今朝の日経朝刊(8/8)の企業関連の記事には、諸々面白い話が載っていた。企業総合面におけるマツダ、SUMCO、日産に関するそれと、企業1に小さくあるデンソーの記事だ。

1. マツダはやはり技術に拘り続けた、いぶし銀の様な会社

マツダとトヨタの資本提携の話の記憶も新しい中、同社が2019年に投入する新型エンジンの内容が発表された。11年に投入したスカイアクティブ技術を大幅改良し、燃費が2-3割改善、環境にも更に優しい(CO29割減)エンジンとなる。英仏が2040年にガソリンエンジンもディーゼルエンジンもその販売を禁止することを表明し、EVブームが叫ばれている(テスラはやや揺れているようだが・・)中で、やはり浮足立たない姿勢を表明してくれた。同社には、広島本社やその周辺工場を含め何度も足を運んだことがあるが、印象は「技術に拘り過ぎて営業下手な会社」だった。ちょうどフォード傘下に入っていた時にも訪問したが、後にFord Motor本体のCEOとなったMark Fields氏にもお会いすることが出来た。彼はマツダからFordに持ち帰ったもののお陰で、本体のCEOまで上り詰めたのだろうと正直思っている。それくらい、彼もマツダを当時から褒めていた。日経の記事にも書いてあったが、やはりロータリーエンジンを発電機として搭載したHVも発売するらしい。同社の強みは、ロータリーエンジンに拘り続けることで、燃焼室形状と混合気の基礎技術に秀でたところだと思う。HVやEVなどは、潔くトヨタと協働、自前主義は貫かない潔さ、正にいぶし銀のような会社である。

2. デンソーさん、また半導体とかやるんですね

もう知らない人も多いと思うが、昔デンソーは携帯電話を作っていた。自動車部品のメーカーがどうして携帯電話など作るんだとアナリスト達からの評判は余り良くなく、撤退すべきだと言われ続けていた。事実、ビジネスとしては成功したとは言えないが、彼らは黙々と携帯電話を作り続けた。ある技術系の部長にその本心をこっそり確認したところ、電機メーカー品質では許されない自動車部品としての電子装置の基礎技術習得が狙いだといわれた。利益を出さないことは許されないが、それ以上に、耐熱、耐塵、耐振動などの極悪な環境下で「リブートしてください」という普通のパソコンのようなエラーを起こさないものを開発するにはどうするかという使命を帯びていたのが実態で、それはその後のデンソーの大きな財産となった。そのデンソーが半導体の開発・設計を担う新会社を作るという。これまた本当に面白い話となってくるだろう。

3. SUMCO、半導体ウェハーの生産能力増強

半導体産業というと、どうしても回路設計やCPUやメモリーの製造といった部分、或いはそれらを司る半導体製造装置関連企業が着目されやすいが、そもそも半導体を作るためには、あの円盤状のシリコンウェハーという素材が必要不可欠である。最も川上の部分だ。多くの人が円盤状のシリコンウェハーは見たことがあるだろうと思われるが、その元は銀色の巨大なソーセージのようなシリコン・インゴットと呼ばれる、大きな棒状のシリコン単結晶だ。それをスライスして、表面処理して、漸くシリコンウェハーとして半導体屋に販売される。現在主流の300ミリウェハーに使われるインゴットは、その単結晶の太さが300ミリ超、全体の長さは約10メートル程度はある。まるで鍾乳石を人工的に作っているような作業だが、正にシリコンサイクルに大きく値段が左右されるため、ほぼ約10年間、新規投資は凍結されてきた。そのSUMCOが生産能力を増強するということのインプリケーションは大きいものがある。

4. ゴーンさんの判断は吉と出るか、凶と出るか

日産は自前の電池事業を中国の投資ファンドに売却することを決めた。これは吉と出るのか、凶と出るのか。参考になるのはかつてのSONYの動きかも知れない。SONYがVAIOというパソコン・シリーズ、それもノートパソコンの方でデザインの美しさから一世を風靡出来たのは、自前のリチウムイオン電池事業を持っていたからだ。その会社はソニー・ケミカルという直系子会社であったが、半導体のベアチップ実装用の異方性導電膜のテープを作るなど、小粒だが同社にとっては正に金の卵となった会社であった。ソニー・ケミカルが細い丸棒状のリチウムイオン電池を作ったからこそ、VAIO505というソニーのパソコンビジネスの牽引役となるモデルを作ることが出来た。やがて同社はソニー本体に吸収合併されることになるが、そのバッテリー事業は近時村田製作所に譲渡される予定だ。そして今、SONYはVAIO事業自体も売却してしまった。ノートパソコンのアッセンブリー・メーカーで特徴を出そうと思ったら、電池はキーデバイスであった筈。鶏と卵のような話だが、EVにおけるバッテリーも似たところがあるのではないだろうか?