NVIDIAのFY2025第2四半期決算は、売上で過去最高を発表するなど素晴らしい結果に終わりました。
それにもかかわらず、「NVIDIAの成長率は鈍化している」という声が多く上がり、その後の時間外取引で株式市場は売りに傾きました。一体どうしてでしょうか。
今回は、そんなNVIDIAの決算結果やジャンセンCEOの発言から、これからの生成AIトレンドについての展望をプロのファンドマネージャーが解説します。
投資での資産形成をお考えの方も、既に投資を始められている方も、ご自身の知識と照らし合わせながらご覧ください。
(Fund Garage編集部)
NVIDIA決算から見えてきたAIのこれから
見事なNVIDIAの決算だったが…
先週は市場が最も注目していたイベント、エヌビディア(NVDA)の5-7月期(FY2025Q2)決算が発表された。
そしてそれを受けた市場の反応は、実に面白い展開となった。何故なら決算のPress Releaseが発表されたのとほぼ同時に時間外取引市場で売り浴びせが始まったからだ。一時期は当日引値から△8%近く下落する場面もあったほどだ。
まずはPress Releaseに示された決算内容について、ポイントを以下にまとめる。
- 第2四半期のNon-GAAP EPS(1株当たりの純利益)は$0.68で、市場予想を$0.04上回った。
- 売上は過去最高の$30.04B (前年比+122.4%) で、市場予想を$1.31B上回った。
- データセンターの四半期収益は過去最高の263億ドル(前年比+154%)で、第1四半期+16%。
- 2024年8月26日、取締役会は期限なしで追加の500億ドル(約7兆2500億円相当)の自社株買いを承認した。
これだけ良好な決算を発表してもなお、株価が売られているというのは、なぜだろうか。もう株式投資に「相場”観”(アナリシス)」は必要なく、「相場”勘”」さえあれば良いとでも言わんばかりである。
そんな思いに駆られているとき偶然にも、過去のPress Releaseをクリックしたみたことで、下落の答えがみつかった。それが下に記した過去のPress Releaseの第一行目の記述だ。 ※revenue=売上
- (FY2024Q1)Quarterly revenue of $7.19 billion, up 19% from previous quarter
- (FY2024Q2)Record revenue of $13.51 billion, up 88% from Q1, up 101% from year ago
- (FY2024Q3)Record revenue of $18.12 billion, up 34% from Q2, up 206% from year ago
- (FY2024Q4)Record quarterly revenue of $22.1 billion, up 22% from Q3, up 265% from year ago
- (FY2025Q1)Record quarterly revenue of $26.0 billion, up 18% from Q4, up 262% from a year ago
お気付きだろうか。「対前四半期比」も、「対前年同期比」でも、増加率の絶対値はFY2024Q4をピークに低下しはじめているのである。そして今回(FY2025Q2)は、
- Record quarterly revenue of $30.04 billion, up 16% from Q1 and up 122% from a year ago
にとどまっているのだ。
なるほど、決算発表のPress Releaseを見慣れていなければ、あるいは機械的にプログラムを組んだアルゴリズムなら、もしかすると「NVIDIAの成長率は下がっている」と勘違いしてしまうのかもしれない。
NVIDIAを支える「アクセラレーテッド・コンピューティングと生成AI」
上記の、機械的なアルゴリズムによる下落理由に加えて、最近では市場における悲観派の意見が後を立たない。
それは、「AI設備投資の持続可能性と顧客の投資収益」についてだ。つまり、
- Amazon・Meta・Microsoft・Googleを始めとしたクラウドサービスを提供しているテック企業や、Walmartに代表されるエンドユーザー企業のAI関連への設備投資は本当にこの先も続くのか?
- 続くならば、いつになったらそれが収益化してROI(=Return on Investment。投資費用に対してどれだけの利益を上げられたかを示す指標)が上がってくるのか?
という議論である。
これについてはGoldman SachsのアナリストToshiya Hari 氏が斬り込んだが、対してJansen CEOは「汎用コンピューティングからアクセラレーテッド・コンピューティングへの移行」ということで説明をしている。
具体的には、
“長期的な視点で見た場合、私は同時に二つのプラットフォームの転換が進行していると述べました。第一は、一般的なコンピューティングからアクセラレーテッド・コンピューティングへの移行です。これは、CPUの性能向上が長い間鈍化しているためです。一方で、コンピューティング需要は年々急増しており、新しいアプローチがなければ、企業のコストやデータセンターのエネルギー消費が増加し続けることになります。アクセラレーテッド・コンピューティングは、この問題を解決するための答えです。
第二に、このアクセラレーテッド・コンピューティングのおかげで、非常に大規模なモデル、特にマルチ・トリリオン・パラメータのモデルをトレーニングすることが可能になり、これが生成AIの革命を引き起こしました。生成AIは、単なる機能ではなく、ソフトウェアの新しい作り方であり、人間が設計したアルゴリズムに代わり、AIがデータから学ぶというものです。”
と話している。
つまり、アクセラレーテッド・コンピューティングによってアプリケーションが高速化され、科学シミュレーションやデータベース処理など、はるかに大規模なコンピューティングも実行できるようになり、それが直接的にコストの削減とエネルギー消費の削減に繋がっているのだ。そして、求められるコンピューティング・パワーの需要は留まることなく激増している。
「アクセラレーテッド・コンピューティング」や「生成AI」についてのより詳しい説明は、過去の無料記事も参考にしていただけたら幸いだ。
まとめ
いかがだっただろうか。
最近FundGarageの公式YouTubeにも、生成AIと関連株の将来性についてのコメントが多数寄せられている(いつもご視聴いただき感謝申し上げます)。なのでおそらく、AIやアクセラレーテッド・コンピューティング周りについては、多くの方の関心事になっていることだろうと推察する。
だが今回お伝えしたように、市場の悲観論は常に絶えないものだが、年々アクセラレーテッド・コンピューティングや生成AIの需要は急増しているので、投資収益に関して(現在のところ)大きな心配をする必要はないということをご理解いただきたい。
——”心配をする必要はない”というよりむしろ、少しでも懸念点があるならば、良質な情報をどんどん取っていくことが最も大切だ。
市場コンセンサスや機械的なアルゴリズムに左右されるのではなく、「そもそもAIとは何か?AIによって未来はどう変わっていくのか?」についてご自身で理解を深めビジネストレンドを地道に追っていくことが、AI関連投資を成功に導くキーポイントになる。
編集部後記
こちらは、Fund Garageプレミアム会員専用の「プレミアム・レポート」の再編集版記事です。
公開から半年以上経った記事になりますので、現在の情勢とは異なる部分がございます。当時の市場の空気と、普遍的な知見の皆様にお届けできれば幸いです。
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