【無料記事】FG Free Report 中央銀行に対する見誤り (2022年9月26日号抜粋)

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無料版の始めに

こちらは、Fund Garageプレミアム会員専用の「プレミアム・レポート」の再編集版記事です。

公開から半年以上経った記事になりますので、現在の情勢とは異なる部分がございます当時の市場の空気と、普遍的な知見を皆様にお届けできれば幸いです。

最新の情報個別企業の解説、<FG Free Report では割愛>となっている箇所に関心をお持ちになられた方は、是非プレミアム会員にお申し込みください。
前置きが長くなってしまいました。では「プレミアム・レポート 2022年9月26日号」の一部を無料抜粋という形でご覧頂きましょう。

記事のポイント

  • 利上げ幅0.75%は想定の範囲内だった
  • しかし何より驚いたのは、パウエル議長(要するにFOMCメンバーたち)の「タカ派」への豹変ぶりだ。
  • これについては素直に見立てに誤りがあったことは認めざるを得ない。だからこそ、何を間違えたのかをセルフチェックし、それを今後に生かさないとならない
  • 見誤ったのは、「中央銀行はインフレ対策に重きを置くが、同時に雇用を守り、景気を守る筈だ」という思い込みだ。
  • だが、従来から着目してきた「右肩上がりのビジネス・トレンド」はどれひとつ終わっていない。

———–<以下、プレミアム・レポートより抜粋>———–

何を読み間違えたかを検証する

利上げ幅0.75%は想定通りだったが…

大袈裟な言い方ではなく、正に世界中の金融市場関係者が固唾を飲んで見守った米国連邦準備制度理事会が9月20日と21日に行ったFOMCでは、直前の市場予想通り0.75%の大幅な利上げを6月、7月に続いて3回連続で発表した。

何より驚いたのは、パウエル議長(要するにFOMCメンバーたち)の「タカ派」への豹変ぶりだ。下記に示すは同時に公開された所謂「ドットチャート」と呼ばれるもので、FOMCメンバーがこの先の政策金利の推移をどの程度が適正と考えているかを示したチャートである。ここでは22年末のFFレートの中央値が4.25%に引き上げられている。今回の利上げによってFFレートは3%~3.25%が誘導レンジとなったが、このドットチャートによれば、年内にあと2回、概ね1.00%~1.25%の利上げが妥当だと考えられていることが示されている。まだFRBはインフレ対策として利上げを積極的に行う予定であることを市場に伝えた。

素直に見立てに誤りがあったことは認めざるを得ない。だからこそ、何を間違えたのかをセルフチェックし、それを今後に生かさないとならない

利上げ発表当日、リアルタイムでNY市場の動向をパウエル議長のコメントを聞きながら、続く質疑応答のシーンも見ながら観察していたが、市場の反応もここまでタカ派に変貌するとは思っていなかったようだ。事実、質疑応答の前半部分では前日比でプラスになる部分もあった。だが質疑応答が進むにつれて、市場は徐々に弱含むようになり、質疑応答が終わって取引終了までの約30分間で一気に急落した。

どこを読み間違えたのか(日本時間23日付)

日本市場は祝日で休場の中だが、NY市場の23日週末取引を見る前に振り返ってみることにした。この今のリアルな感覚を記録し、そしてお伝えすることが、きっとプレミアム会員の皆様にとっては大いに今後の参考になるだろうと思ったからだ。当然、今晩のNY市場の結果を見た上で、更に考えは纏めるが、今日の記録は修正せずにお届けするつもりだ。

若干はリバウンドするのではないかと思って期待したNY市場22日(木曜日)の取引は、NYダウが30076.68ドル△107.10、S&P500が3757.99△31.94、ナスダックが11066.80△153.39と結局3指数揃って下落した。下落率で言うと、左から△0.35%、△0.84%そして△1.37%とドンドンと悪くなる。「金利上昇は高PER銘柄によりネガティブに働く」という通説通りになっているとも言える。

下のチャートは一番下落率が大きかったナスダックの22日の日中推移を示している。ご覧頂ける通り、朝9時半の取引開始後からダラダラと一気に値を崩し、午後3時過ぎから多少戻しかけるが、概ね3時半を過ぎた辺りから再度売り直されて取引を終了している。典型的な弱気相場の一日の動きと言えなくもない。

一般的に、FOMCなどで悪材料が開示されたとして、条件反射的に反応してポジションを動かせる投資家は少ない。それはFOMCが提供した材料を一次材料として独自に判断出来る投資家よりも、アナリストやエコノミスト、或いはメディアの解説などを受けて状況を咀嚼する投資家の方が圧倒的に多いからだ。だからこそ、21日の利上げを知って、一晩掛けて咀嚼した22日は多少反転するのではないかと期待したのだが、その現象は起こらなかった。

FRBはリセッションを容認してまでもインフレと戦うと言った

21日のパウエル議長の質疑応答の中で市場がネガティブ・リアクションに変わったきっかけは

「住宅投資が落ち込んだり痛みは伴うだろうが、失業率がある程度上昇し、雇用環境にタイト感が消えるまでは利上げを継続する」

というような主旨でリセッションを容認するコメントをしたことだった。一瞬、私も耳を疑ったが、その後の市場の動きを見て間違いではないことを確認した。最大の判断ミスの要因もここにあると思う。FRBが景気を蔑ろにするとは全くの想定外だったから。

通常、中央銀行はインフレと雇用の番人であるが、それは同時に景気は過熱させないが落ち込ませたりもしないものという暗黙の了解が少なくとも市場にはあった(と思う)。今回のパンデミック後の株価高騰を2000年前後のITバブルになぞらえて「株価は崩落する」という人もいるが、ITバブルと今回では全く状況も背景理由も違うと私は考えているので、グリーンスパン元FRB議長が当時「根拠なき熱狂」とシリコンバレーのIPOバブルを捉えて「過熱」を抑えようとしたのとは違う筈だったからだ。

恐らく米国債券市場も同様な見立てを持っていた筈だ。だからこそ、政策金利の動向に敬意を表する2年債までの金利の上昇とは異なり、5年債以上の長期債金利は上昇を拒んでいた。それこそ極端な利上げは景気をオーバーキルに導くというセオリーを守ってきたと言える。ここでイールドカーブを確認しておこう。ここで注目なのは今週のイールドカーブの動きだ。先週末16日が茶色、今週は順番に黄色、緑、赤(利上げ発表)そして青の22日(利上げ翌日)だ。

見誤ったのは、「中央銀行はインフレ対策に重きを置くが、同時に雇用を守り、景気を守る筈だ」という思い込みだ。その考え方の正当性をイールドカーブに求め続けたが、言うなれば債券市場と共倒れしてしまった。大きな教訓となった。

時間軸を長くとって金利水準を確認する

2018年の前回の利上げ局面との金利推移を比較するチャートを見てみると下記の通りとなる。状況は明らかに変わったと見ざるを得ない。やはりコロナ禍とウクライナ情勢に伴う混乱は、少なくとも「前例の無き事態」として受け止めざるを得ないのかも知れない。パウエル議長のコメントにもその件があり、だからこそ、従来型の金融政策の考え方を変え、第二次石油ショック当時の米国の超インフレ状態、それと戦ったボルカー議長の手腕を手本とし始めたと言われるのかも知れない。

だとすると、もうひとつの超長期の金利推移チャート、当然以前にもお見せしたことがあるものを確認しておくべきと思う。それがこれだ。

3%という金利水準をブレークしてきた以上、もしかすると類似のパターンは第二次湾岸戦争が終結してリーマン・ショックに向かう当時の状況を意識し始めるかも知れない。この先の展開をマクロ景気を中心に考えるとすると、あの頃のことを検討してみる必要があるかも知れない。だが2003年6月に10年債金利が3.33%をつけたあと、パリバショックが起きる2007年7月まで金利は5.00%まで上昇する。この間、S&P500は988から1520台まで上昇していることは簡単に確認出来る。時代背景など、もう少し調べてみる価値はありそうだ。

9月23日の米国市場取引終了後

<FG Free Report では割愛>

ハイテク株に方向感は殆ど感じられない

<FG Free Report では割愛>

「敵は本能寺にあり」、ならぬ欧州にあり

ズーっと気になってはいたのだが、どうも欧州の動向に市場の目線が移りつつあるようにみえることだ。ロシアによるウクライナ侵攻で最も悪影響を受けるのは欧州だ。西側諸国と中国の関係が悪化すると、中途半端な立ち位置になるのはイタリアでもある。

しかし、何よりダメージを受けるのは、欧州最大の経済力を誇るドイツだ。メルケル政権は徹底的に中国経済への依存を高め、技術や特許を開放し、そしてエネルギーは環境政策からまずは原子力発電を離脱し、ロシアからの天然ガスによる火力発電に切り替えていた。またこの国は風力発電への依存度を高めていたが、ここ数年の偏西風の蛇行が「ヨーロッパの風」を止めることとなり、より火力発電のウェイトを高めていった。

だが今年の異常気象は降雨量を激減させ、内陸への物流の基本であるライン川の水位が低下、火力発電所向けの天然ガスさえ運べない状況と、かなり厳しい展開が続いている。

そんな中、欧州の多くの電力会社が天然ガス価格の高騰により経営が悪化していると報じられている。実際に国が支援に乗り出したり、国営化したりしている話もある。またECBが大幅な利上げに踏み切ったことで、これが当然景気を悪化させる方へ作用もしている。こうしたことを反映してか、つい先日1ドル=1ユーロでパリティなどと言われていたものが、0.96944と一気にユーロ安になっている。対円でも週末の終値は138.93円なので、これは日銀の為替介入の影響というより、ユーロが崩れたという印象だ。

実はあまり報じられないが、英国ポンドも急激に売られ始めた。これも英国景気の急激なスローダウンを反映していると言われている。10日も遡ると1GBPは約166円もしたが、週末は1GBPが155.62円だ。ECBもイングランド銀行も利上げしているので、金融緩和を先週維持することを決めた日本と比較すれば、本来はどちらも円安に動いて良い筈。だがそうならないということは、純粋に景気悪化、国力の低下ということを市場は読んでいるとしか思えない。

右肩上がりのビジネス・トレンド

2000年前後のITバブル当時とは違うと断言出来る理由

<FG Free Report では割愛>

VWのCEO更迭とポルシェCEOの就任の意味

既に最新情報ではないのでご承知の方も多いと思われるが、去る2022年7月23日、フォルクスワーゲン グループはCEOのヘルベルト・ディース氏が同年9月1日をもって退任し、後任としてポルシェCEOのオリバー・ブルーメ氏が就くことを発表した。ディース氏は2025年まで任期が残っていたが、フォルクスワーゲン特有の“お家騒動”がまた起きた格好となっている。

<FG Free Report では中略>

欧州経済にとって、自動車産業はやはり大きな収入源であり、そこに関わる労働人口も多い。ここがスローダウンを余儀なくされると、ただでさえウクライナ情勢で疲弊している欧州経済にとって致命的な痛手となることは火を見るよりも明らかだ。

まとめ

一難去ってまた一難

正直に言えば、9月のFOMC、すなわち先週さえ何とか通過出来れば、もう少し年末に向かって明るい絵が描けるだろうと期待していた。何度も繰り返しになるが、従来から着目してきた「右肩上がりのビジネス・トレンド」はどれひとつ終わっていないからだ。逆に、それらのエンジニアや業界関係者と話してみると、金融市場の昨今の俯いた空気が嘘のように感じられる。

一つ明らかなことは、これら「右肩上がりのビジネストレンド」がある限り、将来先々はきっと明るいということ。また間違いなく、人々のライフスタイルも変わり始めている。そのひとつはDX(デジタルトランスフォーメーション)を背景とした「働き方改革」だ。

ただマイクロソフトが実施した調査にみられるように、管理職側と現場側に相当な意識の開きが出てきているのも事実だ。私が思うに、現場の仕事量とその成果による正当な労働評価は、管理職自体がITに慣れていないと出来ない。簡単に言えば、アウトプットを見て、その裏側にどのぐらいの作業を伴っているかが分からないのだ。

今はマクロ環境に悪材料も沢山あるが、一方で技術的な大変革も起きようとしているタイミングだ。前者に着目して右往左往し、精神までも擦り減らしながら得るものが少ない投資手法に拘るか、技術的な大変革を追い掛けながら、どっしり構えて「買い下がる」イメージの投資手法を取り入れるか、投資のタイムホライズンにもよるが、将来得られる結果は「投資経験値」も含めて大きな違いとなってくるように思う。

決して、今が余裕で構えられる時ではないことは私自身、重々承知している。ただ過去35年以上経験に照らし、こんな時は何度もあったし、寧ろこんな時ばかりの中で、時々「良い時」が多少あるというのが投資の世界の実態だと思っている。

My favorite Companies List(株主となって所有したい企業のリスト)

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———–<以上、抜粋終了>———–

(編集:Fund Garage編集部)

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