【無料記事】FG Free Report 買って良い下げと売るべき下げの違い(2021年10月4日号抜粋)

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こちらは、Fund Garageのプレミアム会員専用の「プレミアム・レポート」の再掲版の記事です。公開から半年以上経った記事になりますが、当時の市場の空気と、普遍的な知見を皆様にお届けできれば幸いです。より最新の情報や個別企業の解説に関心をお持ちになられた方は、是非プレミアム会員にお申し込みください。

前置きが長くなってしまいました。ではこの後、「プレミアム・レポート 2021年10月4日号」の一部を無料抜粋という形でご覧頂きましょう。

———–<以下、プレミアム・レポートより抜粋>———–

投資主体が海外投資家であることを意識する

買って良い下げの中でも、底値買いは正に神のなせる業

一週間で日本市場は約△5%、米国市場も約△3%の下げとなったが、

短期間で見れば市場に上げ下げがあるのは当然のこと

寧ろある程度ダイナミックに動く時が無ければ市場は死んでしまう。だからこの程度の「シェイク」は市場がエネルギーを維持するためにも必要で、「ヘルシーな下げ」と言ったりもする。

ただ当然のことながら、こういう市場展開の時はファンドマネージャーだろうが、個人投資家だろうが、或いは海外投資家だろうが、国内投資家だろうが、間違いなく誰もがハラハラドキドキするものだ。だからこそ、最も重要なことは

「買うべき下げと、売るべき下げ」を見極める目

を徐々にでも作って養っていくことだろう。勿論今回は買っても良い下げだと見ている。

ただこう言うと誤解されることも多い。すなわち下げ過程の中で買うということは、買った後でもまだそこから更に下がることも多々あるということ。ピンポイントで安値を当てて底値買い、そして見事に反転出直りを享受して高値で売れるなどと言うことは神様でも難しい。もし普通の人でそんなことが出来たとしたら、それは単なるまぐれ当たりだと思って間違いない

先週(9月最終週)の下落理由を考える

今の日本株式市場を動かしているのは海外投資家だということは何回かお伝えした。

売買ボリュームの占有率から言えば圧倒的に海外投資家が多いのは先週も変わりない筈だが、市場が下落するように導いたのは今回はどうやら「国内投資家」のようだ。9月第4週(9月21日~9月24日)は残念ながら予想に反して海外投資家も売り越しに転じていたが、より株安を加速させたのは「国内投資家」の売り越しだからだ。「買っても良い下げ」と考えられる根拠の一つはここにある。

日本取引所グループが毎週発表している「投資部門別売買状況」を今週も紐解いてみると、「日本国内での情報バイアス」による結果だとわかる。

「国内投資家」をよりブレークダウンしたのが、上掲下段の表だ。投資信託、事業法人、その他法人等ときて最後が金融機関となるが、投資信託と金融機関が売り越し金額の大半であることを確認出来る。実はこの原表には金融機関の内訳も付いているのだが、売り越しの多くが信託銀行であり、生保・損保や都銀・地銀等ではない。様々な要因が推測されるが、ポイントは、意思決定しているのは国内の運用会社だということ。

海外投資家の動静を垣間見る債券市場

前回、米国債券市場の動きを見ることが重要だとお伝えしたが、今週もその状況には変わりなく、恐らく日本から見ている景色と現地で見ている景色は相当違うのだろうと推察出来る。下記に示すは米国債のイールドカーブで、赤い線が先週末10月1日のものである。

ひと目このチャートを見れば、以下2種類のパターンがあることが見て取れる。

  1. 水色の線と黄色の線で示した今年2021年の楽観論ピークの頃のもの、具体的には3月19日と5月13日のグループ。
  2. 先週末を含む過去3週間分の週末値のイールドカーブ。

誰の目にも明らかなのは、後者のグループの10年債金利と30年債金利、所謂長期金利と超長期金利と言われるものは3月や5月の頃の楽観論には遠く及んでいないということ。

確かに9月17日(黒)より9月24日(水色)、そして10月1日と直近になればなるほど、徐々にではあるが5年債、10年債そして30年債金利が上昇している。だがご覧頂ける通り、ごく僅かでしかない。米国(世界的な市場)の債券市場は中国恒大集団の話やインフレやテーパリングの話題など諸々聞こえてくる中で、慌てず騒がず冷静に過ごしているということだ。

よく市場コメントで

「金利上昇によりグロース銘柄に割高感が生じ…」

というコメントや解説を耳にする。その人達がどんなモデルでその変化を実際に算出してコメントしているかは知らないが、少なくともPERの倍数評価に影響を及ぼすほどの金利上昇ではない筈と推察出来る。実数値で言えば、10年債金利でさえ1.36%が1.52%と0.16%上昇したに過ぎないのだから。クウォンツ運用(定量分析型運用)を実際にしたことが無い人のコメントなんだろうといつも思う。更に言えば、尤もらしく適当なことを言う人が多いなといつも思ってしまう。

実際にクウォンツ運用をしてきた経験などを踏まえて言えば、このレベルの金利水準の変化で「グロース株⇔バリュー株」のスタイル変更やアセットアロケーションの組み換えを行っていたら、売買コストの方でドンドン運用成績が悪化してしまうだけなのは明らかだ。

予想が外れた時は、その思考方法を見直すのが王道

昔からよく言われる話だが、投資が上手な人は、

自分の予想や見立てが外れた時には、

  1. まず自分自身の思考方法を見つめなおして、
  2. どこでどの判断が間違えだったのかを検証し、
  3. それを直すことが出来る人

だという。つまり自己否定が出来るということだ。一方でいつまで経っても投資が上手にならない人は、自分自身の思考方法については疑問すら抱こうとはしない。だから色々と外部のせいにしてしまう

<FG Free Reportでは中略>

つまり昨今のメディアの論点の掘り下げ方法、またその解釈方法に慣らされてしまうと、本来どうでもいい話を過大に評価してしまい、それもネガティブな方向性で考え悲観してしまうというスパイラルに陥ってしまうように思われる。良いか悪いかの議論は別として、投資の世界こそ資本主義の塊であり、決して社会主義的な発想のものでは無い。勝てばリターンが得られ、負ければ痛い目に合う、その為にリスクを負っているのだから。

こうした展開は約1年半に及ぶコロナ禍の中で、より増幅、或いは熟成された感じがする。これは世界的な傾向でもあると統計上も示されているが、体感的には最近の日本はかなり酷いと思われる。だからこそ

「海外投資家」と同じ思考パターンで日本を見ないと日本株の投資でも成功することは難しい

と思っている。

今週の悩みの種

タイもマレーシアも最悪期は脱したとは思える

<FG Free Reportでは割愛>

サプライチェーンの目詰まりダメージの織り込み具合

タイやマレーシアのパンデミックでそんなに日本経済も困るのかという話だが、間違いなく「困る」そんな最先端のものなど作っていないだろうと思われるかも知れないが、それは大きな誤解である。

トヨタもホンダも日産も現地で完成車を製造しており、完成車メーカーがあれば、必ずTier1以下のデンソーなどの自動車部品メーカーもある。またインテルはマレーシアに大きな工場を持っており、「Malaysia」という印刷をパッケージの表面で見掛けることもある筈だ。

Jetroの9月27日付の資料によると「指定必須業種以外の操業禁止。レストラン、水道や電力などのインフラ、港、物流、通信、金融、 E コマース、燃料、隔離用ホテル、緊急インフラ工事などが指定。製造業は、食料品、医療品、電気電子、機械など 13 業種で、出勤率は 60 %まで。自動車や鉄鋼など 5 業種は、出勤率 10 %のアイドル操業のみ可」と記載されている。

問題はこれらの影響をどの程度まで市場が認識しているかということ。今月の下旬から始まる7‐9月期決算、或いは2021年度上期の決算発表で示されるガイダンスには少なくともサプライチェーンへの影響が含まれて発表されるだろう。かなり認識してるようであればポジティブ・サプライズなども有り得るが、全く気にしていなかったとすれば、ガイダンス発表で失望感を買ってしまうかも知れない。また海上輸送費の上昇や、そもそもコンテナやコンテナ船の不足・遅延による玉突きがどこまで市場コンセンサスとなっているかは危惧されるところだ。

7-9月期決算発表で、突然「○○・ショック」などと大騒ぎになるリスクは現状残念ながら排除出来ない。ただそんな時が来たとしても、大きな流れは何も変わらない。AIも、IoTやエッジAIも、クルマのCASEも、まだまだ第一コーナーを回った辺りでしかないのだから。

パウエル議長も頭を抱えるサプライチェーン起因のインフレ

<FG Free Reportでは割愛>

イールドカーブが語る市場の景気見通し

先週株式市場が動いた割に、実は殆ど上記理由を受けても米国債券市場は動いていない。冒頭のチャートは10年、30年という長期金利はそこまでの景気回復を見越していないことの証明とお伝えしたが、実はこの一週間の変化はチャートにすると殆ど判別がつかないレベルに収れんしている。一応縦軸は少し拡大したが、それでも5日分のカーブは殆どすべて重なって見える。

ただ5年金利のところが小さなコブのようになっているのは、結局景気回復から伸長を読んでいるのではなく、先にインフレの部分を見ているように見える。つまり逆に言えば、サプライチェーンの目詰まりによる物価上昇を織り込んでいるということではあるので、そのロジックを当て嵌めることが出来れば、市場は既にそのダメージ、平たく言えば「ガイダンスのある程度の下方修正」などを見越し始めているとも言える。ただ最近の日本の論調の作り込み方だと、必要以上に悲観論を仕立て上げられる可能性もある。

まとめ

投資部門別売買状況で確認したように、このところ

弱気に傾いているのは日本株については海外投資家よりも国内投資家の方だ。

これはひとつの安心材料だ。勿論悲観的に考え続ける投資家も引き続きいるだろうが、逆に言えば、まだ売り物が残されていると言うことだ。

言い換えると、

株のポジション、アロケーションを削った資金をどこに回すつもりだろうか

ということだ。国際分散投資の観点でアセットアロケーションを考えた時、先進国株式以外にウェイトを積み増して投資すべきところが殆どない。金利は上昇する局面である以上、「債券は安全資産」というこの約30年間続いた神話は崩れる方向にあるからだ。因みに、年金基金の運用を受託する投資顧問会社の平均的な信託報酬は0.30%と言われている。バランス型投資信託ならばもっと高い。それを加味して超過収益を得ることを考えないとならない。

そしてもうひとつ、日経平均採用銘柄の来期予想ベースのPERはまだ低い水準に放置されている。それに比べると東証一部の予想PERは高い。具体的に言えば、日経平均の来期予想PERが13.92倍なのに対し、東証一部全銘柄のそれは15.67倍だ。もし、日経平均の来期予想PERが東証一部全銘柄の水準まで買われたとすると、日経平均は何と32388円になってもおかしくない。ただその時のNT倍率は16.3倍にまで歪むので現実的ではないが、それでもある程度の上昇余地が無いわけでない。

下記に日経平均株価と予想PERのチャートを掲示するが、ガイダンスの下方修正に伴って著しいPERの上昇が無い限り、割高感はまだまだ全くない

 

———–<以上、抜粋終了>———–

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(編集:Fund Garage編集部)

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