今朝の日経朝刊(8/11)を見れば、もう興味も半分薄れた東芝の記事が一面を飾る一方で、日本企業の4-6月期決算、或いは1-6月期の半期決算などは作られたかのように良好。しかし、その傍らで米国株式相場は3日続落。朝刊からは高まる北朝鮮情勢不安に主要米株価指数は5月以来の大幅安(NYダウ 21,844.01 前日比△204.69)となった緊張感は伝わってこない。

1. 朝刊の締め切り時間の影響だけでは説明出来ない

お盆休み初日の11日、帰省する電車や飛行機の中で、日経新聞だけを読んでいる市場関係者はまだ寛いでいるだろう。一方、高速道路の渋滞の中で、家族からの不況を他所にラジオのニュースを聞いている市場関係者はソワソワしてしまっているかも知れない。しかし、渋滞中の運転中にスマホでニュースを確認するのだけは、危険だから止めてくださいね。

2. 日経平均は0.05%しか下落しなかったが、高まる北朝鮮情勢不安で揺れた海外市場

今朝の朝刊では有効求人倍率もバブル期並みを超えるとか、機械受注残高が高止まりだとか、4-6月期の企業決算のみならず、景気が良さそうな話が紙面を賑わし、北朝鮮情勢に関しては、一面の中ほどに小さく「迎撃ミサイル、中四国配備へ調整 政府、北朝鮮「島根など通過」予告受け」という記事と、2面に「米朝、威嚇やまず」と他人事のような記事が掲載されただけ。あとは集団的自衛権で迎撃できるかなど、どこか長閑な記事が少々あるだけだ。資本市場はと言えば、日経平均も僅かな下落(△0.05%)だけで済ませ、為替も110円台を回復して終わった。一方で、今朝の米国株式市場は5月以来の大幅安となり、円も109円台へと再び上昇した。ここ暫く動きの悪かったシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティ指数(VIX)は4月以来の水準に急上昇し、俄かにテンションが高まってきていることを示唆している。

3. 一般に海外の情報に疎く、遅効する癖のある日本

先週一週間を米国内で過ごしたが、ホテルの部屋で観れるニュース番組の殆どが連日トランプ問題を伝えていた一方で、電子版で見る日本のメディアのそれは、不思議なくらい平和な感じ(永田町の現在の政治問題などは長閑な状況のなせる業)に見えて違和感が強かった。昨日の東京市場の動きも、隣国の狂人が本土の上を通過するICBMを4発も発射すると言っているにもかかわらず、あたかも「通過して落ちてこないなら関係ないか」的な対応で終わったように思う。お盆に絡めて夏休みの市場関係者も多いのだろうが、市場が空いている限り、情報は幾らでも手に入る世の中だし、呑気なお休みモードに成り切ってはいけないと思うのだが・・・。市場の変化はそうした間隙を突いてくることが多いのも事実。

4. 東芝問題はもうそれほど重要ではない

東芝が日本を代表する総合電機メーカーであったことは事実だが、今となっては監査法人から適正意見も取れないボロボロの企業であり、「限定付き適性」などと言う、極めて意味不明な監査意見と共に出された結果は見るも無残な多額の債務超過。それでも稼ぎ頭の半導体事業を売却して、当座の債務超過を帳消しにすることだけ考えているのだから、同社の経営が如何にダッチロールし切っていることは誰の目にも明らかだろう。なぜそこまで上場維持にこの期の及んでも拘るのか?「天下の東芝」の時代がまだ忘れられないのか?

社長の記者会見時の表情や様子を見ても、それが社長の属人的キャラクターなのかも知れないが、少なくとも私にはそうした企業のトップとしての緊張感や受け止めている責任を重く感じている表情には見えなかった。

死肉に群がる最後の肉食動物が居るように、その東芝株に群がるヘッジファンドなどもあるようだが、それは投資でも投機でさえも無い。見たり、評価したりに値する行為ではない。

5. 平和ボケ日本だからこそ出来る今の世情

「下手の考え休むに似たり」とは昨日申し上げたが、さりとて朝鮮人民軍戦略軍が朝鮮中央通信を通じて「北朝鮮が中距離戦略弾道ミサイルの火星12を同時に4発発射し、米領グアム島への包囲攻撃を行う計画を真剣に検討している」と伝えたことには、もう少し驚きと緊張感を持った方が良いのではないか?少なくとも、火星12という小型核弾頭を搭載しているかも知れないミサイルを、日本の島根、広島、高知の各県の上空を通過させると言っているのだから。これに対して、日本政府はどう対応するのか、自衛隊の迎撃態勢はどうなっているのか、万が一、国内に着弾してしまった場合の被害予想はどの程度なのか、などなど、メディアにも真剣に伝えて貰いたいと思うことは山とある。

これを受けて世界最強の軍隊の最高司令官であるトランプ米大統領が相手の金正恩氏について「理性の欠けたこうした人物との健全な対話は可能でない。絶対的な力だけが影響を与える」と言っていることの意図するものはないかを、ディベート形式でもいいからもっともっと世論に伝えるべきではないか?ゾンビ企業の話や、芸能人の不倫話など、どうでもいい話だ。それとも、既に危険過ぎるので報道管制でも出されているかと疑いたくなる。

6. 海外市場はやはりバケーションでもそれなりに対応した

8月のこの時期、日本人よりも夏休みのバケーションに外人が力を入れるのはご承知の通りだが、海外市場の方がまだ動いた。少なくとも、北朝鮮との物理的距離が日本よりも遠い市場の方が動いた。つまり投資判断を市場に伝えた外人たちが居たという事だ。平和ボケと言ってしまえばそれまでなのだが・・・。嘗てのドリフターズ、いかりや長介さんの真似で言えば「駄目だこりゃ」というところか。