今朝の日経朝刊(8/23)早読み。このところ自動車に関してEV(電気自動車)化をメインストリームとするような報道が各所で目立つが、今日の朝刊もしかり。ただあまり安易に考えて投資をすると痛い目に合うかもしれない。

1. 東芝、WDと協議入り

危惧していた事態が表面化しつつある。記事を表面だけ読めば「ああ、やっと東芝も半導体事業を売却出来て債務超過から脱出出来るのか」と見てしまうが、ポイントは何故この段階で係争中のWD側が協議の場に着こうと思ったかだ。それは記事中にもある「WDも東芝と協業している半導体事業に影響が出始めており、両社とも和解の道を探る」というのがポイントの筈だ。ゴタゴタしているうちに、研究開発や次世代向けの設備投資の判断に遅れが生じてきて競争力を失いそうになっているからという可能性が高い。マーケット総合1面に半導体テスターメーカーのアドバンテストの株価が冴えないという記事がある。東京エレクトロンなどの株価は上昇する中で、後工程のテスターの業況が悪い理由、それは人員不足や生産能力の限界で受注を捌き切れない現状がある。これと前述のWDの焦りの原因を合わせて考えると、東芝の思惑通りの金額で半導体事業が売却出来るのか、大いに疑問が残る。安心してみるにはまだ早いと思われる。

2. EVシフト株価明暗の記事の挿絵は参考になる筈

記事は電気自動車(EV)化の流れで、流れに乗れた企業とそうでない企業の株価が明暗を分けているというものだが、少なくとも挿絵で使われているパーツと関連企業の分類は、今後の個別銘柄選択に参考になる人は多いであろう。ただ問題は、本当にEV化の流れが奔流となるかということである。確かに英仏が内燃機関エンジン搭載の自動車の販売を2040年から中止するという報道があるので、EV化が本命という流れにはなっているが、まず第一の問題はインフラの整備が本当に間に合うのかという問題だ。水素を燃料とするFCEVが本命と言われつつも前に出ないのは、水素ステーションの整備問題だ。家庭用電源で充電出来るという見方も出来るEVではあるが、本当にそれで間に合うのか?というのは大いに疑問が残る。トヨタがマツダと組んだのも、確かにEVで協働するためという事情はあると思われるが、HV(ハイブリッド)よりもEVという流れがメインストリームなるかどうかは、株価が既に大きく反応している銘柄もあるだけに、投資を考える上では注意を要する話と見るべきと考える。

3. EV化という流れは、やや騒がれ過ぎな気がしている

アジアBizのページのおいても「フォード、中国でEV合弁」と報じられているが、EVという点については、やや期待が先行し過ぎという気がしてならない。何故なら、EVはどこかで発電して充電しないとならない。フランスのように原子力発電が主力のお国柄の場合、EV化は温暖化対策の一部に貢献すると思われるが、英国にしても、中国にしても、当然日本にしても、火力発電が主力で温暖化ガスを排出し続けている以上、車の製造段階からの温暖化ガス排出量の減少という視点でとらえると、必ずしも理想的な解決策と考えるにはまだ早い。米国が欧州で主力だったディーゼル・エンジンの流れにならずに、ひとまずはHVをメインストリームとしたのは、これらインフラの問題を含めた大きな問題があったからだ。EVがある程度の勢いで成長するのは疑いないが、そこは少し冷静な見方をした方が良いと思われる。

4. ふたつの面白い記事

そんな見方しか出来ない記事の中で、頭の片隅に置いておきたいと思った面白い記事が二つあった。ひとつ目は国際2にある「米国「家が足りない」」である。簡単に要約してしまうと、住宅建設の労働者が足りなくて、供給が需要に追い付かずに「家が足りない」という事態を招いているという内容だ。トランプ大統領が、公約通りに移民を制限していくとなると、この流れはますます加速する筈。さて、トランプさん、移民政策次の一手は?という見方をして読むことが出来る面白い内容だ。
もうひとつが企業2にある「水素発電にアンモニア」という記事である。前述したようにEV化の流れの最大の障壁は、どこでどうやって発電するのか?ということである。横に小さく「燃料電池車普及進まず」という見出しもある通り、水素は予てから理想のエネルギーと言われているが、問題はどうやって作るか、どうやって運搬するか、どうやって蓄積するか、である。この問題が解決すれば、EV化の流れは一気に加速する可能性を秘めるが、窒素と水素からアンモニアをひとまず作って利用するというのは、原価面が改善出来るとすれば、期待の持てるソリューションとなる可能性がある。

5. 当面は原油価格と自動車メーカーの開発状況に注目か

まず本当にEVが主流になるとするならば、ガソリン需要の大幅な減少により、原油価格に大きく影響を与える筈だ。だが、昨日のWTIは47.64ドル(+0.27ドル)、ブレントは51.87ドル(+0.21ドル)と僅かながらもまだ値上がりしている。すなわち、ガソリン需要が大きく減少するほどに影響はないと読んでいる可能性がある。勿論、商品先物の目線は極めて近視眼であることは事実だが。
また、少なくとも私の耳には、自動車メーカーがこぞってEVを主力カテゴリーと考えて車両開発に全力投球するという話は届いていない。夢がある話には違いないが、EV関連投資には半身で構えて掛かる方が、火傷は負っても小さく済む可能性が高い。次世代エネルギーの話は、そうそう簡単な話では無いことは、皆さんもご承知の通りだ。