アップル株も、関連部品メーカーの株も、期待が持てる内容

米アップル は9月12日にカリフォルニア州クパティーノの新本社で新製品発表会を開き、新型「iPhoneX」並びに「iPhone8 & iPhone8 plus」、そして腕時計型端末「アップルウオッチ」、テレビ向けストリーミング端末「アップルTV」の最新版を発表した。価格設定が高いことが気にならなくは無いが、固定客を一定以上もつiPhoneなら、それは杞憂に終わるだろう。

1. まず発表会の会場に注目

今回の発表会は同社が約50億ドル(約5500億円)をかけて建設した新本社「アップルパーク」で行われた。発表会そのものの会場は円形でガラス壁が特徴的な「スティーブ・ジョブズ・シアター」(1000人収容)となった。このシアターは宇宙船を模したアップルの新社屋を見下ろす丘の上にある。詳細は同社のWebサイトから入りiPhoneXの先に行くと観ることが出来る基調講演(Keynote)のビデオ(https://www.apple.com/apple-events/september-2017/)から見ることが出来るが、柱の無い全面ガラス張り、屋根には太陽光パネルを設置したアップルらしい建物である。これはアップルの固定ファン層にはそのデザインの先進線を訴求する上で充分なものを持っていると思われる。

2. iPhoneXは前面全てがスクリーンでホームボタンが消えた

冒頭の写真を見て頂きたいが、デザインというのは好き嫌いの影響が大きな要素となるが、今回のiPhoneXのデザイン自体は、恐らく批判的なコメントは少ないものとなるだろう。実に先進的な印象を受ける。物理的にホームボタンを失くすことが出来たのは、従来の指紋認証から、顔認証システム「フェイスID」に進化したことによる。これには画面上部に複数のカメラを設置し、ユーザーの顔を3Dスキャンして捉える方法を取っているが、髪型やメガネを着けている時や外している時なども認識することが出来る。人間の脳の神経回路の仕組みを模した「ニューラルネットワーク」によってユーザーの顔をモデル化し、時間の経過とともに物理的な変化に適応していくからと説明されている。実は年齢と共に指紋認証というはなかなか作動しない時が出て来る(私がそう)のだが、顔認識ならばその点は問題ない。第一、いちいち指を触れないでも、覗けばOKというのは、非常に手軽になる。他人が使った場合、フェイスIDでロックを解除できる確率は100万分の1、これに対して指紋認証機能「Touch(タッチ)ID」は解除できる確率が5万分の1だという。Apple PayやタッチIDと互換性のある認証にも適応出来るので、かなり便利になると思われる。

3. iPhoneXはワイヤレス充電に対応し、バッテリーも増強された

iPhone 8とiPhone 8 Plusに搭載されたバッテリーの容量はこれまでのモデルとほぼ同様のものという一方で、iPhone XのバッテリーはiPhone 7よりも2時間長く持つものが搭載されたという。半年、一年、2年と経つうちの容量減衰については発表されていないが、スタート時点で現行機種よりも2時間長くなったということは評価出来る。このバッテリーには村田製作所がソニーから買収したリチウムイオンバッテリーが使われていると推察するが、確定ではない。ただ先般Samsungのギャラクシーノート7の発火事件を受けて(TDK製電池)、リチウムイオン電池のエネルギー密度拡大には黄信号が点り掛けていたが、同社のそれは電解液ではなくゲル状電解質を使い、その安定性を高めている。また元々ソニーの電池は四半世紀も前からは子会社ソニーケミカルという会社でリチウムイオン電池の製造を始め、これがVAIO505の登場に繋がったと以前綴ったことがあるが、生産能力に対する信頼度がソニーよりも村田製作所の方がアップルの評価は高いこともその可能性を高めていると考える。また今回発表されたすべての新型iPhoneは、Qi(チー)規格のワイヤレス充電にも対応していることは注目に値する。

4. 端末のサイズはiPhoneXでやや大きくなった

iPhone 8と「iPhone 8 Plus」はそれぞれ従来通り4.7インチのディスプレイと5.5インチのディスプレイを持ち、サイズはほぼ同じ大きさ。iPhone Xのディスプレイは大型の5.8インチだが、全面にディスプレイが展開しているため、端末そのもののサイズは通常版のiPhoneよりも少し大きい程度に収まっている。ただし端末の重さはかなり増している。iPhone XのディスプレイはOLED(有機発光ダイオード)技術となる。解像度も増して2436 x 1125ピクセル、ピクセル密度も458 ppi(インチあたりピクセル数)となるが、iPhone 8 PlusのLCDはこれまでのモデルのPlus版と同様、1920 x 1080ピクセルで401 ppiだ。

5. 問題は価格設定

死角が無いわけではない。iPhone Xは最も安い64ギガバイト(GB)のモデルで999ドル(約11万円)、256GBモデルだと価格は1,149(約13万円)ドルとかなり高額である。今朝(9/14)の日経新聞などでは、日本でも各キャリアが販売方法を工夫して買い易くする方法を提示しているが、流石に過去最高の値段となる256GBモデルは結構いい値段だ。これが吉と出るか、凶と出るかは発売が開始されてみないと分からない。ただApple Pay登場以降、Androidに固執する必要がなくなったことを考えれば、私自身も256GBモデルを買ってみたいと思っている。