株の空売り、信用の売り建て(ショート)は専門家でも難しい

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株式投資は「君子危うきに力寄らず」が原則

日産自動車のゴーン会長逮捕の報道に驚いた市場関係者は多い筈です。

これ以前にも、このところの日本企業の不祥事は枚挙に暇が無いほどで「何が今、日本企業に起こっているのか?」というテーマでいくつもの原稿が書けてしまう程だと思っています。

そしてよく相談されることが「ここでこの株をショート(売建て)したら儲かるんじゃないだろうか?」という内容です。

因みに、信用取引や借株制度を使って、実際には持っていない株を空売りして、株価の値下がりで利益を得ようとする方法を「ショート」と言い、逆に買い立てること(単純な買いを含むこともある)を「ロング」と言います。

実際、今回の件でも多くの人から同様な相談を受けました。

私の答えは「君子危うきに近寄らずじゃないですかね」というのが、普通の個人投資家の方への場合のアドバイスになります。

実は株をショートすることで利益を出すのって、ベテランのファンドマネージャーでもそう簡単な話では無いからです。

今持っている株を「こりゃあ一度売っておいた方が良いですかね?」というのとは似て非なることだからです。

根源的価値の毀損度合いを測るのは難しい

株は仮想通貨や為替取引と違って、根源的な価値があるもので、企業の所有権の売買ですから、その不祥事によって、当該企業の根源的な価値がどれだけ毀損するのかということが適切に判断出来なければ、暗闇で的に向かってボールを投げるのと大して違わないリスクがあると言って良いと思います。

勿論、どなたかインサイダー情報を知っていて、不祥事が発表される前にショート出来るというのならば別ですが、その場合は仮にその時は多少の利益を得られたとしても、必ず証券取引等監視委員会からインサイダー取引の罪で逮捕されることになってしまいます。つまり普通の人は、不祥事が発表されてからしかショートと言うアクションを取ることは出来ません。

通常、不祥事が発表されたら、その程度にもよりますが、その直後の取引開始から当該企業の株価はつるべ落としのように値下がりします。寄付き開始から値が付かないままにストップ安売り気配で終わることだってよくあります。

つまりショートしようにも、参加する機会もない場合が多いです。ただ、チャート上には大きく値下がりした事実だけは記録されますから、そういう過去の例を見て、多くの人が「ここにチャンスがあるんじゃないか」と思ってしまうのも当然なのかも知れません。

しかし株の売買が「根源的な価値がある企業の所有権」の売買である以上、現在の株価が表すものは「企業の根源的価値+将来の期待収益の和」であり、当該不祥事がその価値をどれだけ毀損するかが定かでない以上、当面は思惑のみで売られたり、買い戻されたりするだけなんです。

そこは正に鉄火場、勝負師たちだけがしのぎを削る戦場

ファンドマネージャーの世界でも、「ショート(空売り)が上手」というのは、それだけでもヘッドハンティングの対象になります。ヘッジファンドからは引く手あまたです。つまりそれだけ上手な人が居ないという意味です。

それはそもそも値上がりしそうな株を探すことから誰もがスタートしているからだと思います。「このビジネスモデル、この馬鹿経営者では、きっと赤字続きになる筈だ」と読み切れるには、相当にひねくれた性格が必要です。だから多くのヘッジファンドが、どうしても「買い持ち」(専門用語でネットロング)の場合が多いですから。

それでも「挑んでみたい!」という人を無理に引き留めはしませんが、穏やかに株式投資で利益を上げたいと考える普通の投資家の方に、私はお薦めはしません。

生兵法は大怪我の基って言いますからね。

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ファンドガレージ 大島和隆

Fund Garageへようこそ。主宰の大島和隆です。投資で納得がいく成果を得る最良の方法は、自分自身である程度「中身の評価」や「モノの良し悪し」を判断が出来るところから始めることです。その為にも、まず身近なところから始めましょう。投資で勝つには「急がば回れ」です。Fund Garageはその為に、私の経験に基づいて、ご自身の知見の活かし方などもお伝えしていきます。