FG Free Report AI時代とともに変化するMicron Technologiesのビジネス(6月30日号抜粋)

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日本では「PCやスマホ向けの安値DRAMメーカー」というイメージの根強いMicron Technologies。

しかし、2025年第三四半期の決算内容を見ていくと、今やMicron Technologiesという企業はAI時代とともにそのポジションが再定義されているということが明らかになりました。

今回は、その決算内容を確認し、Micron Technologiesの現在の立ち位置についてプロのファンドマネージャーが解説していきます。

なお、本記事には複数の半導体の名前が登場するため、以前の無料記事『多種多様な半導体の世界』も知識整理としてご参照ください。

投資での資産形成をお考えの方も、既に投資を始められている方も、ご自身の知識と照らし合わせながらご覧ください。

(Fund Garage編集部)

右肩上がりのビジネス・トレンド〜Micron決算が語るAI時代のメモリー半導体〜

Micronの2025Q3決算に宿る、構造転換のリアリティ

Micron Technology(MU)が発表した2025年度第3四半期(3〜5月)の決算は、ただの「好調決算」ではなかった。それは時代の変化とともにMicronという企業のポジショニングそのものが再定義された瞬間だったと、強く印象づけるものであったと私は感じている。

売上高は93億ドル(前年同期比+36.6%、前四半期比+15%)で過去最高を更新。Non-GAAPベースのEPSは1.91ドルと、アナリスト予想を30セント上回り、営業キャッシュフローは46.1億ドルとなった。これは、過去6年間で最高値である。

さらに、何よりも注目すべきは、次四半期(6〜8月期)のガイダンスがさらに強気である点だろう(以下参照)。

  • 売上:107億ドル(±3億ドル)
  • EPS:2.50ドル(±0.15ドル)
  • 営業利益率:約30%(粗利率42%)

CFOのマーク・マーフィー氏は「DRAM中心、コンシューマーよりもデータセンターへ」という製品ミックスのシフトが粗利益率改善の主因であることを明言している。この動きは単なる市況循環ではなく、Micronの構造が転換していることを示すのだ。

Micronの構造変化①HBM

Micronのこの転換の中心にあるのが「HBM(High Bandwidth Memory)」である。AIアクセラレータとメモリの距離が物理的にも論理的にもゼロに近づく中で、HBMは単なる部品ではなく、アーキテクチャ設計に組み込まれる構成要素となった。

(下図はNVIDIAのGPUアクセラレータBlackwellの図。真ん中にはGPUのシリコンダイがあり、その周りにHBMが4つずつ合計8個混載されているが、これらは物理的にくっついている。)

Micronは現在、NVIDIAやAMDの最新GPUプラットフォーム向けに、HBM3E(12-high:12枚のダイを積層という意味)の量産を進めており、これは実際にAMDのMI355Xにも正式採用された。Micronが供給するHBM3Eの帯域は1.15TB/sと、競合よりも20%以上低い電力消費を実現しており、「業界最先端の電力効率」とも称される。

(下の図は、先ほどの図を横から見たイメージ。CoWoSのサブストレート(基盤)上に、GPUが乗り、その横に12枚のダイを積み重ねたHBM3Eが載っているイメージ。その高さは僅かに1.2mm程度しかない)

そして、Micronは既にHBM4のサンプル出荷を開始しているが、帯域は2TB/sを超え、従来比で60%以上の性能向上を実現するという。またこのHBM4は、内部開発のCMOSロジックダイを用いているため、Micron独自の「メモリ+ロジック」の協調設計が大きな強みとなっている。

さらには、すでに2026年の量産とそれ以降のカスタム化(HBM-C)にも対応できる体制を整えているとのことなので、もはやMicronは単なるDRAMメーカーの領域を超えていると言っても過言ではないだろう。

Micronの構造変化②LPDDRとAI SSD

HBMに注目が集まる一方で、MicronのDRAMとSSDにおける高付加価値も見逃せない。特に注目すべきは、Micronが唯一の供給者として市場を握っているLPDDR(低消費電力DRAM)だ。

AIデータセンターで重要視されるのは、最小の電力で最大のパフォーマンスを発揮すること、つまり電力効率である。そこで必要不可欠なのが、このLPDDRなのだ。実際にMicronはこの領域だけで四半期ベースで10億ドル超の売上を記録している。

また、ストレージ分野では、60TBの大容量SSD「ION 6550」や、NVIDIAのNVL72向けに最適化されたGen5 SSD「9550シリーズ」が好調。MicronのSSDは低レイテンシ・高性能・高信頼性を実現し、AIサーバー向けSSDとしての差別化を確立している。

Micronの構造変化③設備投資2000億ドル計画と、サプライチェーン再構築

Micronの成長戦略は、研究開発だけにとどまらない。2025年6月、Micronは今後20年以上にわたり米国内に2000億ドルを投資する計画を発表した。

これは製造に1,500億ドル、R&Dに500億ドルを投じるという内容で、アイダホ州ボイジーでの先端ファブ「ID1」と「ID2」の建設(実際に私が先日見てきた現場写真を下記に掲載)を含む。

  • ID1:2027年後半にDRAM出荷開始予定
  • ID2:ID1と連携し、R&D効率を高める共同設計拠点
  • ニューヨーク州:環境認可取得後に着工予定

さらに、後工程(Assembly & Test)ではシンガポールにHBM専用の拠点を建設中で、2026年度には稼働開始見込み。Micronは、TSMCのCoWoS後工程要件を満たす信頼できるサプライヤーとしての地位を固める狙いだ。

TSMCのCoWoSについては、以前の記事『TSMCのCoWoS倍増計画とアリゾナ投資が日本企業に与える影響』を参照。

まとめ

  1. Micron Technologiesの2025年Q3決算は、売上高で過去最高を記録し、さらに次四半期のガイダンスも前向きなものであった。
  2. この好決算は、AI時代に合わせたMicronのメモリー半導体企業としての構造変革を示すものであった。
  3. 具体的には、①NVIDIAやAMDの最新GPUプラットフォーム向けHBM ②AIサーバー市場向けLPDDRとAI SSD ③2000億ドル規模の設備投資 が挙げられる。

このようにMicronは、HBM・LPDRAM・AI SSDという3本柱によって、TSMCやNVIDIAと並走するサプライチェーンの中核的プレイヤーとなりつつある。

ただそれにもかかわらず、市場にはいまだに「Micron=PCやスマホ向けの安値DRAMメーカー」という過去の視点で評価している投資家も少なくない。しかし、そうした見方こそが、今回の決算に照らせば過去の遺物であることが明らかになったと言えよう。

この企業の進化を正しく評価できるかどうかという問いこそが、AIインフラに投資する投資家にとっての試金石なのかもしれない。

編集部後記

こちらは、Fund Garageプレミアム会員専用の「プレミアム・レポート」の再編集版記事です。
公開から半年以上経った記事になりますので、現在の情勢とは異なる部分がございます当時の市場の空気と、普遍的な知見の皆様にお届けできれば幸いです。
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