今回の東芝の決定は、投資家として、歓迎しない!

今朝の日経朝刊(9/21)早読み。今日の日経新聞朝刊は一面、社説を含む3頁を割いて、東芝が東芝メモリーの売却先を、長年のビジネスパートナーであるWestern Digital社ではなく、日米韓連合と呼ぶグループに決めたことを報じている。散々ダッチロールした挙句、長年のパートナーに三下り半を突き付けた形だ。その大義は債務超過状態を2年続けて上場廃止になることを阻止すること。本当にこれで良いのか?という疑問符を「株主になりたい企業に投資する」という事を投資哲学としてきた元ファンドマネージャーには消すことが出来ない。

1. 【1面】東芝、日米韓に売却決議 半導体2兆円「近日中に契約」 HOYAも出資へ
【2頁】東芝再建 ようやく一歩 半導体売却、迷走の末「日米韓」 債務超過解消見込む 他
【社説】東芝再建の迷走に終止符を打てるか

東芝は20日、半導体メモリー子会社売却に向けて、米投資会社のベインキャピタルが中心の「日米韓連合」と株式譲渡契約を結ぶことを決議したと発表した。「近日中」に契約を締結し、買収総額2兆円を手に入れる予定。これにより契約が完了すれば懸案の債務超過の解消へ前進し、3月末に全てが間に合えば、上場廃止を回避することが出来るという。しかしこれにて一件落着とは言い難い。まずWDが第三者への売却差し止めを求めて国際仲裁裁判所に仲裁を申し立てていることがひとつ目の大きなハードルとなる。また「日米韓連合」の主役は決まっていても、脇役の一部は決まっていない事、更にはSKハイニックスの出資形態について、まだ最終結論は出ていない。まだ紆余曲折があるかも知れないが、時間的な猶予は東芝には無い。銀行団は融資のコミットメントラインを9月末から年末まで延長する方向だが、独禁法の審査を含めて、3月末に全てが終了する保証は何処にもない。
社説も報じている通り、今回「綱川智社長をはじめとする経営陣のリーダーシップ不足があらわになった」わけだが、WDが矛を収めるかも知れないという楽観論が一部にあるというのには驚きを禁じ得ない。共同投資する四日市工場(三重県四日市市)が東芝単独運営だからということが理由のようだが、WDとは開発業務でも協業関係にあり、言うなればファブだけが単独オペレーションだということだ。「会議は踊る、されど進まず」のウィーン会議ではないが、産業革新機構、日本政策投資銀行、主力銀行団、当然経産省など必ずしも半導体ビジネスに明るくない関係者を交えてリーダーシップの無い会議を開いたら、それはただただ踊るだけしか無いのかも知れない。

2. 【2頁 総合1】銀行口座、即座に開設 3メガ、フィンテックで情報共有 本人確認の手間省く

金融機関が顧客情報を共有し、店頭やスマホアプリを使った金融サービスを顧客に即時に提供できるようにする。ブロックチェーン技術を生かし、利用者が一度本人確認を済ませておけば、別の銀行や証券会社との新たな取引を始めやすくなる。金融庁が新しい金融インフラとして実証実験の場を設け、まず3メガバンクが先行導入する計画と謳われているが、これがフィンテックの現実なのだろうか?
そもそもフィンテックとは、「finance(ファイナンス)」と「technology(テクノロジー)」を掛け合わせた造語でそれ以上でもそれ以下でも無い。ただフィンテックという造語を作り出したことで、物凄いことが起こるかの錯覚を与えている気がしてならない。要するに今回は「顧客情報の業界での一元管理」の手法に過ぎないのだから。これも投資家としての目線で見ると「So what?」と言いたくなるレベルの話だ。

3. 【2頁 総合1】メキシコM7.1、車産業への影響懸念 首都圏直撃、死者225人に

メキシコ中部で19日発生した大規模な地震は首都圏を直撃し死者は少なくとも計225人に達した。震源地とされる州には自動車メーカーなどが工場を構えるため、今後、サプライチェーン(供給網)の寸断などから自動車産業への影響も懸念される。嘗て台湾で大きな地震があり、半導体製造工場で露光に使うマスク(写真のネガフィルムのような役目をするもの)が大量に破損し、半導体の供給がストップ、多くのハイテク産業で混乱を生じたことがあるが、完成車の組み立てラインが無事であっても、小さな部品ひとつでも供給が止まればラインは止まらざるを得ないのが現代のサプライチェーンの恐ろしさだ。地震の被害は即座には査定し切らず、徐々に判明してくる部分もある。人命救助が第一優先事項であるが、被害の全容が明らかになるまで安心は出来ない。

4. 【11頁 アジアBiz】中国、車部品が調達難に 環境規制、GM・VW車に影響も

小さな記事ではあるが、上記メキシコ地震と同様、自動車のサプライチェーンに影響を与えるもの。中国で厳しさを増す環境規制の余波で、独部品大手シェフラーの下請け工場が中国当局の環境規制違反で操業を停止、200以上の車種に採用されているシェフラーの部品が製造できなくなると、供給先である米ゼネラル・モーターズ(GM)や独フォルクスワーゲン(VW)の生産に影響が出るという。シェフラーは18日「現時点で影響は制御可能だ」との声明を発表しているが、今後影響が出る可能性があるという。

5. 【13頁 企業総合】アマゾン、オフィス進攻 先行勢追う 法人向け通販2億点、中小開拓へ顧客対応課題

アマゾンが20日、オフィス用品など法人向け通販「アマゾンビジネス」を日本で始めた。米国では既に100万社が利用するが、国内ではアスクルなどの先行勢が居る。ただアマゾンの強みはその膨大な商品数と価格競争力。オフィス用品以外にも電動工具や自動車関連の部品まで、商品点数は最大2億点。対する国内最大手のアスクルでも法人向けの商品数は約370万点。規模が桁違いに大きい。記事では日本流の商慣習にどうアマゾンが対応出来るかなどのポイントを挙げているが、既にアマゾンの便利さを充分に享受している消費者が、結局は企業の現場での発注者である。日本に橋頭保を築いていない、例えば中国のネット通販業者が上陸するのとでは訳が違う。前期四半期決算でウォール街のアナリストの期待をいつものように裏切ったアマゾンは、第二本社を含め、やはり着々と次の手を繰り広げている。

6. 【13面 企業総合】ヤマト、ネット競売向け匿名配送を終了 今月で、荷物を抑制

昨日もヤマト運輸の経営ダッチロールについて伝えたが、今度はネットオークション(競売)向けの配送サービス「オークション宅急便」を9月30日で終了するという。働き方改革で取り組んでいる荷物の総量抑制の一環で、複雑なサービスメニューを整理し、従業員の負担を軽減することが目的とあるが、何処まで縮むつもりなのだろう。若しくは巷間言われるように、今までが余程のブラック企業であったということか。オークション宅急便とは競売サイトで売買した商品を、出品者と落札者が匿名で配送でき、落札者が荷物の中身を確認してから代金を決済する仕組みで、競売に伴うトラブルを減らせるサービスとして提供している。同社はヤフーの競売サイト向けの配送サービス「はこBOON(ブーン)」を7月に休止するなどサービスの縮小が続いている。アマゾンなど大手通販サイトの商品配送に加え、競売サイトやフリーマーケットアプリで売買される個人間取引の荷物が増えたのが原因と説明されるが、企業成長のエンジンを切り捨てる以外に解決策は無かったのか?消費者は一度味わった便利さは決して手放さない。つまり必ずや競合が名乗りを上げて陣取り合戦は続く筈。大きな飛躍のための屈み込みであれば良いのだが・・・。

7. 【17頁 投資情報】任天堂、時価総額6兆円 9年ぶり回復 「スイッチ」けん引

20日の東京株式市場で任天堂株が3日続伸し、株式時価総額は2008年9月以来9年ぶりに6兆円の大台を回復した。3月に発売したゲーム機「Nintendo Switch」がけん引役となり業績拡大が期待されている。この時価総額は上場企業全体ではゆうちょ銀行(6兆2955億円)に続く11番目となる。任天堂はカリスマ創業者であった山内氏の後を継いで、2002年に若干42歳の岩田前社長が代表取締役社長に就任し、2008年9月に時価総額6兆円の大台に達したことがあったが、その岩田前社長も2015年に急逝され苦戦が続いていた。これは嬉しいニュースだ。