今朝の日経朝刊(8/17)によれば、トランプ大統領に対して米国4軍のトップも背を向け始めたらしい。増々トランプ大統領の周りは人手が足りなくなりつつある。米軍最高司令官の孤立という、ちょっとこの先を予想しずらい状況になってきた。

1. 4軍トップも人種差別への批判の声を上げた

記事は「米南部バージニア州での白人至上主義団体と反対派の衝突事件を巡り、トランプ米大統領は「双方に非がある」との発言を撤回せず、混乱は続いた。与党・共和党の指導部や経済界だけでなく、陸海空と海兵隊の4軍トップも人種差別への批判の声を上げた。」(日経新聞朝刊8/17より引用)と伝えており、昨日までの段階より更に一歩大統領の孤立化が進んだことを報じている。

2.  ヘイト問題、人種問題は最も米国でデリケートに扱わないとならない問題

ご承知の通り、米国は多種多様な人種で構成されているだけでなく、過去には南北戦争のような歴史があり、それらを克服して今の強いアメリカの民主主義社会がある。事実本土に行けば、白人ばかりに見える都市が中西部あたり(主として共和党支持エリア)に無いわけではないが、まずコーストサイドは驚くほど肌の色の種類が多い。これは結果として全ての組織に当て嵌まる状況で、学校、企業、団体そして軍の全てが多種多様な人々で構成されている。シリコンバレーあたりのハイテク企業に行けば、カラード・ピープルと呼ばれる白人以外の方が多い印象を受ける(日本人は残念ながら少ない)。だからこそ、産業界のリーダーは、自社の状況を考えて助言団体に参加することから身を引いた。軍隊を取りまとめる点においても、これは全く同じ。

3. カラードのみならず、白人からも強い非難

この国で大統領が白人至上主義団体を非難しなかったことで、一気に大統領は白人以外からは本心で嫌われたであろう。また当然白人至上主義を支持する白人が沢山いるわけではなく、それが証拠に被害者は止めに入った白人女性だったことは、白人の多くにも背を向けられた筈だ。現実問題として、今の米国に差別が無いわけではない。ただ実際にそうした差別が今でもあるからこそ、表面では徹底的に差別が否定されるのが米国の現実だ。あまりにもトランプ大統領は大統領としての思慮に欠けたが、今やそれを止められる人が誰も居なくなったかにも見える。

4. もし今、米国が一枚岩でなくなったとすると怖い

世界最大最強の軍隊を率いるのは米国大統領である。その米国の軍隊は陸海空に加えて海兵隊の4軍で組織され、最高司令官は米国大統領である。何事も上官には絶対服従であり、鉄の規律が軍隊の指揮統率の要だとすれば、今回、4軍のトップが揃って最高司令官に反旗を翻したことは異例の事態を越えて大変な事態だ。つまり、公に上官批判をしたのと同様だからである。大統領には4軍の司令官を罷免する力がある。逆に言えば、それを恐れずに4軍の司令官が揃って行動を起こしたという事は、今のワシントンの状況がどうなっているのかを如実に表している。事実、大統領の側近中の側近であり、ホワイトハウスを規律によって立て直すことを託されたケリー首席補佐官ですら、大統領をコントロール出来ない。報道官を通じて文言を吟味するのが通常なのに、ツイッターで勝手に他にも呟いているようだ。

5. 最高司令官の命令を4軍が無視するリスクをどう織り込んでいくか?

4軍が自ら国内で何かを興すようなことは無いであろう。しかし、逆に敵対的な国から見たら、今ぐらい米国の軍事組織体系に隙が見えている時も無い筈である。恐らく金正恩最高指導者は手を叩いて喜んでいるに違いない。地政学的なリスクがあちらこちらに存在する今、この問題は下手をすると最も今後の国際社会に取ってリスクのある話になったかもしれない。

これを受けて、NYダウは前日比274.14ドル下落して21,750.73、S&P500は2,430.01(△38.10)、ナスダック総合指数は何と△123.19(△1.94%)の6,221.91まで下落している。