FG Free Report FG米国視察ツアー③「アナログ式投資活動」のススメ(10月16日号抜粋)

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これまで2回にわたってお伝えしてきた、FundGarage主宰の大島が2023年9月に行なった米国視察旅行レポートですが、今回が最終回になります。果たして、インターネット上で投資活動を完結できてしまうこの時代に、わざわざ現地に赴く意義はどこにあったのか。プロのファンドマネージャーが身をもって体感した、投資活動の秘訣をお伝えします。

投資での資産形成をお考えの方も、既に投資を始められている方も、ご自身の知識と照らし合わせながらご覧ください。

(Fund Garage編集部)

米国現地の「風」を感じることの大切さ

Google(Alphabet)・NVIDIA・Apple本社訪問

米国サンフランシスコ・ベイ・エリアに本社を置く企業は、自社があるところを「キャンパス」と呼ぶことが多いのだが、「Google」の親会社であるアルファベット(GOOG)のベイ・エリアにある本社は、まさしく「キャンパス」と呼ぶにふさわしい。

下の写真はそのベイ・エリアにある本社ビル群のスナップショットで、

  • 左上:事務棟
  • 右上:通りを隔てたカフェテリア
  • 左下:事務棟の前にある屋外テラス
  • 右下:多くのビルの間を走り回れるように用意されている自転車(夕方の回収シーン)

を映したものだ。

この地は基本的に降雨量は少なく、いつでも写真のようなカラッとした晴天の場合が多い。

そこに低層階のオフィスビルやカフェテリアが並び、社員は会社が用意している自転車で自由に移動することができる。

私の感覚だと、「ここで仕事していたら、煮詰まった時も気分転換はしやすいし、鬱々とせずに、伸び伸びと自由な発想を沸かすことができそうだな」と自然と感じてしまう。この感覚は、今も昔も変わらない。

 

そして2か所目は、今一番元気な会社、エヌビディア(NVDA)の新しい本社だ。

まるで東京ドームのような大きなビルで、1階から下がショッピングモールのそれのような大きな駐車場となっていて、どう広角レンズを使ってみても、全景を撮影することは不可能だ。

まさかここまで大きな敷地にキャンパスを建てるとは、正直以前では想像さえつかなかった。写真は、

  • 左上:本社ビルの正面入り口
  • 右上:エリア内の大きな立て看板
  • 左下:本社受付の手前
  • 右下:本社外観

となっている。

本社ビルに入って受付をしている間、そこを出入りする人々を私は観察していた。

その時に感じる活況さこそ、古くから私が投資判断のひとつの材料として重用するその企業のリアルな情報だが、エヌビディア本社のそれは「凄まじい」のひと言に尽きる。

なにせ、ひっきりなしに大量のビジターが訪ねてくるのだ。そして、かつてのエヌビディアから考えると、かなり大きく「一皮むけた」感触があった。

 

続けて3か所目。

アップルの本社(サンタクララ郡クパチーノ)に隣接した「アップル・ストア」にも足を運んだ。コーヒーを啜りながら、どういった環境であのこだわりのデザインが生まれるのかを想像するのも、一興だ。

下の写真は、新発売となったiPhone15 Proについて販売員に説明を受けている私。

 

このように、やはり可能ならば、日本の投資家にこうしたサンフランシスコ・ベイエリア、すなわちシリコンバレーのリアルな「風」を感じてもらいたいと私は思っている。

それは決して「企業取材」をして欲しいということではなく、シリコンバレーとは何か、ということを「観光」で良いから見て欲しいという意味だ。

「日本株」への投資、米国情報は不要?

今回このように『FG米国視察ツアー』を催行したのだが、そもそも論として、Fund Garageのレポートに米国関連の情報が多いことへ疑問を抱かれる方は多いかもしれない。確かに、「日本株」を専門に投資している投資家であれば、「もっと日本株の情報を」とお考えになるのも分からなくはない。

だが、そもそも株式投資を「米国株」や「日本株」などと分けて考えるべきではないと私は考えている。

日本株と米国株では、特に会計原則が大きく違うわけでもなく(昔は異なったが)、「株式投資」という論点では「投資理論」も全く同じものが当てはまる。その端的な例として、PERやPBRの計算方法が、日米間で全く違いはないことが挙げられる。

その一方で、現在の日本株式市場、その主たる投資家は海外投資家だ(約7割)

それならば、その海外投資家の目線を理解することに意味があるというのが、私の基本的な考え方だ。

さらに、日本企業の多くは、北米を主たるビジネスフィールドとしていたり、米国企業の技術開発動向に呼応したビジネスモデルを掲げたり(=ほとんど全ての日系ハイテク関連企業)している。つまり、それら日本企業を評価するのに、日本国内の状況だけを見ていても深い理解に繋がらないと考えたからだ。

そして実際に米国に足を運ぶようになってから、この判断は間違いなかったことを実感した。

その端的な例が、「アメリカ」と「United States(合衆国)」の違いだ。日本では特に意識せずに「アメリカ」ないし「米国」と呼ぶが、忘れてはならないのは、「アメリカ」は極めて広大な土地に拡がる50州からなる「United States(合衆国)」であるということだ。

頭で理解はできても、片側6車線も7車線もあるフリーウェイや、時速85マイルで巡航しても、遥か彼方に道路上の逃げ水が見えるだけの時間が長く続く様は、どんな大画面スクリーンのテレビで見ても伝わることはないだろう。

また、渡米する度に実感するのだが、ニューヨークやロサンゼルスなどのコーストサイドの大都市と、中西部や南部諸州の都市とでは、東京と大阪、あるいは札幌と福岡の違いというレベルでは、到底比較対象にならないほどの大きな違いがある

たとえば、日本では基本的に神道と仏教を上手に使い分け、あるいはクリスマスも祝う一方で、その一週間後には神社に初詣し、最近ではハロウィンやイースター祭までお祭りにしてしまう。そして、同じ肌の色をした単一民族が全土に拡がる国だ。

一方、米国では肌の色も、宗教も、話す言葉さえも多種多様な人たちが、それぞれの州毎に違う比率で暮らしを営んでいる

その各州毎には、州政府があり州法があるが、さらに連邦政府があり連邦法がある。例えば、銃の所持やマリファナを合法と認めている州もあれば、禁止している州もあるといった具合だ。

州境を跨いだら、合法だったものが違法に変わるようなことは、日本の県境で起こり得ない。

これらは、大した差ではないと思われるかも知れないが、実は非常に大きな違いの源となっている。政治的な思想に関しても、コーストサイドと内陸部ではハッキリと違ってくるのだ。

 

今回の米国滞在中、中東でハマスによるイスラエル攻撃が起き、それが原因で先週末の米国市場では株価が下落した。

事件発生当初は、危機感を感じながらも、週初めは持ち堪えていた市場だが、13日にイスラエルがパレスチナ自治区ガザへの地上侵攻を準備していることが伝わると、S&P500は△0.50%の下落、ナスダックは△1.23%の下落となった。市場がいつも注目している米国金利は全面的に低下したにも関わらずだ。

その下落理由の答えは、恐らく13日にミシガン大学が発表した10月の消費者信頼感指数の低下に求めても見つからないだろう。

やはり米国情勢は、ウォール街発の金融情報だけに頼らない方法で入手してこそ、日本株投資、ひいてはドル円為替の動きの理解にも繋がるものと考えている。

実り多き『米国視察ツアー』から帰国して実感すること

約3週間におよぶ非常に有意義な『全米リサーチ・ツアー』も幕を閉じ、無事に帰国することができた。

このインターネット全盛時代に、なぜそこまでコストと労力を掛けてまで現地に赴く必要があるのかと思われる方も多いだろう。

確かに企業の決算発表も、FRBが開催するFOMCも、また投資銀行が主催する多くのカンファレンスやセミナーの情報も、同時中継のWebキャスティングなどで日本に居ながらにして簡単に手に入る。

それは米国内の運用会社などでも同じ状況で、アナリストやファンドマネージャーがウォール街(の投資銀行)やボストン界隈(の運用会社)から離れてリサーチする機会はめっきり減ったらしい。

だが、私は今回あらためて西海岸から東海岸までを自ら手間暇かけて周ってみて、実際に現地現場を訪れることの価値を再確認し、またむしろ「これからこそ、個人投資家にとって有利な時代」が来たようさえ思えた。

なぜなら、投資というものは大部分を「理詰め」で行うことができるが、「理詰め」だけでは説明できない部分にこそ、「超過収益αの源泉」があると思うからだ。これは、1996年当時から長く現場密着型のリサーチにこだわり、投資運用業界の時代変遷を見てきたからこそ言える。

機関投資家も個人投資家も、手に入れられる企業情報の「理詰め」の部分は、インターネットのお陰で同じものが手に入るようになって、均質化した。

ただそれ以外の要素は、逆に、「アナログ式」に(現地に足を運ぶなど)創意工夫して手に入れるしかなく、それは時間管理やコスト問題とは無関係な「私個人」の行動の方が自由にできるという意味だ。

まとめ

今回は、FG米国視察ツアー第3弾(最終回)として、以下のことを中心に現地の情報をレポートした。

 

  1. シリコンバレーの各社に足を運んだことで、実際に現地に赴き、現地の「風」を肌で感じることの大切さを実感した。
  2. 日本株だけに投資する場合でも、米国の情報は必要である。
  3. なぜなら、①日本株式市場の約7割は海外投資家が支えており、②日本企業の多くは北米を主なビジネスフィールドにしていたり、③米国企業の技術開発動向をベースとしたビジネスを展開していたり するため、日本国内の情報だけでは不十分だからだ。
  4. 一度州境を跨げば、法律も政治思想も全く違う世界が現れる米国の情報は、日本にいるだけでは分からないことがたくさんある。
  5. 米国情勢は、ウォール街発の金融情報だけに頼らない方法で入手してこそ、日本株投資やドル円為替の動きへの理解に繋がる。
  6. 投資行為は、ある程度「理詰め(=インターネットで得られる情報)」でなんとかなるが、そのほか「創意工夫(=アナログ式に得る情報)」しなければならない部分に関しては、機関投資家より自由の効く個人投資家の方が有利だろう。

 

3週間に渡るFG米国視察ツアー・レポートはいかががだっただろうか。

写真もたくさん掲載させていただいたが、やはり写真だけではお伝えできない部分も多い。

このツアーレポートをご覧になって、旅行感覚でも「アメリカに行ってみたいな」と感じる投資家が増えていたら、私の本望である。

編集部後記

こちらは、Fund Garageプレミアム会員専用の「プレミアム・レポート」の再編集版記事です。
公開から半年以上経った記事になりますので、現在の情勢とは異なる部分がございます当時の市場の空気と、普遍的な知見の皆様にお届けできれば幸いです。
また、こちらは無料版記事のため、最新の情報個別企業の解説についてはカットしております。
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