今朝の日経朝刊(11/16)早読み。昔からメディアが株価を報道する時は、「何年振りの○○」とその希少性を講釈することが多い。高値であったり、安値であったり、或いは連騰であったり、続落であったり。まあ、その方が記事的にはインパクトがあるから面白いのだろうが、あまり気にすることは無い。特に、昨今のように投資の主たる主体が外国人投資家になってしまった事、アクティブ運用よりもパッシブ運用が注目されるようになった事などを踏まえると、市場はどうしても一方通行に成り易い。つまり順張り屋が多いという事だ。昔から逆張りするのはローカルな個人投資家と決まっている。ただ昨今では、そうしたアクティブな個人投資家層も相当に薄くなってしまった。株価の原点は企業収益動向という基本に立ち返れば、何を見て、どう判断すれば良いかは、逆に今の方が分かり易いかも知れない。

1. 【1面】日経平均、1年半ぶり6日続落 利益確定売り広がる

曰く「15日の東京株式市場で日経平均株価が6営業日連続で下落し、前日比351円安の2万2028円で取引を終えた。2016年5月6日以来約1年半ぶりの6日続落となり、この間の下げ幅は900円強に達した。上場企業の4~9月期決算発表が一巡し、当面の買い材料が出尽くした。ヘッジファンドなど海外投資家が世界で上昇率が突出していた日本株に利益確定売りを出している。」という事で、この先下げ止まるのか、そして再度上昇トレンドに戻るのかという議論が報じられている。結論から言えば、どれも尤もらしいが、どれも目新しくは無い。ひとつ言えることは、企業の収益状況の改善が続くようならば株価は基本上昇し、ここで企業収益が天井を打つなら、株価は失速するという事だ。外国人が買う買わない、テクニカルにどうこうというのは、よく分からない場合の常套句に過ぎない。仮に米法人減税が1年先送りになるのだとしても、実施されるならばそれは問題なかろう。ただ過度の楽観は禁物。普通に考えるならば、暫くは様子見、鉄火場に慌てて手を突っ込む必要は無い。

2. 【総合1】新型社債に潜むリスク 自社株買い付き

要するに「リキャップCB」のこと。どうして敢えて今日の紙面を飾ったのかは疑問が残るが、長所と短所はよく整理されていると思う。ANAHDの発行条件を調べると時間とともに転換しやすくなる設計になっていた。満期を迎える3カ月前には普通のCBに戻る。企業はゼロ金利で資金調達し、投資家は労せずして利益を得られ、証券会社は手数料を得られる。リキャップCBは多くの関係者が得する商品だが、既存の株主だけは株式価値が長期的に希薄化するリスクを背負う。最後の1行をどう捉えるかが問題だ。

3. 【総合2】1.6%成長に上向く 今年度予測 輸出・投資が支え 株高、消費に追い風

日本経済は1%程度とされる潜在成長率を上回る成長が続くとの観測が広がっている。内閣府が15日公表した7~9月期のGDPも季節調整済みの前期比増加率が年率1.4%だった。プラス成長は7四半期連続で、約16年ぶりの記録だ。これは実績に対する確かな事実。一方、民間エコノミスト10人の15日まとめた最新予測も2017年度の実質経済成長率の平均は1.6%で、16年度の1.3%から回復が上向く。これは事実ではなく、予想というか憶測。長年この業界に居て、最も胡散臭いと思っているのがエコノミストのGDP予想など。中には精緻に積み上げをされている方も多く居るが、中には飛んでもなく鉛筆舐め舐めのエイヤ!で決めて、それらしい理由付けだけをしているエコノミストも沢山いるのも事実。だから基本的には発表された事実に対して、自分の感性で延長線を敷いて考えるのが正解。今回は事実の1.4%を起点に、9月末以降、どっちに振れているかを予想すれば良い。

4. 【国際2】米年末商戦、ネットが席巻 4%増収見通しでも百貨店は減

景気拡大が続く米国で、消費の勢いを試す年末商戦が感謝祭翌日の24日、所謂「ブラック・フライデー」に始まる。全米小売業協会は販売高が前年比で最大4%増えると見込むが、消費の主戦場はネットで、百貨店の売上高は金融危機以来初めて前年を下回るとの予測もある。百貨店は強敵のアマゾンに加え、最新型のiPhoneに予算を奪われる可能性があるからというが「サイバー・マンデー」は間違いなく対前年比では今年も伸びるだろう。米国人の消費意欲が衰えているわけではなく、2017年7~9月期もGDPの約7割を占める個人消費が2.4%増と順調に拡大し、全体をけん引した。雇用情勢の改善や株高による資産効果で米国人の購買意欲は旺盛で、今年の年末商戦も売上高が前年から3.6~4%程度増える見通しだ。これは過去5年の平均(3.5%)を上回る。投資家が注目しておくべきは、リアルとネットの合計値の推移だ。チャネルの問題は殆ど関係ない。

5. 【マーケット総合2】ドル高の流れ、来年変わる?

始まったな、市場のポジショントーク、という印象なのが「米国で利上げが進むのでドル安になる」という説の流布。或る意味では風説の流布にあたるのではないかといつも思うが、何処からともなくこうした話が流れてくる。そして外国為替の専門家然とした輩が能書きを語りだす。勿論、可能性の議論をするだけなら、市場の動向など上でも下でも、どちらに対してでもそれらしいロジックは付けられる。問題は、それが当たるか外れるかだ。こういうい仕事を30年以上もしていると、自然と「誰がどこで何を言ったか」という記憶が自然と残る事が多い。世間一般には「株屋はうそつき」みたいなことを言われる場合が多いが、私に言わせれば「為替屋はもっといい加減」と思う。今からでもメジャーな為替の専門家達の見通し記録をつけておくと面白いでしょう。中には常に一貫していない日和見の人も居るので。