はじめに
水曜日に更新した「お客様を知る①」はお楽しみいただけたでしょうか?
今回も引き続き「お客様を知る」をテーマとした記事を投稿していきます。リスクマネージメントの考え方についての内容となっています。是非ご覧ください。
また、ここまでの内容をお読みいただいてご意見やご質問もあると思います。「正直、ここが全然わからん。」「もっとここを詳しく知りたい。」というご意見も、勿論大歓迎です。(ご意見頂ければ、編集部から主宰に直談判します。)
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では、本文をどうぞ。
前回に続いて「リスク許容度」の話。
「リスク許容度」は十人十色
新入行員の皆さんはまだゴルフをしたことが無いかもしれないが、想像して読んでみてほしい。
生業として20年以上もファンドマネージャーをしてきた経験がある私には、ある癖がある。所詮遊び、業務外であるゴルフの時ぐらい、まず間違いなく1打目でグリーンを狙える方法を志向するのだ。つまりリスクを取る。だが残念ながら、私には力むとスライス(右に流れる)が出易いという問題がある。。
なので予想出来る結果は、
「上手くいけば1打でグリーンを捉えられる。外しても右に流れるので2打目で修正が出来る。」
というもの。なのでまず間違いなく一番飛距離の出るドライバーを振り回す。つまり「ハイリスク−ハイリターン」だ。
勿論、想定通りグリーンをピタッと捉えることも稀にはある。しかし実は多くの場合、力み過ぎてスライスにさえならない。逆に左の池にポッチャンとボールが落ちたりする。私は何度かに一度味わえる1打目の成功の快感を味わいたいがため、キャディさんなどのアドバイスも聞かずに大きなリスクを取るタイプである。
一方、私の父親は慎重に刻んでスコアメイクにいそしむタイプであった。でも私は、気持ち良くかっ飛ばすことを狙ったんだから仕方ないと思っている。逆に父親は、そんな瞬間の刹那的な快楽より、トータルなスコアメイクの為に、沈着冷静にゲームを進めていた。二人のリスクマネージメントの発想は全く違うのだ。
「リスク許容度」って無理がある変な言葉だと思う
「リスク許容度」の話をするのに、ゴルフのリスクマネージメントの仕方を例に能書きを綴ってみた。でも本当のところは、「リスク許容度」って日本語はかなり無理があるとかねがね思っている。何故って、もともと意味するところは、期待収益がプラス方向でも、マイナス方向でも、期待している値から「どこまでの乖離なら
耐えられるか(許されるか)」という意味だから。
たぶん、プラスにブレる分にはどれだけ多くても儲けが増えている話だから、誰も文句は言わない。許すどころか寧ろ歓迎される。逆にマイナス方向、つまり損をする場合だと、何をもって「許せる範囲」とするか、非常に微妙だ。だからちょっと一般の人には無理がある設定だと思う。だいたいボラティリティだなんだと講釈をぶってみても、心の底から腑に落ちる人は金融業界の一部の人だけだろう。
或いは、有り余る余裕資金で、増えようが減ろうが痛くも痒くもないというのなら違うかもしれない。だが、普通はプライベートバンカーが担当しているような富裕層のお客様でも、マイナス側に振れたまま終わったら、なかなか平常心ではいられない。事実、今までに何度も「こんな結果になるとは聞いていない」というクレーム処理をさせられた。
金融業界の常識は、一般の人々には通じない
「高い期待収益を狙うならば、多少の損失は仕方ないと思う。」(Yes or No)などという質問をぶつけられたとしよう。心の底から「目標が大きいのだから、多少損失が出る可能性があっても仕方ないよね」とYesに〇を付けられる人はどの程度いるのだろうかと考えると、本当は殆どいない気がする。その覚悟は出来たとしても、結果はプラスであって欲しいというのが人情というものだ。損をするために投資をする人はそもそも居ない。
ただそれが投資理論の世界では極々当たり前の話である。そして「期待リターンとリスクはトレードオフ」とか、「リスク(Risk)-リウォード(Reward)」なんて大人の常識!みたいな話になっている。だから、お客様も渋々納得されているというのが本当のところだろう。
だからこそ、リスク商品をセールスする上では、色々な説明方法をポケットに入れて、可能な限りお客様に意味が通じるように練習しておかなければならない。そして可能な限り「期待リターンとリスク」がバランスの取れた商品をセールスすることが重要だ。これを心掛けないとお客様は2度目は戻って来ない。
生兵法は大怪我の基
最初はいろんな知識を頭に詰め込まないとならないのが金融マンの辛いところ。ただここで敢えて言っておくとすれば、生兵法は大怪我の基である。取り分け、投資理論周りのことについてはそれが強い。この先、分散投資の話なども綴るつもりでいるが、アセットアロケーション理論についてなどがその典型例、正しい理解が無ければ、これほど危険なものはない。
リスクの概念についても同様だ。本当は実際の商品の過去データなどを使って、自らエクセルで検算してみて欲しいと思うくらいだ。電卓を使っても勿論計算可能だが、エクセルを使えば朝飯前の筈。配属されたら、自社や自店でお薦めの投資信託などの基準価格の過去データをダウンロードして、自分で計算してみることをお勧めする。基準価額推移のチャートと比較してみれば、きっとお客様へのセールスにも説得力が増す筈だ。
今回はここまでとしよう。次回もリスク許容度について語ろうと思う。
おわりに
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(編集:Fund Garage 編集部)