FG Free Report FTXの倒産から学ぶ、上手な投資の心得とは?(11月21日号抜粋)

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みなさんは暗号資産をご存知ですか。以前は「仮想通貨」という名前で知られ、我が国日本でもビットコインなどの売買が活発に行われているニュースをよく目にします。しかし2022年11月、暗号資産の取引所の一つであるFTXが破綻しました。果たして暗号通貨は信頼のできる資産と言えるのでしょうか。今回はプロのファンドマネージャーが、そんな暗号通貨のリスクを考察しながら、反対に信頼のできる右肩上がりのビジネス・トレンドを合わせてご紹介していきます。

投資での資産形成をお考えの方も、既に投資を始められている方も、ご自身の知識と照らし合わせながらご覧ください。

(Fund Garage編集部)

リセッション懸念は解消されるのか?

先週の株式市場の動き

先週の株式市場、終わってみるとややマイナス圏となっているものの、大きな下落にはつながらなかった。悪材料に対する耐性が整ってきたように見える。具体的には、

①ロシアのミサイルがポーランドに撃ち込まれた。

…以前なら恐らく「War Riskの拡大」として市場は大きく動揺した筈だ。しかし目立った下落には至らなかった。

②FTX(暗号資産取引所)の破綻。

…後ほど詳しく説明する。

という問題に、株式市場は冷静に対応しているように見えた。

債券市場の動き——逆イールドの発生

しかし一方で、債券市場は悲観的であることがうかがえる。

『FG Free Report 米インフレとFOMCに見る、政治と経済の関係性とは?(11月7日号抜粋)』でもお伝えしたが、現在FRBが政策金利であるFFレートの誘導目標は3.75%~4.00%だ。だが下のチャートを見れば一目瞭然、週末の終値はFFレートの目標下限を下回ったことが分かる。

つまり債券市場はこの先の景気後退=リセッションを確実視しているのだ。イールドカーブがフラットニング(平らになること)を超えて、右肩下がりになることは滅多にない(※1)。

※1「逆イールドカーブ」と呼ばれる。下図参照。

FTXの倒産から学ぶ、不透明な商品のリスク

前述の通りFTXが11月に突如、経営破綻した。

一番大事な教えは「よく分からないものには手を出すな」ということだろう。私は長く資産運用業界で仕事をしてきた者として、一般の社会人に比べて「金融商品」に対する造詣は深く、理解力もあるとは思うが、正直、「暗号資産(かつては仮想通貨)」については「よく分からない」。

そもそも暗号資産とは、国が定めた法定通貨(例えば円やドルなど)ではなく、電子データ化された通貨のことを言う。つまり、政府や銀行からの保証はなく、さらに紙幣や硬貨といった実体も存在しない。今回はその取引所のひとつが破綻したのだ。

暗号資産について分からないことのひとつは「値動きの仕組み」だ。暗号資産の価値は何を基にして、どうやって決まるのか。

結局は単に「需給」でしかないと私には思えてならない。それにもかかわらず、どうして「買い」と思う時があり、「売り」と思う時があるのか。イメージとしては、宝くじに夢を託すようなものだ。

そしてもうひとつは、今回の破綻の原因にもなった、どうして取引所なり交換所と呼ばれる存在が顧客(投資家)の資金を持ち逃げるようなことが出来るのかということだ。それは、通常の「取引所」では起こりえないことだからだ。

実際、このように世の中には調べても仕組みがよくわからない「金融商品」紛いや、「投資話」は多いようである。まだまだ投資の世界は発展途上なのだろう。

私自身、その全てを調べ、把握している訳ではもちろんないが、安易によくわからない不透明なものに資金をつぎ込むべきでは無いことだけは確かだ。この記事を読んでいるみなさんには是非リスクを理解し、信頼できる商品に投資をしてほしい。

右肩上がりのビジネス・トレンド

さて、このように先週はさまざまな問題が散発したが、実は右肩上がりのビジネス・トレンドについての明るいニュースは多かった。

 

①世界で注目のハイテク関連企業エヌビディア(NVDA)の決算発表が行われ、結果は前向きなものであった。

②トヨタ自動車(7203)が5代目となるプリウスを発表した。

③トヨタやデンソーなどが「Rapidus(ラピダス)」と名付けられた革新的な半導体企業を設立することが明らかになった。

④ウォルマートの決算が市場予想を大きく上回る結果となった。

 

では、それぞれ詳しく見ていこう。

①生成AIの台頭——エヌビディアの決算説明から

米エヌビディアの2022年8~10月期決算は、売上高が前年同期比17%減、純利益は同72%減であったと発表された。

しかし一方で、同社が決算発表後に開催した、ジャンセンCEOと投資銀行のアナリスト達の質疑応答のやり取りを聞けば、マイナスなイメージは一新される。

AIの発展に関する現状説明でジャンセンCEOは「Perception AIからGenerative AIへ」という発言をした。つまり、Perception=大量のデータを識別・認知することしかできなかったAIが、Generative=データを学習して0から1を作ることが可能な「生成AI」へ移行していく時代に突入したということだ。AIが登場して10年が経ち、今が正にその転換点という。

これは世界を驚かせた極めて明るいニュースであった。

 

~FG編集部のひとことポイント~

2023年2月2日、UBS証券の調査によると、Chat GPTはリリース後わずか2か月で1億人のユーザーを獲得したという。(ロイター調べ

さらに5月31日配信の動画では、無料版Chat GPTとエヌビディア株価高騰の背景について解説しているので合わせてご覧いただきたい。

[blogcard url=”https://youtu.be/sexwdtPilCg”]

リンクに飛べない場合は、こちらからどうぞ。

②新プリウスが見せた、電気自動車の未来

トヨタが発表した新型プリウスは、従来型同等の低燃費を維持しつつ、高い出力を達成。

さらに日常生活の大部分をEV走行だけでカバー出来るようにバッテリー性能を向上させ、EV走行距離が従来型に比べて50%以上も向上したという。

そして何より大事なのは、暴走や爆発などといった不具合はほとんど発生していないという点だ。トヨタのHEV(Hybrid Electric Vehicle)に対する本気度が追認されたというのが実感だ。これは売れると思う。

③世界を握るかデンソー(6902)の半導体

かつては「日本電装」というトヨタグループ・メインの自動車部品サプライヤーだったデンソーは、今や独ボッシュに次ぐTier1サプライヤー(※2)として、非トヨタグループ向けの売上げが50%を超える「世界のデンソー」と呼べるレベルになっている。

『トヨタが潰れてもデンソーは潰れない』と言われており、それにははっきりとした理由がある。

それは、自動車部品ばかりではなく、半導体やIoTといった分野にもかなり力を入れていることにある。例えば「3次元QRコード」のあの不思議な紋様を開発したのもデンソーだということはご存じない方も多いかもしれない。

そして今回、「Rapidus(ラピダス)」への取り組みが発表されたことで、今後さらに半導体分野へのコミットメントが期待され、話題を呼んでいる。

「Rapidus(ラピダス)」は、まだ実用化されていない2ナノメートル級ロジック半導体の生産を目指しており、研究開発拠点を年内に立ち上げるという。

※2…完成車メーカー(トヨタなど)に自動車部品を直接納品する企業のこと。

④ウォルマート(WMT)は大手量販店というよりAI企業?

ウォルマート(WMT)が15日に発表した8‐10月期決算は大きく市場予想を上回った。その背景にあるのが、AIを使ったショッパーズ・マーケティングだ。これは主に、顧客に占める世帯収入10万ドル(約1390万円)以上の層が厚みを増したためとされている。

一方で、その翌日に決算を発表したターゲット(TGT)の株価は急落した。第3四半期決算が市場予想を下回ったからだ。ターゲットはまた、業績予想を下方修正した。同社は、米国の消費者が支出を控えつつあるとの見解を示した。

どちらも低価格戦略が売りの大手量販店だが、全く違う展開となった最大の理由はAIの利用成果だ。ターゲットも勿論AIを利用しているが、恐らくまだ成果が上がっていない。AIの活用成果が、決算では既に明暗を分け始めていると言える。

そしてここでやはり思い出されるのが、エヌビディアのジャンセンCEOのコメントである。「Perception AIからGenerative AI」という流れが企業の生き残りのために必然であることは事実だろう。こうした流れを見極めるには、やはり複数社の決算説明を聞き取ることが投資家には必要だ。

 

~FG編集部のひとことポイント~

ウォルマートは2019年4月に、IRL(Intelligent Retail Lab)と呼ばれる、AIの実験的店舗を開店させた。

この店舗の目的は、大量のAIセンサーとカメラによって商品在庫を適切に、そして素早く管理することだ。顧客にとっても、そして従業員にとってもスムーズな店舗づくりを推し進めるウォルマートの今後のAI事業に注目してみてほしい。

公式サイトに飛びます。

まとめ

上手な資産の増やし方

先週の大きなトピックスをまとめると、

    1. 逆イールドの発生とリセッション懸念の拡大
    2. FTXの倒産
    3. 生成AIの将来性

であった。

実際に暗号資産というものは、資産配分の10%以下に設定しなければ危険だとも言われているもので、プロの我々からすると正直ギャンブル並みのリスクの大きさを抱えているものなのである。

債券市場にしても、リセッション懸念が続き非常に悲観的に織り込んでしまっていた。

しかしひとたび右肩上がりのビジネス・トレンドに目を向けるとどうだろう。Generative AIの活躍によって今までの不可能は可能に変わり、明るい未来の絵が描かれつつあるのではないだろうか。

確かに今後暗号資産が新たな法定通貨として認められれば、投資の可能性が広がることもあるかもしれない。だが特に超低金利時代の今こそ、そのような不透明な資産に手を出すより先に、もっと確実性の高い世界的な右肩上がりのビジネス・トレンドを日々追っていくことが上手に資産形成を行っていく秘訣であるというのが私からのアドバイスだ。

 

編集部後記

こちらは、Fund Garageプレミアム会員専用の「プレミアム・レポート」の再編集版記事です。

公開から半年以上経った記事になりますので、現在の情勢とは異なる部分がございます当時の市場の空気と、普遍的な知見を皆様にお届けできれば幸いです。

また、こちらは無料版記事のため、最新の情報個別企業の解説についてはカットしております。

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ファンドガレージ 大島和隆

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