もしかすると絶好の投資機会を逃している
株式投資でなかなか利益をあげられない投資家の共通項は、周りのノイズに振り回され易いこと。多くの人が「買いだ」と言えば強気になって買いに走り、反対に「売りだ」と言い出せば弱気になって売ってしまう。たいてい相場の7-8合目で参戦し、それをやや下回った3-4合目で撤退する。これを繰り返している限り、投資家は決して投資収益はあげられない。
でも、もしこれと逆の事が出来たら、つまり3-4合目で参戦し、7-8合目で撤収することが出来たら、大きな収益ではないかも知れないが着実に利益は積み上がる。いつも逆側は出来るのだから、何か脳の回路を入れ替えれば同じことが出来る筈だ。それが天邪鬼になること。
普通の投資家は周りの声をよく聞いてしまう。新聞を読み、ニュースを観て、ネットの掲示板を追い、そしてSNSに没入する。たぶんそれが一番最新の時事問題を手に入れるベストな方法だと思っているからだろう。その結果、何が起こるのか?
その投資家の思考パターンは完全に「大衆(マジョリティ)」と同じものとなってしまう。
株価の短期的な決定要因は企業収益でも、金利水準でも、円安や円高でも無い。需給だ。買いたい人が沢山いれば株価は上がり、売りたい人が沢山になれば株価は下がる。つまり「大衆(マジョリティ)」のセンチメントが向かっている方向に動くということだ。だが投資で収益をあげられる人は、これと逆の動きを出来る人。つまり「少数派(マイノリティ)」の方だ。自ら好んで、一生懸命「大衆(マジョリティ)」の考え方を自分の脳に取り込むことは無い。
「大衆(マジョリティ)」と同じ考え方でいる限り、絶好の投資機会で大きな成果を得ることは出来ない。だからこその天邪鬼の奨めだ。
情報は少ない方が良い
一度立ち止まって身の回りの人をじっくり観察してみると面白い。色んなことを知っているように見える、所謂「情報通」の人が果たして投資で上手くいっているだろうか?私の知り得る限りでは、そうした例は案外少ない。何故なら、パターンA~パターンZまで全部を聞きかじっているような状態は、逆に言えば「何も知らない」のに等しく、どれかひとつをピックアップするのが困難だからだ。結果として多数決のマジョリティの方についてしまう。
「新型コロナウイルスの感染拡大」のニュースに世界中の市場が翻弄されている今が正にその時だ。テレビから、新聞から、ネットから、SNSから24時間ひっきりなし情報が垂れ流される。その中には正しい話もあれば、間違ったものもある。中には意図的なフェイク・ニュースもある。
「専門家」とか「○○に詳しい人」としてコメントや解説をしている人が、実はたいしたバックボーンが無い紛い者だったりすることもよくある話。政治に詳しいからと言って、経済に明るいわけでは無く、経済に明るいからと言って、医療に明るいわけでは無い。医療の分野でも、外科と内科は違う。内科の中にも、胃腸科あり、内分泌科あり、循環器ありと様々だ。
新型コロナウイルスの感染拡大の件で言えば、まず必要なのは感染症に対する専門医であろうし、感染症拡大を防ぐ危機管理の専門家の意見だろう。ましてや素人の「聞いた話なんだけど・・・」シリーズぐらい混乱を招くものは無い。ただインターネットが普及し、SNSやYouTubeなどを含めて、誰もが情報発信が出来るこの時代、本当に正しい情報を選び出すのは大変だ。今週初めも、まことしやかに医療関係者の話として新型コロナウイルスの予防策なるものがSNSで飛び交った。
下手に情報の洪水の中で溺れるぐらいならば、洪水そのものを遮断してしまった方が良い。そして明らかに間違いない、由緒正しき事実のみを、能動的に調べてみる。パニックになった群衆の中を一緒に走っていたら、災害時に助からないのと同じだ。
ジョンズホプキンス大学が公開している感染者数リアルタイム・モニター
米国に「ジョンズホプキンス大学」という超名門私立大学がある。世界屈指の医学部を有するアメリカでも、最難関と呼ばれている大学だ。また世界最古の公衆衛生大学院があることでも知られている。そのジョンズホプキンス大学が発表している新型コロナウイルスの感染拡大状況のリアルタイム・モニターがある。それがこれだ。
出所;ジョンズホプキンス大学
https://gisanddata.maps.arcgis.com/apps/opsdashboard/index.html#/bda7594740fd40299423467b48e9ecf6
この画像では小さくて見難いかも知れないが、左上にある83,388人というのが現在(2/28/2020 2:33:02午後)の世界中の感染者数だ。その下に、中国本土、韓国、その他(クルーズ船)、イタリア、イラン、日本と内訳が続く。この辺りの数字は多くの情報源から放出されているのでご存知の方が多いと思うが、右肩の黄緑色の数値はあまり報じられているように思えないが如何だろうか。
この黄緑色の36,558人という数字こそTotal Recoveredと表記される治った人の数である。という事は、今現在「83,388人-36,558人=46,830人」が現時点の感染者であり、約43.8%の人が既に治癒していると言える。そしてその更に左の白文字2,858人が亡くなられた方の数という事だ。
厚労省の人口動態統計によれば、昨年2019年1月の日本におけるインフルエンザでの死亡者数は1,685人に及び、米国では今シーズン既に14,000人の方が亡くなっている。実は数字だけで比較すると、インフルエンザの方が余程遥かにシリアスな状況にある。ならば何がそんなに大騒ぎなのかと言えば、恐らく制御し切らなくなっている一種の集団ヒステリーのようなものではないだろうか。言い方を変えれば、世界が初めて迎えたネット時代の制御不能な情報氾濫による災害、という事だ。
確かにワクチンは無い、明確な治療法も確立していない、都市が閉鎖された、クルーズ船内で集団感染状態になった、などと言われれば「大変だ」と騒ぎたくなるのも分かるが、数字を客観視すると「インフルエンザの方が怖い」という結論にはなる。
経済的な影響は、2次災害だ
「通勤電車の中でマスクをしないで咳をしている人と喧嘩になった」などと言う状態こそ、如何に大衆心理が不安に打ちひしがれているかの証左であろう。これだけ世間で騒がれているのに、何かイベントを開いて集団感染にでもなったら世間から袋叩きにあうだろうと思えば、企業やイベント責任者の誰が無理をしてまで強行しようと思うだろうか。現代は責任回避社会だからだ。そしてイベントの中止や、学校の休校などに話が及び、結果的に経済が停滞してしまう。
確かに、中国をハブとしたサプライチェーンの混乱は気になるところだが、例えばロームも村田製作所も、中国工場は既に12日から再稼働している。同社のWebを見れば一目瞭然だ。トヨタも24日に成都工場を再稼働させることで、中国国内のすべての工場が稼働した筈だ。2月16日に「再稼働は24日に延期」という報道はあるが、それが更に延期になったという報は無い。動くものは動き出しているという事は、冷静に調べて把握する必要がある情報だ。感染者数の累計ばかりが報じられて、治癒した数があまり報じられていないのと同じことだ。
さて、ここらで天邪鬼になろう(恐怖指数を参考に)
恐らくもう暫く株式市場は大きなアップダウンに振り回される可能性が高い。右を向いても、左を見ても、「コロナ、コロナ、コロナ」と大騒ぎだからだ。「大衆(マジョリティ)」の心理はまだ暫くは不安と悲観に支配された狼狽状態が続く可能性が高い。今晩のニューヨーク市場(現地2月28日)はどっちに向かうのだろうか?
さて一枚のチャートをご紹介する。これは過去3年間のS&P500種とVIX指数(恐怖指数)の時系列チャートだ。実は昨晩(現地2月27日)のNY市場でVIX指数は急騰し、過去3年間の最高値を付けた。過去3年間で見ると、あと2回ほどVIX指数が急騰した時があるが、いずれも株価がドスンと突っ込んだ時だ。
原資産価格とボラティリティの間には負の相関関係があるのはよく知られた事実で、理論的にも証明されている。多くの人が急落で大変だ、大変だと言っている時、少なくともこのチャートを見ると「ん?これって?」と思えるかが天邪鬼の始まりである。チャートを見れば一目瞭然だ。
そしてもうひとつ。「これだけ新型コロナウイルスの感染拡大が騒がれたら、もうAIも発展しないし、5Gなんて普及しない、ですよね?自動運転のクルマや電気自動車の開発なんてストップしますよね?だって人が集まったら皆ウィルスに感染してしまうから。」などと考えるべきだろうか?当然、答えはNOだ。
大きな技術開発の流れに支えられた時代の流れは、暫しの間、足踏みを強いられるかもしれない。所謂「サプライチェーンの混乱」だ。それもまだ本当かどうかは分からない。ただ企業の決算やガイダンスに1、2四半期はマイナスに影響する可能性は否定出来ない。だが人間の多くの欲望、すなわち「楽になりたい」「楽しくありたい」「便利になりたい」などの限りなき欲望は、決して失われることなく膨らみ続ける。今、「スマホ禁止」と言われても手放すことなど出来ないのが証左だ。
株価は短期的には需給が決めるが、長期的には企業収益の動向に収斂する。それは株が企業の所有権の証憑だからだ。2年先に価値が10,000円になると思われていたものが、半年うしろにずれただけなら、今は「売るべき?買うべき?」、どちらだろう。「この半年間の資金繰りが苦しいんだ」という資金は売るだろう。例えば信用取引などはそうかも知れない。でも期限の定めなく、長期投資で保有したいと思っている資金ならばどうする?
そんなことを考えて、「大衆(マジョリティ)」とは違う「少数派(マイノリティ)」の発想を持つことが、きっと勝因に繋がるだろう。
ガマの油のガマガエルになる前に
ガマガエルを鏡に映して囲み上げると、自らの姿を見て脂汗を流すという。株価モニターの前に座って下げ行く相場を凝視して、或いはひっきりなしにスマホで株価をチェックして、なんでなんだ、どうなるんだとネットの掲示板やSNSをチェックしてと、そんなことをしていたら、ただただ心拍数が上がって脂汗をかくだけだ。そんなガマの油のガマガエル紛いの状態を続けるより、表に出て(人混みは避ける)、従前から考えていた右肩上がりのビジネス・トレンドはどうなったか想いを馳せてみよう。きっと前向きな答えを抱えた天邪鬼になれる筈だ。