うと、正直最大の疑問符を投げ掛けずにはいられない。

そもそも、サイバーセキュリティとは何だろうか。サイバーセキュリティとは、「サイバー(cyber)=コンピュータネットワークに関する・インターネット上の・あるいはそれらに関連する語の接頭語」「セキュリティ(security)=安全・保安・防犯」を合わせた語彙である。

AWSのサイトによると、

サイバーセキュリティは、コンピュータ、ネットワーク、ソフトウェアアプリケーション、重要なシステム、およびデータを潜在的なデジタル脅威から保護するための慣行です。

とある。

ではこれを踏まえ、企業による設備投資の増加が見込まれる分野について、概要・具体例・主要企業を以下に整理する。

 

クラウドセキュリティ>

クラウドベースのアプリケーションやデータストレージの環境を保護するためのもの。これまで主流だったオンプレミス環境でのセキュリティ対策は、社内のハードウェア、サーバ、ネットワークの保護に主眼が置かれていた。しかし、場所を選ばずデータにアクセス可能なクラウド環境では、データひとつひとつのセキュリティ強化(データ暗号化や、不正アクセス防止対策(SWG※1CASB※2などアイデンティティ管理(多要素認証SSO※3などを講じる必要がある。

主要プレイヤー:ゼロスケーラー(ZS)、パロアルトネットワークス(PANW)、フォーティネット(FTNT)、オクタ(OKTA)


※1
SWG(セキュアウェブゲートウェイ)は、インターネット経由でのアクセスを保護する役目を果たす。例えば、危険なウェブサイトやマルウェアからユーザーを守ることが可能。

※2CASB(クラウドアクセスセキュリティブローカー)とは、ユーザーとクラウドサービスプロバイダーの間に置かれる仲介役。企業や組織が従業員のクラウドサービスの利用を可視化・制御して、一括管理する役割を果たす。

※3SSO(シングルサインオン)とは、一度のログイン認証で複数のクラウドサービスやアプリケーションにログインできるようにすること。パスワード一括管理。パスワードの使い回し防止や管理の効率化によるセキュリティ向上が期待できる。

<ネットワークセキュリティ>

リモートワークの増加によって、企業ネットワークに外部からアクセスする機会が増えている。そのため、データの入手・改ざん・破壊が目的のサイバー脅威がネットワークに侵入する危険性がある。ネットワークの入口の警備を強化するのに有効なのが、ファイアウォール侵入検知システムVPN※4の導入だ。

主要プレイヤー:チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ(CHKP)、フォーティネット(FTNT)、パロアルトネットワークス(PANW)


※4
VPN(バーチャルプライベートネットワーク)とは、暗号化したデータを、外部からは見えないバーチャルのトンネルを経由させて送受信する技術。たとえば、誰もがアクセス可能な公衆Wi-Fiを使用している時でも、このトンネルを利用することで第三者が通信内容を傍受できない仕組みになっている。

<エンドポイントセキュリティ>

リモートワークの活発化に伴い、社用端末を外に持ち出す機会が増えた。そこで、上記ネットワークセキュリティのみならず、個々のエンドポイント(PCやスマートフォンなどの端末)自体のセキュリティを強化することで、万が一外部からの侵害があっても被害を最小限に抑えられる。たとえば、エンドポイントがマルウェアに感染した際、【感染を迅速に検出→端末をネットワークから隔離→マルウェアの解析→感染データの削除】を行うことでエンドポイントを守る。

主要プレイヤー:クラウドストライク(CRWD)、フォーティネット(FTNT)

<脅威インテリジェンス>

日進月歩でテクノロジーが発展するのと同時に、サイバー攻撃も進化している。最近では、AIを悪用したサイバー攻撃も流行しているため、従来型のセキュリティ対策では技術が追いつかないケースが増えている。脅威インテリジェンスを活用すると、企業はサイバー攻撃の情報(攻撃動向や手法など)をリアルタイムで知ることができ、未知なるサイバー攻撃への迅速な対応が可能になる。

主要プレイヤー:クラウドストライク(CRWD)、パロアルトネットワークス(PANW)

 

「サイバーセキュリティ関連銘柄」…?

冒頭でも書いた通り、ひと言で「サイバーセキュリティ」と括って「関連銘柄」としてしまうのは、やはり疑問が残る。中には、「コンピューター・ウイルスソフト」の延長線上のものと捉えている話もあるほどだ。

例えば、サイバーセキュリティ業界の重要なプレイヤー2社、パロアルトネットワークス(PANW)とチェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ(CHKP)を比較してみるとわかりやすいだろう。

この2社は多くの点で競争しており、一見すると同じようなビジネスを展開している企業のようであるが、

  • パロアルトネットワークス(PANW)…技術革新市場拡大に焦点を当て、特にクラウドセキュリティとAIの分野で成長
  • チェック・ポイント(CHKP)…堅牢信頼性の高いセキュリティソリューションに重点を置き、安定した顧客基盤を維持

という、大きなビジネスモデルの違いがある。ご興味のある方は、ぜひ2社の公式サイト(PANWはこちら、CHKPはこちら)を比較してみてほしい。

つまり、顧客企業がどちらの製品やサービスを選択するかは、その企業の特定のニーズやセキュリティの優先事項に大きく依存するということだ。

投資家は決して技術の専門家ではないが、だからと言って「わからない」と放り出すべきではない。グローバルな市場シェアやファンダメンタルズ、ビジネスモデルをきちんと理解することが、やはり基本なのである。

まとめ

今回は、以下の論点でサイバーセキュリティへの理解を深めた。

 

  1. サイバーセキュリティとは、ネットワークやデータなどをサイバー攻撃といったデジタル脅威から保護するソリューションであり、現代の急速に広がるクラウドやAIの発展に伴い特に重要視されている分野である。
  2. 今後企業の設備投資が大きく見込まれるサイバーセキュリティの種類には、「クラウドセキュリティ」「ネットワークセキュリティ」「エンドポイントセキュリティ」「脅威インテリジェンス」がある。
  3. 「サイバーセキュリティ関連銘柄」と一括りにされるが多いが、それには疑問が残る。なぜなら、「サイバーセキュリティ」は多種多様であり、それによって企業(顧客)のニーズが全く異なるからだ。
  4. グローバルな市場シェアファンダメンタルズビジネスモデルをきちんと理解することが、やはり投資の基本なのである。

 

毎号、FundGarageでは主に半導体や自動車、AIというビジネス・トレンドについてお話ししているが、それらの技術革新とサイバーセキュリティはセットであるということが今回お分かりいただけただろう。

繰り返しにはなるが、投資家(特に個人投資家)は全員が投資対象の技術者やその道のプロというわけではない。ということはつまり、「日々の情報収集を怠らない謙虚で真摯な姿勢」が実を結ぶのである。

そのためには、企業イベントに参加してみたり、世界の政治経済の動向を詳しく調べたり、別の関連分野について調べてみたりするのも一手だ。

また、今後注目のビジネスや投資のポイントについてリアルタイムで知りたい方は、FundGarageプレミアムレポートにてお手伝いができるので、ぜひご活用いただければ幸いだ。

編集部後記

こちらは、Fund Garageプレミアム会員専用の「プレミアム・レポート」の再編集版記事です。
公開から半年以上経った記事になりますので、現在の情勢とは異なる部分がございます当時の市場の空気と、普遍的な知見の皆様にお届けできれば幸いです。
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