今朝(7/11)の日経新聞朝刊で言えば「金利差拡大、円安一段と 114円台、2カ月ぶり水準」という記事。私たち市場関係者と言われるタイプの職種の人間には金利差と為替の方向性については常識なのかも知れない。

ただ大学でも経済に関係ない法律や文学を学び、特段そういう事に興味を持ったことが無い人達にとっては「円高って、どっちだっけ?」という事は良くある話。つまり金融マンの常識は一般人の非常識あることが多いからだ。にも拘わらず、銀行員がしたり顔で「円が対他通貨で価値を上げることなので、従来100円で買えていたものが85円で買えること、これが円高です」などと説明されても??であり、 寧ろ嘘でも逆さに「昨日まで85円だったのが100円に値上がりしたので円高です」という方が、余程お客様には本当はスッキリ受け止められたりする。まぁ、これは慣れの問題ともいえるだが。

その意味では、私自身も銀行に入行してから円高と円安の区別の仕方について、案外長いこと苦労をした経験の持ち主。ましてやそれを金利差の関係で説明してくださいなどと言われると余計に苦労した経験がある。そんな時に、当時の「為替資金部」の先輩が研修で言われた説明が非常に分かり易かったのを覚えている。

それがこの「水は低い方に流れ、逆にお金は金利の高い方に流れる」というもの。「お金って欲張りなんです。だから金利の高い方に流れて行ってしまうんです。それで円からドルに行こうとすると、円を売って、ドルを買わないとなりません。だから円が安くなって、ドルが高くなるんです」と付け加えてお金の流れを説明してくれた。

更に付け加えて「円高とか、円安とか簡単に行ってしまいますが、本当は“○○通貨に対して”円高とか円安という枕詞が入ります。要は相対価値の話なので、価格の絶対値が低くなった方が高くて、高くなった方が安いんです。面倒臭いですよね」と教えてくれました。フムフム、分かり易い。

今回、米国を中心として欧米の中央銀行が異例な事態として継続してきた金融緩和状態も、経済の正常化に向けて漸く緩和縮小の流れが定着してきたように見えてきた。先週末発表された米国の雇用統計も、市場予想を上回る好結果であったので、より中央銀行は金融緩和縮小の方へ舵を切り易くなったというのが欧米の状況に対する認識。

一方、日本については、日銀が頑張って金融緩和を続けているものの、なかなかデフレ状態を抜け出て、目標とするインフレ率2%などの目標には程遠い状況が続く。ましてや経済の立て直しに尽力してきた安倍政権が、発足後最低の支持率を世論調査が伝え始めた以上、日本経済の回復軌道については安定感をもって見ていられなくなるかもしれない。故に金融緩和を解除縮小していくのは当分無理だろう、というのが市場の見立てだ。

そうすると欲張りなお金はどう動くかと言えば、ここから金利は据え置かれそうな円から、金利が上がりそうなドルやユーロに流れるので、足元ではそれを見透かして114円台と2か月ぶりの円安水準に戻ったという話。それで永遠にお金がその方向に流れ続けるならば、円安は114円などでは止まらず、116円、120円となるのではないか?という疑問がわくだろうと思うが、それはある適当な均衡点で一旦は止まる。そして更に金利差が広がるようだと円は売られ、ひょっとすると日銀も宗旨替えして金融緩和縮小してくるかもなどという(当面は有り得そうにないが)ことにでもなれば、一旦は円安は止まって、円高に流れたりする。その辺りの均衡点の見分け方なんて言うのが、なかなか難しいのは事実だ。

さて、今回のトレンドはどこまで行くんでしょうかね?安倍政権の安定感が損なわれると、政治の安定感という事から、有事の時の安全な通貨として買われることもあった性格までが損なわれ円高要因をもうひとつ失う事になる。3本の矢も中途半端な状態で終わるかも知れない。となると、日銀が金融緩和縮小を開始できるタイミングは、まだまだ先という事で、気の早い人は年後半に118円などと言い出している。

「円安=>輸出型経済の日本景気にプラス」というステレオタイプの発想から、輸出関連株(と言われる銘柄)が買われて、日経平均は20,000円台を回復したという流れなのだが、円安になれば原油などの素材の輸入価格が上がるため、原料高が景気にマイナスに作用する可能性がある。それに、そもそも輸出関連株と思われている銘柄の多くは、既に為替変動の企業収益のへの影響を極小化する方法を身に着けていたりするため、案外、円安メリットを受けなかったりする。となると、円安への目算は外れることになる。

また輸入価格が上昇すると、これが物価上昇をもたらす結果となり、日銀がデフレ脱却インフレへという発想で行っている金融緩和は終了させることが出来るようになるという流れも、いずれはやってくる。そして円高に揺り戻しが起こる可能性が起きる。

さてさて、どこで為替は均衡点を迎えるのでしょうかね?