【無料記事】FG Free Report 悲観バイアスが蔓延している!?(2021年9月27日号)

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無料版の始めに

こちらは、Fund Garageのプレミアム会員専用の「プレミアム・レポート」の再掲版の記事です。公開から半年以上経った記事になりますが、当時の市場の空気と、普遍的な知見を皆様にお届けできれば幸いです。より最新の情報や個別企業の解説に関心をお持ちになられた方は、是非プレミアム会員にお申し込みください。
前置きが長くなってしまいました。ではこの後、「プレミアム・レポート 2021年9月27日号」の一部を無料抜粋という形でご覧頂きましょう。
———–<以下、プレミアム・レポートより抜粋>———–

悲観バイアスに慣れ過ぎたら失敗する

中国版リーマン・ショックなどと馬鹿なことを

一週間を終わってみれば日経平均株価は3万円台を維持していたが、恐らく22日の終値界隈の29,600円台の頃に堪え切れずにポジションを投げた投資家は多いだろう。実際、先週は市場関係者からの問い合わせがとても多かった。

「中国関係(つまり中国恒大集団のこと)、どうなりますかね?どうみてますか?」

と彼/彼女らは異口同音に尋ねてきた。
中にはストレートに。

「リーマン・ショックみたいになりますかね?」

とまで悲観論に振っている御仁もいた。
だから私が、

「大丈夫だと思うよ。だってリーマン・ショックの時のように未知の恐怖は無いからね。」

と答えると、納得した答えは返すものの、腹落ちしている風では無かった。声のトーンを聞けばよく分かる。

一週間の騰落率で見ると、米国株式市場は3指数揃ってプラスで終わり、日本株式市場はマイナスで終わった。ただ後掲するチャートを見て貰えば分かるように、日経平均株価が22日の水曜日につけた安値からの戻りという意味では、675円(+2.28%)も24日の1日の取引で値を戻したことになる。如何に市場がパニック的に買い戻したのかよく分かる。

怯えている周りが不思議に見えるほど冷静だったわけ

私は別に「ドタ勘」で強気を言ったわけではない。いくつか明確な理由があるのだが、一番大きいのは

「市場は既知のものには怯えず、未知のものに怯える」

習性があるからだ。その意味では「中国恒大集団」のデフォルトリスクについてはかなり前から噂も出回っており、端的には香港市場で取引されている同社の株価が既に半年以上もこの事を警告していた。日本が新型コロナウイルスの新規感染者数で一喜一憂していた頃から、海外のメディアでは度々話題になっていたからだ。株価が1年程度で1/10位まで下落すれば普通は「破綻」を想定する。

下記のチャートが中国恒大集団の香港市場での過去一年間の値動きだ。単位は香港ドルでUSドルよりも遥かに安いので、10ドル割れしている水準はかなりクリティカルだと言える。

だが日経新聞のデータベースで調べてみると、同社が「中国恒大集団」という単語を含む記事をアップしたのは、同社の株価が香港ドルで10ドル(日本円換算で約142円前後)を割り込んだ7月でさえたったの6回だった。

なので、

日本の投資家にとっては不意を突かれたようなニュース

だったのかも知れない。だから

中国版リーマン・ショック

のような言い方をする人がいたのかも知れない。だがこれだけ長い期間あれば、金融機関や当然中央銀行などは準備をする時間がある。海外投資家との違いは情報の取り方の違いだ。そして「リーマン・ショック」との基本的な違いは

金融機関同士でどれだけのデリバティブ取引が絡み合っていて、どれだけの連鎖反応があるのか、デリバティブの想定元本さえ見定められない

というような未知の恐怖におびえるような状態では無かったことだ。負債総額33兆円は大きいが、予め分かっていれば、各国中央銀行まで巻き込んで手の打ちようが無い金額ではない。

迷ったら米国債券市場の動きを観察することが大切

株式市場の参加者は世界的に見ても当然多くの個人投資家が含まれている。玄人のような投資家も居れば、ゲーム感覚で売買をしている人も居る。今年初めに話題を浚った「ロビンフッド」というプラットフォームで株式売買をするような投資家の多くは、マクロ環境や企業収益、或いは政治動向など全く考えずに値動きだけを追い掛けているぐらいだ。

その反対側にあるのが、殆ど機関投資家で占有されている債券市場だ。だからこそ、債券市場の動き、それも世界最大の市場規模を誇る米国債券市場の動きを追い掛けることには価値がある

まずは短期的な動きを確認してみよう。それにはイールドカーブの形状変化を見るのが役に立つ。

Q.例えば、戦争など地政学的なリスクが高まって株式市場がリスクオフ状態になるとどうなるだろうか。

A.マネーは安全資産を求めて動くので、米国ドルが買われ、米国債券が買われる。すなわち、ドル高、債券高(金利低下)の流れが起きる。

下記に示すのは、米国債のイールドカーブだが、黒い線が前週末9月17日、赤い線が先週末9月24日だ。見て頂ける通り、債券が買われて金利が低下するどころか、実は金利は上昇している。つまりリーマン・ショックのような深刻な事態になることを想定する債券のファンドマネージャーよりも、FOMCでのテーパリング再開や利上げの可能性などに目を向ける人の方が多かったということだ。すなわち中国恒大集団のことは中国の不動産会社の問題と捉えているということ。

Fund Garageで殊更取り上げもしなかったのは、中国恒大集団の件でこうした債券市場の動きに影響を及ぼすことが無かったからでもある。頻繁にイールドカーブの件は話題にしているが、その変化に影響を及ぼす材料となったことは無かったので、事実認識はしていても脇に置いておいたという意味だ。

そしてもうひとつ大事なのは、「長期金利が上昇した」とか「債券が売られた」と市場コメントや解説が語った時などに、それはどの程度の水準のことを言っているのかということだ。変動幅、変動率、絶対水準、そうしたことをきちんと把握しないと役に立たない。定性的(発信者の意図的)な煽り言葉に乗らずに、冷静に情報を受け止めるためには、数値で定量的に捉えることが大切だ。

上のチャートでは黄色の線で5月13日、水色の線で3月19日のイールドカーブも示してある。一目瞭然、10年債金利と30年債金利は黄色の線と水色の線よりも低いところにある。通常、期間の長い方の金利は市場の景気見通しやインフレ予測に沿って水準を決めてくるが、このイールドカーブの意味するところは5月や3月の頃よりも先々の見通しは楽観していないということでもある。

何故、この両日を捉えてチャートに加えたかと言えば、今年の楽観的な水準はどの辺りまで行っていたのかを共有するためだ。それを知るためにはこちらのチャートの方が便利だろう。これはイールドカーブのチャートを作るのに使っている各年限の金利を時系列に並べたものだ。3月19日と5月13日は今年に入っての30年債の高値をつけたところというのがお判りいただけるだろうか。

確かに金利はFOMCでのテーパリングの話を受けて上昇しているが、今年の高値にはまだまだ及ばない。別な言い方をすれば、テーパリングの開始、そしてその後の利上げを睨んで「徐々に」上昇するトレンドの中にあるだけということだ。

FRBは11月からのテーパリングはまだ決定してないというのが正しい理解

<FG Free Report では割愛>

多少心配事がある方が株価は上昇する

不安になる材料、或いは心配材料、それらをベースに悲観的な見通しを持つ人がある程度いないと株価は上昇しない。全員が安心して、何の不安もなく、満場一致で景気好調、企業収益増加、インフレは抑制などとバラ色のシナリオの場合、既に全員が買ってしまっているので、誰も上値を買ってくれない。だかこそ、株価が上昇するには適度に心配事があった方が良い

更に言えば、代替投資先が無いことが一番だ。金利が現在のように世界的なゼロ金利状態であるということは、リスク資産への投資が怖くなってやめてしまった場合、投資収益を挙げる先がなく、それはすなわちインフレ率分は資産が自動的に目減りすることを意味している。すなわち、今は運用先に株式を選定しないリスク回避のコストが非常に高いということだ。

下記のチャートはS&P500と恐怖指数(VIX指数)の相関チャートだが、紺色の線で示したS&P500のコンスタントな右肩上がりの状態を見れば、誰もが高所恐怖症になり、一旦は利益を確定させたいと考えることは当然だろう。そしてテーパリングの話題や中国恒大集団の話をきっかけにして多少の利益確定売りが出たのは事実だろう。だがその先に持っていく場所が無い。当然とれとは逆の人達も居る。「押したところで買おう」と構えている人達だ。だからこそ、下がりきらない。結果として「ショートスクイーズ(売り方の買い戻し)」のように直ぐに株価は戻ってしまっている。

その一つのバロメーターがオレンジ色の線で示した恐怖指数だ。週末の水準は低下して17.75だが、先週初めには25.71にスイっと跳ね上げている。そもそものずっとパンデミック前の水準よりも高いところにあるが、それだけ感応度が高いということは心配で悲観的な人たちも居るということだ。

そしてこれを是とするならば、日本株の未来もまだ明るいだろう。同じコンセプトの日本株のチャートは下記の通りだが、米国株の動きをなぞらえた赤線の落書きは意味の無い線とは言えない。ただこちらは「ドタ勘」ではある。

注目の右肩上がりのビジネス・トレンド

実は鳴かず飛ばずの半導体銘柄の株価

「半導体不足」とか、「半導体需給ひっ迫」などと騒がれているのでさぞや半導体株のパフォーマンスは良好だろうと考えがちだが、半導体そのものを作っている会社でパンデミック前の水準からNASDAQ全体を大きくアウトパフォームして飛び抜けている銘柄はほとんどない。

一方で下に示すのが所謂「GAFA+M」の値動きとナスダック総合指数との対比チャート。足元でFacebook(FB)が下落しているが、全銘柄がナスダック総合指数の騰落率を上回っているのがよく分かる。時価総額加重平均の指数でもあり、これら5銘柄が如何にナスダック総合指数を牽引しているのかがよく分かるというものだ。

この状態を見てバブルと考えるか否かは別の議論として(私はそう考えていないが、その議論はあらためて)、指数を極端にアウトパフォームしている銘柄群があるのならば、アンダーパフォームしている銘柄群の中からポテンシャルのある銘柄を探すことは投資の醍醐味と言える。

半導体株の値動きが示す業界の構造転換

まず半導体と言っても色々な種類があるのは確かで、ザックリと「半導体銘柄」と括るのは乱暴だ。チップ自体を手掛けているのか(その中でも設計レベル or 製造レベル or その両方)、もしくは製造装置を言っているのか、或いは素材・材料を言っているのか…と挙げ出したらキリがない。あまりに幅広いのが現実だ。

新聞の市場欄辺りのコメントでここまできちんと意識して書かれているもの、或いはコメントしているものを見たことは殆どないのは悲しいことだ。だからパフォーマンスに優劣が出るのだ。

一方、半導体自体を種類分けして考えることも極めて重要だ。特に今回のような動向分析を考えるならば取り分け重要だろう。今回はこのアプローチで半導体の値動きが示す業界の構造転換とその方向性を考えてみたい。その対象としては、このチャートに表示してあるインテル(INTC)、アドバンスド・マイクロ・デバイス(AMD)、ザイリンクス(XLNX)、ウェスタン・デジタル、マイクロンテクノロジー(WDC)、エヌビディア(NVDA)を検討したい。また以降はティッカーシンボルで銘柄を表記することをお許し頂きたい。

最初の区分けは論理回路と記憶回路だ。所謂「ロジックとメモリー」呼ばれる分類の仕方だが、前者に含まれるのがINTC、AMD、NVDAそしてXLNX、後者がWDCとMUだ。前者の中でもINTCとAMDはサーバーやパソコンのCPU(中央演算装置)と呼ばれる所謂コンピューターの頭脳部分を手掛けており、AMDとNVDAは画像処理に特化したGPU(Graphics Processing Unit)を作っている。

お気付きの通り、ただ論理回路と呼ばれる半導体だけでも、これだけ用途が違えば、「半導体が足りない」と言われてもどの用途か特定出来なければ、かなりいい加減な分析で動いていることになる。

記憶回路のWDCとMUも、メモリー半導体という意味では一緒だが、そこには揮発性メモリ(DRAM)と不揮発性メモリ(フラッシュメモリ)という違う用途のものを作っていることを確認しておきたい。前者は機器が電源を切った時には記憶内容が自動的に消えてなくなる(揮発)ものでありDRAMと呼ばれ、主としてパソコンなどの一時的な記憶装置として使われる。一方、後者は電源を切っても記憶内容は保持されるので、ハードディスク(HDD)のような主記憶装置として近年急速に需要を伸ばして留まるところを知らない。

インテル神話は根強く、AMDは新興企業と思われている

<FG Free Reportでは割愛>

x86アーキテクチャーからARMアーキテクチャーへの流れ

<FG Free Reportでは割愛>

まとめ

新型コロナウイルスの感染拡大に伴うパンデミック、ステイホーム、リモート・ワークなどは多くの人を「鬱」状態に引き入れているのかも知れないということだ。本来「株屋の楽観論」と言われた世界が、非常に悲観的な発想にバイアスが掛かり易くなっているのがその根拠だ。

先週(9月20日)、「【特別レポート】留学生が見たリアルな米国の新型コロナ事情」を公開した理由のひとつはそこにある。新規感染者数も、重症数も、当然死亡者数もゼロの数がひとつふたつ欧米とは違うレベルで日本は被害を免れているのに、自ら好んで悲観的な方へ、悲観的な方へ走ろうとしている。悪い話の部分だけを欧米と合わせようとこじつけているように見えて仕方がない。その思考パターンは投資の世界においても、ポジティブな要因を無視して、ネガティブな要因を重視する悲観主義へと導いてしまい、結局は上げ相場の中でも「海外投資家の買い、日本人投資家の売り」という形で持っていかれてしまっている。

決して「Covid-19」について軽く考えるべきだとか、無視してケアの必要が無いということを言っているのではない。人類が長い付き合いとなっているインフルエンザでさえ、予防接種をしても毎年患者はいる。私自身、毎年ワクチン接種をしているが、酷い年はA型とB型と両方に罹患したこともある。ゼロリスクにすることは絶対に不可能だ。それがゼロになることを願って何もしないままにいたら干からびるだけだろう。

悲観バイアスに慣れ過ぎたら、投資で勝ち目はないのだから。

———–<以上、抜粋終了>———–

(編集:Fund Garage編集部)

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このあと「My favorite Companies List(株主となって所有したい企業のリスト)
が続きます。

ファンドガレージ 大島和隆

Fund Garageへようこそ。主宰の大島和隆です。投資で納得がいく成果を得る最良の方法は、自分自身である程度「中身の評価」や「モノの良し悪し」を判断が出来るところから始めることです。その為にも、まず身近なところから始めましょう。投資で勝つには「急がば回れ」です。Fund Garageはその為に、私の経験に基づいて、ご自身の知見の活かし方などもお伝えしていきます。