日々の値動きに一喜一憂せずに長期投資で成果を得るためには、そもそも株式って何? という事をしっかりと理解しておくことが大切です。
ところが、株式投資を始めてみたいと思っている人、或いは株式投資に興味を持っている人に限らず、既に株式投資を始めている人でも、案外「株式とは何か?」という基本的なことを知らないことって、私の今までの経験に照らしてみても意外に多いんですよね。
これがしっかりと理解できれば、
株式投資って怖い、といったイメージから投資に踏み切れないことで長期の資産形成で大きなハンデを負ったり、
値動きに翻弄されて短期売買で損を繰り返したり、
といったことを避けることができます。
なので、まずは基本的なところで、「株式ってそもそも何か?」というところから一緒に勉強してみたいと思います。
株の正体って、本当な何だろう?
ひと言でその正解を最初に言っちゃうと、
『株式とは企業の所有権の証憑』
家を買ったらその家の「権利書」が手に入るように、株式と言うのは株券を発行している企業の所有権のレシート、証拠のようなものなんです。
だからもし世の中に株式を一株しか発行していない企業があって、その株式を貴方が持っていたとしら、その会社には社長さんや社員さんがいて、本社とか、工場とかあったとしても、その会社は全部「貴方のもの」という事になります。
誰が株式会社を作るのか?
株式会社を設立する時は、最初に誰かがお金を出して(資本金)、そのお金をやり繰りしながら仕入れをしたり、オフィスを構えたりすることからスタートとなります。
最初にお金を出す人が社長さんだったり、その周りの役員さんだったり、社員さんだったりすることもありますし、全く会社には顔を出さないけれど、最初にお金だけポンと出してくれる人が居たりもします。
ということは、その会社は誰のもの?という事を考えれば、当然最初にお金を出してくれた人という事になりますよね。そのお金を出してくれた人の事を株主と呼び、お金を出してくれた証明として株券が発行されるわけです。
誰が最初にお金(資本金)を出してくれるのか?会社の作り方
創業者の社長さんがお金を出していれば、その社長さんはオーナー社長と呼ばれますが、必ずしも社長になる人がお金を最初に全部出しているとは限りません。更に言えば、会社が始まって何年か経つと、社長さんが交代してしまう事も良くある話です。
でも最初にお金を出した人は社長さんが変わろうと最初にお金を出した人のままですから、会社の所有権はその人にあるということになります。これを会社の「所有と経営の分離」と言いますが、この話はまたあらためてお話しますね。
最初に誰かが100万円をポンと出してくれて始まった会社の場合を考えてみましょう。まず最初にすることはきっとオフィスを構えることであり、会社としての必要な事項を法務局に登記をしたりすることから始まります。
お金を出した人がそのまま社長となって仕事を始めるのならば社長をしてくれる人を探す必要はありませんが、経理を見てくれたり、営業をしてくる人はお給料を払って雇わないとならないかも知れません。また販売する商品を仕入れないと売るものがありませんから、まずは仕入れも発生するでしょう。
そんなところから会社はスタートを切るのですが、経営が上手く行って、段々と儲けが出て来るようになると、会社を作った最初に使ったお金を全部取り返して、会社の預金残高も100万円を段々と越えて来る筈です。逆にもしそうならなければ、その会社は倒産することになってしまいます。
利益が出るようになった会社の価値は増えていくもの
会社が始まって暫くして、会社の預金残高も100万円を超え、オフィスにはデスクやパソコンやコピー機などもあり、更には販売するための商品も倉庫にあるような状態になった時、その会社の始めの時にポンと100万円を出してくれた人のその100万円の価値は、今は幾らになっていると思いますか?
仮にその人が「もう会社も軌道に乗ってきたから、もう会社の所有権は誰かに譲るから、株券を売りたい」と考えたとしたら、その株券は幾らで売るのが妥当だと考えますか?
もし会社が毎年毎年50万円ずつの利益を出している状態になっているとしたら、それを最初の100万円で売ってしまったら損をすることになりませんか?
会社を始めるって最初は大変なことですが、事業が軌道に乗って毎年利益を出せるようになってきたら、その会社は今年よりも来年、来年よりも再来年、5年後、10年後とドンドン大きくなっていくことが予想されます。
因みに、株主には通常「株主配当」と言って、その一年間で会社が稼いだ利益の中から、或る一定水準の配当金が支払われるのが普通です。
仮に毎年50万円の利益が出ている会社ならば、株主には10万円ぐらい払われるかもしれません。そして残りの40万円は会社の財産として蓄積されていきます。ならば、同じペースが10年間続けば、配当金だけでも100万円になり、蓄積される金額は400万円にもなります。その権利を100万円で売る必要があるでしょうか?
結局、株式ってそもそも何ですか?
ならば最初の質問に戻って、「株式ってそもそも何ですか?」という問いの答えを考えると、まず株式とは企業の所有権の証憑であり、その企業の経営が軌道に乗って利益が出るようになれば、その価値が段々と増えていくものというのが答えになります。
しかし、その一方で、そんなバラ色の話だけでは無いのがこの話の面白いところです。先にもお話したように、もし経営が軌道に乗らず、利益を出すことが出来なかったとしたら、最初の資本金を使い切った段階で会社は敢え無く倒産という厳しい現実に突き当たります。
勿論、最初の100万円だけでは資金も足りないでしょうから、銀行などから融資を受けて社長さんは頑張っていたかも知れません。しかし利益がいつまで経っても出て来なければ、銀行は慈善事業をしている訳では無いので、その融資は継続されず、どこかで資金繰りが行き詰まって倒産することになってしまいます。
その時、銀行等から融資として借りたお金は、基本的には貸主(銀行等)に返済しないとなりません。借りたお金は返さないとならないというのが鉄則です。
では、最初にポンと100万円を出してくれた株主にも、そのお金を返さないとならないのでしょうか?
実はその答えは「否」、すなわち返済する必要はありません。
何故なら株主はその会社の所有者であり、会社が倒産するという事は、その所有権がゼロになるということに他らないからです。
ならば株を買うってどういうこと?
その会社の株を買うというのは、お金を貸してあげる融資をすることとは根本的に違う行為なのです。
なので時々耳にする「企業への応援投資」という話がありますが、株式投資である以上「100万円暫く貸してあげるから頑張れよ」という次元の話とは全く異なるんだということをきちんと理解してから企業を応援してあげて下さい。
上手く行って大きな利益となるかも知れませんが、基本的性格は「企業への寄付」に近いということです。
ならば何を見ていたら良いのかって?
それは勿論、その企業のビジネス、経営がこの先も上手く行って利益を上げることが出来るのかどうかってことです。儲からない企業の株を買うことは、年末の共同募金に寄付することと何ら意味合いは変わりません。