米国市場急落の背景
なんで急落したのかと言えば、どうやら諸々の不安心理が重なったようだ。その引き金となったのは
- 中国のコロナ感染拡大によるロックダウンの影響が拡がり、世界景気の先行きに不安を増幅したこと。
- FRBがまだ利上げに対して強気であること。
- アルファベットの決算が市場予想を下回ったこと。
などが言われている。
また今や時価総額で全米第5位、アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾンに続く位置にまで時価総額が大きくなったテスラ(TSLA)が前日比で12%も下落したことも大きい。ナスダックもS&P500も時価総額加重平均によるインデックスなので、時価総額が大きい銘柄の下落はそれなりにインパクトを市場に与える。
そしていつもお伝えしているように、短期的な株価動向は需給が支配し、長期的な株価動向は企業収益に収斂することを考えると、センチメントが売りスパイラルになった時は急落しても仕方ない。
株式市場は健全に機能している
まずはこのチャートを見て頂こう。株価と恐怖指数(S&P500のインプライド・ボラティリティ*1)が綺麗に負の相関を維持している。そして昨日は33.52まで駆け上がった。この水準は3月8日の株価安値の前日につけた36.48(3月7日)に接近し、きちんと機能していることが確認出来る。
インプライド・ボラティリティについては、別連載の「新入行員諸君!」のオプション編で解説している。そちらもご覧いただきたい。
個別企業の決算動向と内容の詳細についてはプレミアム・レポートの方でお伝えするが、GAAPとNon-GAAPの見立ての違いや、ガイダンスの受け止め方、或いはビジネス・トレンドの把握の仕方によって慌て方も違うようで、少なくともマイクロソフト(MSFT)は引け後市場で結局$282.50 +12.43(+4.60%)7:18PMとなっている。残念ながら、アルファベットの方は$2,319.71-70.41 (-2.95%)7:19 PMという状況。但し、先週発表になったIBMの決算を再確認すれば、見え方も違ってくるだろう。
米国の金利動向を確認する
株価の下落要因として頻繁に使われる「金利上昇」(FRBの姿勢を含む)という材料は、あまりにも安直に使われている気がしてならない。その議論はここでは置いておいて、次のチャートを見て頂こう。米国のイールドカーブだ。黄色い線が今朝終わった(現地26日)米国市場のものだ。実は金利は低下している。
鶏と卵だが、金利が上がるから株価が下がるのか、株価が下がるから金利が下がったのか、それは当然定かでは無い。ただひとつ言えることは、中国のロックダウン拡大や、企業決算の内容を気にして、景気の先行きに不安が増してきているとするならば、能天気にFRBも金融を引き締めるわけにはいかないだろう。中国のロックダウンによる物流のストップや消費の停滞、そしてウクライナ情勢の悪化・拡大、そしてエネルギー価格の上昇となれば、普通に考えれば景気は急ブレーキを踏む(オーバーキル)。そこでまだ金利を引き締め続ける中央銀行ならば、あまりに先行き見通しの考え方が甘かろう。
更に詳細な情報や考え方はプレミアム・レポートの方でご案内させて頂く。まずは号外レポートとして、この2枚のチャートをお見せしたかった。
用語解説
*1. インプライド・ボラティリティ:価格の変動を数値化したものであるボラティリティのうち、各種ファクターから計算されたものを指す。市場がどの程度この先の市場変動を予測して織り込んでいるかを見るのに有益な数値である。なお詳細は、別連載の「新入行員諸君!」オプション編で解説している。