FG Free Report FG米国視察ツアー①シリコンバレーの光 編(10月2日号抜粋)

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投資活動をする上で、常にリアルな情報を手に入れていくことはとても大切です。今回は、FundGarage主宰の大島が2023年9月に行なったシリコンバレー視察旅行で発見した、シリコンバレーの変化について、「光(=プラス)の側面」を中心にお伝えしていきます。

投資での資産形成をお考えの方も、既に投資を始められている方も、ご自身の知識と照らし合わせながらご覧ください。

(Fund Garage編集部)

シリコンバレーで目にした大変化

いざ、FG米国視察ツアーへ! ~シリコンバレーの光と影~

昔から言う話だが、茶筒を真上から見れば〇(丸)に見え、真横から見ると▢(四角)に見えるという教えの通り、同じものを見ても、見る角度によって全く異なって見えることがある。

というのも、今週初めからサンフランシスコ(ベイエリア)に入り、久しぶりの「シリコンバレー」を楽しむことができているが、いろいろなものが「見る人」によって違って見えているのだろうな、と確かに思わされるのである。

一言で表すならば、「シリコンバレーの繁栄、その光と影」といったところだろう。2024年秋に行われる大統領選挙は、やはり大きく国論を二分するのだろうなとさえ、早くも感じられる。

有体な表現を使えば「二極化が進む(進んでいる)」となるのだろうが、この「二極化」の背景は、コロナ禍が導いた人々の生活様式と働き方の変化であることは間違いなさそうだ。

2000年前後、「ドットコム・バブル」に沸いた頃のシリコンバレーを思い返してみると、現在この地域に起きている変化は何かが大きく違っている。

今号より、複数回にわたって「シリコンバレーの光と影」をお伝えするが、その前にひとつ了承いただきたいのは、強気でも、弱気でも、楽観論でも、悲観論でも、何れの立場でもストーリーを作ろうと思えば作れてしまう状況があるということだ。これがまさしく、見方によって同じものが〇にも▢にも見えるという状況である。

あくまでも、明らかに「ドットコム・バブル」当時の状況と今は大きく違うのだ、ということが分かっていただければ幸いだ。

シリコンバレー滞在数日の所感

シリコンバレーに到着して数日で感じた、「ドットコム・バブル」頃(2000年前後)の雰囲気と現在の違いを以下にまとめてみた。

  1. ホームレスが思った以上に多い。

    いわゆる不景気の時に多い”要生活保護”という感じの、路上や公衆トイレの近くで暮らすタイプのホームレスではなく、ノマド・ワーカー(「Nomad(遊牧民)」と「Worker(働く人)」を組み合わせた言葉)の類に見えるホームレスが増えている
    もちろん、サンフランシスコのダウンタウンで、やや危険と言われるエリアに行けば、真昼間から舗道にうつ伏せて熟睡している典型的なホームレスも数多出くわすのは事実だ。
    「ドットコム・バブル」の当時はサンフランシスコ・ベイエリアに限らず、それこそニューヨークなどでも、この手のタイプは減り、だいぶ治安は改善したなと感じさせるものがあったが、今は間違いなく日本人観光客が暢気に街に繰出したら危ないだろう(正直、私でも、NOBU Hillと呼ばれる当地屈指の高級住宅街などを除けば、できれば徒歩で出掛けるのはご遠慮したい)
  2. 空きオフィスより、空き店舗が目立つ。

    コロナ禍で最もダメージを受けたのは個人ではなく、恐らく小売店、それも飲食店だろう。
    かつて、このエリアに企業調査に来ると必ずお昼を食べに行った韓国料理屋があった。シリコンバレーの南側、サンノゼ(San Jose)周辺のコリアン・タウンにあるそのお店は、本格的な韓国料理が食べられ、特に冷麺が美味しかった。だがそこはシャッターが閉まってから久しい感じになっていた。他にもあちらこちらで新陳代謝があったようで、路面店の飲食店跡地が結構目についた。
    また、空き事務所・オフィスビルはあるものの、「ドットコム・バブル」後や「リーマン・ショック」後のように、そこら中に『空室あり』の表示が出ているわけではない。オフィスビル自体がその数を増やしているのだから、古いビルからテナントが抜けているのは当然だ。言い換えれば、思った以上に「リモート・ワーク」に絡んで返還されたオフィスというのは少ないのかもしれない。
  3. 人口密度が高まった。

    かつては空き地だったところが、綺麗な住宅街(=レジデンシャル・エリア)に開発されて新しい街の景観となっていた。
    このエリアに来たら必ず寄るショッピングモールも二つ探索してみたが、当時よりも更にプレミアム・ブランド系に傾斜している感じがある上に、人手も多い。
    さらに驚くことに、どこへ行くのにも呆れるほどに渋滞が酷くなった
  4. フリーウェイの舗装がきれいになった。 

    ドットコムバブル当時は、「さすが車検のない国だな」と思わせるほどに「塗装面が色褪せた」ようなポンコツ車がたくさん走っていたし、路側帯には常に故障してレッカーを待つ車があった。
    また凸凹な舗装が災いするのか、あちらこちらにバーストしたタイヤの欠片が落ちていたものだ。
    だが今となっては、フリーウェイは綺麗に舗装され、確りと車線区分のホワイトラインが描かれている。故障車は現時点でまだ見ていない。
    そんな片側6車線のフリーウェイを、これでもかという割合(本当に多い)で「テスラ」が疾駆していく状況は、「さすがシリコンバレーだな」と妙に感心させられたりもするものだ。

シリコンバレー:「光」の側面

次に、シリコンバレー現地でリアルタイムに触れた「右肩上がりのビジネス・トレンド」をご紹介したい。

これはまさに、シリコンバレー繁栄における「光」の側面と言えるだろう。

①META CONNECTで見たAIの未来

Meta(META)社が主催する2日間のバーチャルイベント「META CONNECT」が、2023年9月27日から28日(ちょうど私がシリコンバレー入りした日の翌日)にかけて開催された。

このイベントに参加する意義は、イベントでの議論や発表から、市場の最新トレンド・将来のニーズ・消費者の期待を把握し、それがMetaのビジネス展開にどのように影響するかを評価することができることだ。

少なくとも投資家目線では、バイアスの掛かった2次情報にやきもきするより、METAのCEO自らが行うプレゼンテーション方が何倍も有意義な情報であることは確かだ。

METAの現在の本社があるところは、かつてはSun Microsystems(SUNW)の本社があった場所で、2011年12月19日に当時のFacebook(META)がこちらに移した。実際、下の写真にある看板の裏には「Sun Microsystems」の名前がついていた。

今回の「META CONNECT」はオンライン・イベントが前提ではあったが、このMenlo Parkの駐車場でリアルなイベントとしても開催された。

イベントの中で面白かったのは、やはりザッカーバーグCEOが示したMETAのAI活用の話だ。

今後恐らくジワジワと話題になってくると思うが、METAが目指しているAIの活用方法のひとつは、SNS上でのそれだという。

METAが展開する、Facebook・Messenger・Whatsup・Instagramのどれをとってもやはり、切っても切れない生成AIとの関係がある。この辺りの利用方法については、ChatGPTや、近時Beta版が利用開始になっているWebブラウザーのChromeのそれと大差無いと考えてしまう人たちもいるとは思う。実際、会場での反応も、若いクリエーターの反応と、年配のメディア記者のそれでは差があった。

個人的に非常に可能性があるだろうと思ったのは、リアルタイム(5秒程度と説明していた)でSNSでよく利用するスタンプが描画されるということだ。任意のイメージをAIに言うと(実際にはテキストを書くだけ)、4種類の絵がイメージ合わせて即描画される。この事例として、上の写真ではMessengerの下に雲の中をサーフィンする女性が描かれている。

②METAとマイクロソフトの提携で拡がる、メタバースの世界

METAとマイクロソフトが、大規模言語モデル(LLM)の利用で協業する。

具体的な事例としては、今回発表された新しいヘッドセットであるQUEST3の利用時に、そのバーチャル空間の中でoffice365が使えるようになるというものだ。

ヘッドセットの中では、巨大スクリーンが見える(QUEST2で体験済み)のだが、その中での利用に適したように、なにやら改良されているようだ(そして当然、これにはAIが絡んでくる)。

またMR(複合リアリティ)かAR(拡張リアリティ)かは、正直判然としなかったが、ゴーグルの景色の中に自分の周りの「実像」を取り込み、そこにAIで作った(描画?)仮想現実を重ねることができるようになる。

これがメタバースに繋がるのだが、例えば、実際の会議室にリアルにいる人とバーチャルな自分が3次元で対面することが可能になる。

現在、METAはリモート・ワークを社員にも推奨しているが、彼らのメタバースへの本気度が伝わってきたといえる。

③完全自動運転車Waymoを実際に見て

今まで、完全自動運転車の実現には、車々間通信や路車間通信の発展・普及が必要という議論が長らく続いていた。

しかし、今回のWaymo(Alphabet傘下)の実物を見る限り、その議論は違う方向性に走り始めたようだ。

例えば、見通しの効かない交差点での衝突防止策を考えるとしよう。

従来ならば、車同士が通信し合うか、或いは信号機などのインフラが交差点情報を提供するか、というような案が出ていた。

しかし今では、人間の目と耳に相当するセンサーを充分に搭載し、さらに音と映像から人間がするのと同じように3点測量の要領を取り入れれば、人間と同じように危機回避もできるだろうというような発想の転換が起きているのだ。

確かに言うまでもなく、夜間走行や、高齢化で衰える人間のセンサーを考えれば、遥かに機械の方が性能が良い。

そして、それらを制御するのが「エッジAI」だ。いちいちクラウド内の大規模AIと通信するのではなく、可能なことはエッジAIに判断させるのが効率的だ。

実際に、下の写真を見てほしい。これは交差点で停止していたWaymoが信号が青に変わってから、左折(日本の右折に相当)をする時である。

車両の頭上にある大きな眼だけでなく、車両前部の左右についた大きな鏡に見えるようなもの、そして車両後部のバンパー部分に埋め込まれた同じくミラーのようなものが、恐らく眼(カメラ)になっているのだろう。更に、前部の目の横にある円筒形のものの中では、何やらが動いているように見えた。赤外線センサーのようなものかも知れない。

実際に動いている映像や、使われている技術についてはWaymo公式サイト(英語)に載っていたのでこちらもご参考になるだろう。サイトによると、カメラだけでなくLidarと呼ばれる光センサーや電波センサーなどを使うことで、360°くまなく情報をキャッチしているようだ。

つまるところ、人間が運転する時は目と耳からの情報を頼りに運転しているのだから、エッジAIの判断の能力が高まれば、同じように車を走らせることはできるという理論だ。

判断能力や反射運動能力が衰えた人間よりも、遥かに疲れ知らず、「ウッカリ」知らずで安全性が高いと言えるかもしれない。

もちろん事故事例がゼロというわけではなく、実験中の技術だ。そして日本にいると、事故が発生したニュースや安全性に懸念を示すニュースばかりが目に入ってくる

しかし、今回の視察ツアー中、あちらこちらで見かけたWaymoの挙動を見て、その進化の成果にはかなり驚かされたというのが正直な感想だ。これは実際に現地に視察に行ったからこそ感じられたものだろう。

まとめ

今回は、FG米国視察ツアー第一弾として、以下のようなシリコンバレーの大変化をご紹介した。

 

  1. 現在、シリコンバレーで起きている変化は、コロナ後の人々の生活様式や働き方が背景にあり、「ドットコムバブル」の頃の様子とはかなり違っている。
  2. 特に、ノマドワーカーが増えたこと・空き店舗が目立つこと・住宅地の開発により人口が増えたこと・フリーウェイの舗装が綺麗になったこと が大きく変化した点として挙げられる。
  3. METAが開催したイベント「META CONNECT」では、最新のAIトレンド(例:SNS上でのAI活用法)や将来のニーズを肌で感じることができた。
  4. METAマイクロソフトがLLM分野で協業することも話題に上り、メタバースの将来性を垣間見ることができた。
  5. ツアー中、いたるところで見られた完全自動運転車Waymoは、人間と同等あるいはそれ以上の安全性を実現できているとさえ思われた。

 

いかがだっただろうか。コロナ後のシリコンバレーのリアルが皆さんにお伝えできていれば幸いだ。

次回も、引き続きFundGarage米国視察ツアーの様子をお届けするので、お見逃しなく。

編集部後記

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ファンドガレージ 大島和隆

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