世界の新型コロナウイルス感染動向・国別データの分析(2021年8月21日付)

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数値で把握する世界の新型コロナウイルス感染動向(2021年8月21日付)

新型コロナウイルスの感染拡大は引き続き世界的な頭痛の種であり、その動向に資本市場も一喜一憂している。だが、ここで注意をしなければならないのは、その立場立場によって状況評価も異なり、考え方も違えば、コメントする内容も違うということだ。投資家として何が一番危険な状態かと言えば、徒に不安を煽り立てるもの(メディアしかり、専門家と称する人のコメントしかり、ネットに溢れる情報しかり)に「洗脳」されてしまうことだろう。「専門家」と呼ばれる医療関係者たちの間でさえ、見方も、考え方も全く異なることが多い現在、何を頼りにすべきか考えると、それはやはり「数字」でしかない。

悲しいことに、中にはその数値すらも集計方法などを巡って信憑性を疑ってしまう人もいるが、そこまで疑心暗鬼になってしまっては、逆に建設的な話は何も出来ないし、信頼おけるソースを探す程度の手間は掛けても損はしない。新型コロナウイルスの感染拡大状況については世界中が最も共通して信頼して使用しているデータがジョンズホプキンス大学のデータだ。多少集計時間の問題などで誤差が生じることもあるが、全世界を同じフォーマットで集計しているという点では統一されたデータベースとして利用可能と言えるし、既に長い実績がある。何より数値自体は嘘はつかない。あと問題なのは、それを評価する人の考え方だけだ。

全世界の状況(2021年8月21日付)

下記は全世界の感染者数の動向だ。従来集計してお見せしていたものとの大きな違いはDailyベースではなく、Weeklyベースに変わったところ。ただ充分にそのトレンドはこのチャートから把握することが出来る。現在、(恐らくデルタ変異株によって)感染者数の再拡大が起きているのは事実のようだ。

下記のチャートは全世界の死亡者数の推移を表している。感染者数の増加傾向値に比べると、ピークの高さは右肩下がりになっているようにも見える。ワクチン普及の効果と見ることが出来そうだ。また現在感染者数が増加しているのが、ワクチン未接種の人がデルタ変異株に感染し、そして重症化しているという話とこれは一致すると言える。

米国の状況(2021年8月21日付)

下記は米国の状況である。感染者数は明確に再び増加傾向にある。これが最近の米国市場に若干混乱が見える所以であり、3回目のブースター接種も始めるきっかけになったようだ。

 

次がその米国の死亡者数の推移だ。米疾病対策センター(CDC)が6日に発表した研究結果によれば、新型コロナウイルスワクチンの未接種者が再感染するリスクは接種完了者の2倍以上だそうだが、感染者数が増えても死亡者数の増加傾向は穏やかである点は、この研究成果に整合する。間違いなく、今年の初めなどとは状況は異なるように見える。

英国の状況(2021年8月21日付)

下記が英国の状況である。英国はいち早くすべての規制を解除した。それはワクチン接種が進んだからだが、新規の感染者数の動向は下記の通りだ。7月に入りデルタ変異株で増えたのは事実だが、既に頭打ちになった感じにも見える。

併せてその死亡者数の推移がこれ。死亡者数の推移は明らかに底這っている。新規感染者数が増えたこともあり、多少は増加しているのは確かだが、新規感染者数の増加とはやはり明らかに状況は違う。

 

日本の状況(2021年8月21日付)

さてお待ちかねの日本の状況である。まずは新規感染者数の推移から。期待に違わず、チャートの形状だけ見ると「感染急拡大」とか、「感染爆発」と言うことが出来るが、問題は縦軸(Y軸)のスケール(目盛り)の振り方だ。前掲の全世界、米国、英国と比べてみて欲しい。縦軸(Y軸)の最大値は、全世界から順番に、6M、2M、500Kと続いて、日本は150Kに過ぎない。日本の人口は英国のほぼ2倍、米国のほぼ2.6分の1に過ぎない。だがそのY軸目盛は英国に比べても3分の1以下だ。

ならば死亡者数の推移を見てみよう。

ワクチン接種の普及と共に、間違いなく亡くなる人の数は減少している。急増する新規感染者数の推移とは正反対の動きをしている。更に、新規感染者数のチャート同じように、Y軸の最大値を全世界から順にみていくと、120K、25K、10Kときて、日本は1k、つまり僅かに1,000人に過ぎない。

結 論

以前からお伝えしているように、日本は人口が1億3千万人もいる国であるにも関わらず、少なくともその感染者数も死亡者数も世界中や世界各国の状況と比べると桁違いで少ないことは事実である。ならば何故そんなにヒステリックに騒ぐ状況になっているかと言えば、恐らく「国民性」が一番要因としては大きいだろう。そして現在、そのヒステリックに騒ぐ状態の根拠となっているのが、「医療体制の脆弱性」だ。これだけの人口が居る経済大国(落ちぶれても世界第3位のGDPを誇るのは事実だ)で、僅か2,000人未満の重症者数で医療崩壊が起き、悲惨とも言える悲劇が起きたりしているのは事実だ。

ただそれとは別に、季節性のインフルエンザでも、単なる冬の流感でも、残念ながら亡くなる人はゼロでは無いことは忘れてはならない。敢えて暴言を許して貰えば、単なる食あたりでさえ、亡くなる人は居る。つまりゼロリスクの追求は無理なのだ。インフルエンザの予防接種をしても、タイプが違えば感染するし、事実、私は過去ずっと毎年インフルエンザの予防接種はしているが、酷い年はちゃんと予防接種したにもかかわらずA型とB型と両方罹患したことさえある。だからワクチン接種をしても完璧にゼロリスクを得ることは出来ないと断言も出来る。そして80歳を超える高齢者になれば、たとえ普段は元気だったとしても、肺炎になれば命のリスクが高まるのも悲しかな事実でもある。「人生100年」というのは、政治が作り出した妄想のひとつなのかも知れない。

日本国内に関しては、早く新型コロナウイルスの話題が政治利用と視聴率稼ぎに使われずに冷静に対応する材料となって欲しいものだ。無責任なワイドショー(その多くの語り部は専門家でも何でもない)に洗脳されてはいけない。ネット上の情報にしても、株式関連の掲示板に「買いかた」と「売りかた」がそれぞれの立場で煽りを書くように、色んな立場のコメントがある。だから投資家は冷静に数値にこそ判断基準を求めるべきだろう。因みにこの数日、米国金利は殆ど微動だに動いていない。

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