今朝のマーケット情報
日経平均22,892.69円-46.49円(12/26) ドル/円113.17
NYダウ24,746.21 -7.85 NASDAQ総合6,936.25 -23.71

今朝の日経朝刊(12/27)早読み。テーマ型投資信託の人気テーマの一つがAI関連。自動運転などもそうだし、2040年より前にシンギュラリティが来ると言ってみたりもする。「株は値上がり値下がりが怖いから、安定した利回りのREITにしましょう」とどこかの金融関係者が言ったとか言わないとか。こういう誤解を招くような理解が生じる大きな背景は、商品を売る側も買う側も揃って「不勉強」だという事だ。汗水たらさずにお金が儲かるわけがない。それはサプリメントに頼って、ダイエットをしようと言うのと全く同じ。そういう誤解を解きたくて本も書いたが、今日の最初の二つの記事はAIというテーマと、REITにまつわる典型的な問題提起。記事を文字通りに読んで、そのまま受け取っていたら、そこからは抜け出せない。

1. 【1面】AIの利益、どう配分 開発企業とデータ提供元 経産省、指針づくり

本来ならば、AI関連ファンドにはかなりネガティブな話。つまりAIの技術的な期待値にのみ注目して騒いできたが、肝心な法整備の面が追い付いていないことを記事は明言している。そもそも大学などの研究機関ではこれはとっくに当たり前の話。AIを使った完全自動運転の機械が誤作動を起こして人身事故になった場合、それはAIの利用者の責めなのか、AIを開発したものの責めなのか、法は解釈を決めていない。記事にもビッグデータ解析で自己成長したAIの横展用が可能かどうかという話題があるが、本来自己成長したAIはユニークな存在であるから、AIそのものの製作元にも、単にビッグデータを提供した先にも、無条件にAIの権利が及ぶとは思えない。こうした問題を整理しないと、AIを実社会で使える範囲は限定されてくるが、まだその解決の糸口は見えていない。技術開発の速度もさることながら、AIに関しては周辺整備も重要な課題なので、株式市場のそれのように簡単に浮かれることは出来ない筈。

2. 【投資情報2】REIT 試練を越えて(上)金融庁・日銀に翻弄 下げ突出、今年の国内相場

記事では今年のREIT相場が約1割安と低迷した主な理由は、毎月分配型投信からの売りが重荷になったと分析しているが、それはやや笑止。また株で言うならPBRに相当するREITの「NAV倍率」が1倍を割込んだまま放置されたことを需給の悪さの証左としているが、これもPBR1倍割れを見てきた株式市場関係者の通常感覚から見ても笑止。まったく金融庁のそれが影響しなかったということは無いだろうが、REITとは何か、その構造をよく考え、日本のファンダメンタルズに照らしてその将来性を考えたら、自ずと冷静な多くの答えが出て来るもの。REITがあたかも単なる利回り商品であるかの如き説明をしてきたREIT業界にもその責任の一端はあると思われるが、そろそろ現実に目を向けた方が良いだろうと思う。ただこんなコラムが投資情報面に出るあたり、まだ現実に目を向けようとはしていないようだ。

3. 【1面】ユニクロ、アフリカ生産 アジアより労働コスト低く

ファーストリテイリング傘下のユニクロは、アフリカで初となる生産拠点をエチオピアに設ける。同国はアジアの途上国よりも安い労働コストを背景に縫製産業が育っている。2018年中にもシャツなどの試験生産を始め、低価格・高品質の製品を安定的に生産できるようになれば欧米向け輸出拠点にする方針という。それ自体は構わないし、これは何もユニクロに限ったことではない。ただ低賃金を求めてそこで産業を興せば、間違いなく今よりも豊かになる。中国が世界の生産工場と低賃金が故に言われていた時代から現代に至り、世界が直面している大きな問題は、地球温暖化に始まる環境問題と、将来の食料自給率の問題だ。「そんな先の事は考えないで良いんだ」という考え方も理解は出来るが、大きな世界共通のグランドビジョンが無い中で、企業が世界中を駆け巡ることに、一抹の不安を抱かなくもない。ただそれが表面化する時、既に私は土に還っているだろうが。

4. 【総合1】薄氷の東芝再建(2)「相当の株主還元を」

昔「手形の裏書欄に個人名や怪しげな消費者金融の名前が入ってきたら注意しろよ」と融資担当の先輩に教わった。現役の経営者の多くは窮地を経験し、最悪の泥沼を味わったことのある人は実は少ない。一度そうなると泥沼から二度と這い上がってこれないことが多いからだ。資金繰りに窮すると、通常のファイナンス方法から、段々手段が変わってきて、最後は怪しげな資金に手を出してしまう。その間に毒でも延命措置をされた間に、本当のダメージはより大きく巣を拡げている。もっと手前で降参していれば、担保の自宅までは失わずに済んだのに、という話はよくある話だ。あと先考えずに「物言う株主」と評判高いファンドなどの資金を取り込んでしまった東芝に、これから始まるドラマは予想がつかない。本ブログにも6千億円の増資の話が報じられた時には同じようなことを一度書いている。綱川社長は「他に選択肢は無かった」と正当化し、「一体何を要求してくるのかしらみつぶしに調べろ」と檄を飛ばしているという。答えはきっと「○○の毛までむしられる」のだと思う。ブローキングをする投資銀行には二つの顔がある。常にその両方が恵比寿顔であるとは限らない。東芝がその怖さを知るのはこれからかも知れない。

5. 【総合1】企業間物流も値上げ 福山通運10%/西濃2% 賃上げ原資に

トラック運転手不足を受けた値上げが企業間物流にも広がっている。福山通運は2018年に法人向け運賃の16年度比1割引き上げを目指し、西濃運輸は17年度下期に前年同期比約2%の値上げを見込む。値上げ分で運転手の待遇を改善し、人材確保につなげる。荷主企業は物流費の高騰を最終製品の価格に転嫁しており、一般消費者にも影響が出そうだという話だが、どうしてこの業界はこうなるまでトラック運転手の不足を問題視してこなかったのだろうか?更に言えば、監督官庁は何をしていたのか?トラック輸送が安価で便利だという事で、気が付くとJR貨物は大きく一旦衰退した。鉄道輸送よりも効率的だという話だった。通常ならばそうした成長産業に人材は向かうのではないか?そうならずに、ブラック企業などと呼ばれる状況を甘受しながら何年も生き延びて来られたのは、誰かが甘い汁を吸い続け、誰かが監督責任を怠ったとしか思えない。「降参する前に報連相しろよ」とは昔からよく言うが、業界としてそれを怠ったつけが日本中に波及する。

6. 【総合2】物価「来年度0.9%上昇」 民間予測 賃上げが成否占う

民間エコノミストが試算する18年度の消費者物価指数(CPI)上昇率は0.9%が平均値。政府・日銀の2%目標に近づくには賃上げ加速がカギを握るという。黒田バズーカと浮かれていたが、単なる不発弾になる可能性の方が大きい。若しくはその効果測定を変えるべきなのでは無いのか?無理やりでもインフレ率を2%にするという意図をどうしても理解し切れない私なのだが、博識な経済学者の間ではその方が良いらしい。賃上げが反対だと言っているのではない。物価を上げる流れを作ることが反対だと言っているだけだ。もう一度、教科書を開いた方が良いのではないか?経済善政とは、如何なるものかの定義を探して。

7. 【経済】日本、生産性14位に低下 製造業15年、最低に並ぶ

上述の物価上昇の必要性は認めないが、労働生産性は引き上げないとならない。にもかかわらず日本の製造業の労働生産性が1995年以降で過去最低になったことが分かった。労働者1人あたりがどれだけ効率的に働いたかを示す数値で、日本は2015年に9万5063ドルと、5年前より1割減少。経済協力開発機構(OECD)に加盟する主要29カ国中での順位は14位となり、最低だった08年、14年と並んだ。記事では「日本を含む先進国では近年、製造業の生産工程を低コストの新興国に移す動きが加速。国内で製造業が生み出す付加価値の拡大を制約する要因になっている。生産性本部は「これが生産性の動向にも影響している」と指摘するが、甚だ恐縮ながら40年前の中学校の社会科の教科書にも既に同じことが書いてあった。そして日本はより高付加価値のものを作るのだと。あれは嘘だったのか?この分析が浅いのか?