投資と投機の違いを考える
10月1日には24,000円もクリアし、日経平均株価が27年振りの高値などと騒がれたのも束の間、米国10年国債の金利が3%台に乗ったという事に驚いた米国株式市場が急落すると、以来日本の株式市場もつるべ落としのように転落し、10月26日にはザラ場で21,000円さえも割り込む水準まで急落、その後も「どうしてこう毎日毎日右往左往しているのだろう。」と不思議になるほど上下に方向感定まらずに動いている。
見ていて何だかとっても不思議になります。
専門家と称する人の解説は、確かに毎日の株価変動要因をそれらしくは伝えているけれど、売る人が居て、買う人が居るから値動きするのが市場の基本。
売りたいと思う人の方が多ければ、株価は下がるし、買いたいと思う人の方が多ければ株価は上がる。本当は実に単純な話で理由は後付けな感じも否めません。
だけど、
そう毎日”売りたい”と思ったり、”買いたい”と思ったり、掌をひらひらと返す様にどうして投資方針がこうも変わるものなのだろうか?
そんなに毎日、誰かの発言やイベントで、コロコロと投資家の考え方が変わると思うのはちょっとおかしい気がしてなりません。
私に言わせれば、こんな動きは投資では無くて投機でしかありません。
投資価値を見極めて、なるたけ安く買って、長く保有して、そろそろ良い頃かなと思う時が来た段階で売る。別にウォーレン・バフェットが巨富を築いた話を持ち出すまでも無く、理屈は至極単純。
ただ投資価値の見極め方、判断の仕方、考え方は人ぞれぞれ千差万別なのは当然の事なので、だから市場の変動は多少は起こるべきだし、そのダイナミズム自体は面白い。行動経済学を使った投資理論だって、そういう視点で市場の動きを読み解こうとしています。
多分、今の株式市場にはきちんとした道標が無いんですね。それを示そうとする人も居ない。
株を買う、株主になるとは、その会社のオーナーになること。
株を買うという事は株主になる事、すなわちその企業のオーナーになる事で、株を売るという事はその企業を手放し、オーナーを辞めるということ。
一方で、株式投資はパッシブ運用の方が良いという理屈が浸透し、株式市場の話をするのに何でもかんでもマクロの話から決着しようと解決を試みています。殆どの場合、その企業の株主になるんだ、もう辞めるんだという視点が入ってきていないように思えてなりません。
株価指数があって、個別株があるのか、逆に個別株があって、その集合体として株価指数があるのかってことなんですが、今は後者の見方は忘れられてしまっている感じがしてなりません。
「こんな素晴らしい商品やサービスを提供している企業のオーナーになりたい」
「こんな優れた技術力の誇る会社を所有したい」
という話からの視点は忘れ去られてしまったように見えます。
だからこそ、日々のマクロの話に一喜一憂して右往左往してしまう。
どっしりと腰を据えて「当面は、この会社の株主で居るんだ」という長期投資の視点を持った投資家の方が、結果として投資収益はあがって居ます。これは統計でも証明されています。
本来はそういう魅力を伝えるのは個別株の証券アナリストの仕事だった筈なんだけど、個別株のアナリストの置かれている状況は、昨今職業ポジション的にかなり厳しいというか、風前の灯火みたいな位置づけにされてしまって、エコノミストとか、ストラテジストとか、全体の話をする人だけが目立ってしまっているのがひとつの原因かもしれません。本当は株式投資をする上では、一番重要な情報発信者であるべき人達なんですが・・。
株価は企業収益の鏡。そしてその未来予測。
要人の発言や政治の問題もある程度は影響はするけれど、本質的にはもっとビジネスモデルの話が未来予測のカギになる筈。
ならばどうすべきか。やはり株式投資家は、基本に立ち返って、その企業の何が魅力で所有したいのかという事をきっちりと見極めて、じっくりとオーナーであり続ける覚悟で株を買うべきなのでしょう。
iPhoneを初めて手にした時、
その魅力に憑りつかれて「こんな素敵なものを作る会社の株主になりたい」
と思ってアップルの株を買った人ならば、最近の足元の株価の下落なんて殆ど気にならないほど利益が出ている筈。
iPhoneが日本で初めて発売されたのはiPhone3Gからですが、2008年7月11日の事なので、まだたったか10年しか経っていません。その頃のアップルの株価は、株式分割などを調整して今の株価に換算すると約24ドルです。
米国で初代iPhoneが発売された2007年6月29日の株価は約18ドル、今の大体10分の一でしかありません。2018年11月26日現在、アップルの株価は172.29ドルですから。