2024年9月11日、サンフランシスコで「Goldman Sachs Communacopia + Technology Conference 2024」が開催されました。
そこでは、NVIDIA CEOのJensen氏が登壇しアナリストと対談を行いましたが、その内容は私たち投資家が同社への投資を考えるうえで重要なキーワードが盛りだくさんでした。
今回は、その内容を「NVIDIA投資のための10箇条」として、プロのファンドマネージャーが解説します。
投資での資産形成をお考えの方も、既に投資を始められている方も、ご自身の知識と照らし合わせながらご覧ください。
(Fund Garage編集部)
「NVIDIA投資を考える上で覚えておくべき10箇条」
NVIDIA Jensen CEOが語ったキーワード @Goldman Sachs Communacopia + Technology Conference
先週金曜日に雇用統計が発表され、来週17日~18日に開催されるFOMCを前にして沈滞ムードが漂っていた米国市場。
ここで活を入れたのは、11日にサンフランシスコパレスホテルで行われた「Goldman Sachs Communacopia + Technology Conference 2024」での、NVIDIAのJensen Huang CEOによる講演だった。
講演というよりは、Goldman SachsのアナリストであるToshiya Hari氏との対談という感じだ。決算発表シーズンの谷間で行われる近時の代表的なIRイベントでもある。
対談では、NVIDIAの技術革新・ビジネスモデル・将来展望を中心に多岐にわたる内容が議論されたが、これらの内容はNVIDIAを投資先に選ぶ上で判断基準となる押さえておくべきキーワードとも言える重要なものであった。
今回、それらを「NVIDIA投資を考える上で必要な10箇条」として、以下に整理していく。
1. NVIDIAの歴史と変遷
- ゲームからAI・データセンターへ
NVIDIAは、初めは主にゲーム向けのGPUメーカーとしてスタートしたが、2006年にCUDA(Compute Unified Device Architecture)※を発表し、科学技術計算・AI・データセンター分野に進出。AIトレーニングやデータ解析など、幅広い領域で活用される計算アクセラレータとして重要な役割を果たすようになる。 - アーキテクチャの一貫性
NVIDIAが長年にわたりアーキテクチャの一貫性を保ってきたことで、開発者が一度CUDAを学べば、その後の製品や技術の進化にも対応しやすい、とJensen CEOは強調。これが、開発者コミュニティを維持し、NVIDIAの技術を支える基盤となっている。
2. データセンターの未来
- 現状のデータセンターの課題
現在の多くのデータセンターは、エネルギー効率が低いという問題を抱えている。特に空気冷却システムは効率が悪く、高密度の計算リソースを処理できない。これを解決するNVIDIAの液体冷却技術は、消費電力を大幅に削減すると同時に高性能な計算環境を提供可能。 - アクセラレーテッド・コンピューティングによる変革
今後、AIインフラの普及に伴い、データセンターは汎用コンピューティングからアクセラレーテッド・コンピューティング中心へと移行。エネルギー効率と性能の両立を図ることが予想されている。
3. アクセラレーテッド・コンピューティングの利点
- AIやビッグデータ分野におけるタスクの高速化
アクセラレーテッド・コンピューティングは、特に計算負荷が高い部分を高速化するために使われる。例えば、AIモデルのトレーニングやビッグデータ解析など、従来の汎用CPUだけでは賄えない作業をNVIDIAのGPUが担うことで、大幅にパフォーマンスが向上する。
4. 生成AIとその将来性
- 生成AIの概念
生成AI(Generative AI)とは、AIがデータから新しいコンテンツやアイデアを生成する技術。Jensen CEOは、生成AIが単なるツールではなく、人間のスキルを補完する技術としてさまざまな業界で大きな変革をもたらすとしている。特に、デジタル従業員やデジタルエージェントの登場により、人間の作業負荷が軽減されて産業革命に匹敵する革新をもたらすと予測している。 - 生成AIの応用分野
自動運転、ロボティクス、デジタル生物学などの分野で生成AIの活用が進む。
5. ROI(Return On Investment=投資利益率)の向上
- 生成AIにおけるROI
Jensen CEOは生成AIインフラの投資に対して、1ドルの投資で5ドルのリターンが得られると述べており、非常に高いROIが見込まれるとしている。生成AIによる製品開発の期間短縮が、ビジネスの競争力を向上させる。
6. 競争優位性と革新の速度
- 7つのチップ
AIスーパーコンピュータには7つの異なるチップが使われており、これらが相互に補完し合うことでAIトレーニングや推論のパフォーマンスが大幅に向上する、とJensen CEOは強調。これがNVIDIAの強い競争力となっている。 - Blackwellの性能向上
新しいBlackwellアーキテクチャは、前世代と比べてトレーニングで4倍、推論で30倍の性能向上を実現。この革新速度が、顧客にとっての高いROIを保証している。
7. ライブラリの役割
- 専用ライブラリによる性能の向上
NVIDIAは、cuDNN(ディープラーニング用)やcuOpt(最適化問題向け)、cuQuantum(量子コンピューティング向け)といった多様なライブラリを提供している。ライブラリとは特定の処理を最適化する優れもので、開発者の介入が不要なため最大100倍ものスピードアップが見込まれる。
8. 地政学的リスクとサプライチェーンの多様化
- サプライチェーンのリスク管理
NVIDIAは、多くのサプライチェーンをアジア(台湾のTSMC)に依存しているが、他のファウンドリにもシフトすることでサプライチェーンの多様化とリスク分散を図っている。
9. GPUとAIの定義
- GPUは単なるチップではない
GPUというと一昔前は小さなチップであったが、今は全ての部品を合わせると3,000 ポンド(1,360㎏)にも及ぶ。まるで電気自動車のように複雑な設計である。 - AIとはインフラ全体である
AIも単なるチップではない。「チップを作ってコンピューターにはめ込めば完成」ではなく、「チップの設計→スーパーコンピューターの設計→ソフトウェアの開発」が全てできて初めて生成AIとなる。これを全て自社で行っているのが、NVIDIAの強さ。 - AIとはコンピューティングである
AIは、コンピュータ上で動作するソフトウェアである。それをクラウドで構築するのか、自分のコンピューターで動かすのか、あるいは車・ロボット・PCで実行するのかにかかわらず、同じアーキテクチャが利用できることが重要(これを「インストールベース」と呼ぶ)。NVIDIAはあらゆるコンピューティング環境に存在するため、どこで購入してもNVIDIAが入っていれば同じソフトウェアを使って動かすことが可能。
10. NVIDIAの責任
- AIインフラの世界的リーダーとして
NVIDIAは、世界中のAI企業やデータセンターと密接に連携している。NVIDIAの技術は、今後の高度なAI処理が求められる時代になくてはならない企業だ。
※…CUDAについての詳しい説明は、過去の無料記事『エヌビディアの強さ:CUDAとは何か?』を参照。
まとめ
今回ご紹介した「NVIDIA投資を考える上で必要な10箇条」は、以下のとおり。
- NVIDIAの歴史と変遷
- データセンターの未来
- アクセラレーテッド・コンピューティングの利点
- 生成AIとその将来性
- ROI(Return On Investment=投資利益率)の向上
- 競争優位性と革新の速度
- ライブラリの役割
- 地政学的リスクとサプライチェーンの多様化
- GPUとAIの定義
- NVIDIAの責任
いかがだろうか。
今回の対談を聞いた私がハッキリと断言できるのは、CEO自らがこれほどまでに技術に関して造詣が深く、また素人にも分かり易い言葉で自社が積み重ねてきた実績を丁寧に語られれば、投資家として抜群の信頼をおいて投資を続けられるということだ。
市場にはいろいろな意見や見解があることは承知しているが、積み重ねたエヌビディアの歴史(この10箇条)が、ノイズを一瞬にして消し去るといえよう。
逆に言えば、ここまでのフォローをするのは基本的にWall街のアナリストがメインになるからこそ、彼らと市場関係者との間で認識の乖離が生まれるのかも知れない、ともあらためて痛感した。
だからやはり、投資家としての楽しさや投資への信頼感を得るためにも、このようなイベントや決算発表時は積極的に自分の目と耳で情報収集をしていこう。
編集部後記
こちらは、Fund Garageプレミアム会員専用の「プレミアム・レポート」の再編集版記事です。
公開から半年以上経った記事になりますので、現在の情勢とは異なる部分がございます。当時の市場の空気と、普遍的な知見の皆様にお届けできれば幸いです。
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