米国産輸入牛肉が緊急輸入制限されると聞いて驚いた。それも1995年に発効したウルグアイラウンドで導入された緊急避難的な措置だった筈だと言う。すなわち農家が成長していない前提で作られた制度が残っているわけだ。これを農水省が機械的に行うことを許すかどうかは、正に政治の問題。メディアも加計問題など些末なことで騒ぐより、野党も騒ぎ易いように、もっと分かり易く現状どうあるべきかを質すべきではないか。

1. USビーフの評価は消費者サイドで変わってきている筈。

数年前に日本にNYのステーキハウス「Wolf Gang」(多分、ハワイ出店がきっかけで日本でも有名になったと思うが)が上陸して以来、日本人のUSビーフに対する認識は大きく変わったのではないか?霜降りの「口の中で溶けてしまうよう」という表現がよく使われる国産高級ブランド牛のステーキは、正直言って、私は個人的に好みではない。すなわち「脂ぽ過ぎて食べきれない」。一方、USビーフの赤身ステーキ、塩コショウをばっちり掛けて、ちょっと表面が焦げた印象のそれを思い浮かべる時、頭の中では赤ワインがセットになって食欲を刺激する。

2. 新しいUSビーフのステーキハウス、NYから上陸

肉食激戦地の六本木に、NYの有名ステーキハウス「BENJAMIN STEAK HOUSE」(残念ながら、NYでは食べたことが無い)が上陸したことは、早耳筋には聞こえていることと思うが、サーロインステーキとフィレステーキが一度に味わえる骨付きTボーン・ステーキは、熟成肉で一声を馳せた「Wolf Gang」が日本に定着させたと言っても過言では無かろう。注文の仕方が「Steak for Two(二人前)」などの言い方も同様で、今や鉄板焼きのサイコロステーキみたいなものより、お洒落な若い人達には人気と思われる。

3. 狂牛病の時にUSビーフが無くなり、吉野家が食べられなくなった時の悲しさ

かつて英国初で狂牛病が流行り、USビーフにもその影響が出たとのことで、やはり輸入制限が掛かったことがある。牛丼は日本の霜降り牛では作れない。豪州産の牛肉でもやはり味が違う。数年後、漸く解禁になった時に吉野家ファンが列をなして牛丼を食べに行ったことは記憶にまだ新しい。

4. 日本のマクドナルドのハンバーガーが美味しくないのは、USビーフでは無いから

アメリカで食べるとあんなに美味しいファーストフードのハンバーガー。肉汁一杯のダブルクォーターパウンダーでも、ペロリと食べてしまうが、それもUSビーフのなせる業。日本のそれはどうしても好きになれないが、アメリカで食べるハンバーグは、どのファーストフードに入っても、まず間違いなく日本よりも美味い。やはり郷に入れば郷に従え、ローカルフードは、ローカルな食材を使うべき。クアアイナを日本で食べると、やや味が違って感じるのは、雰囲気のせいかもしれないが・・・。

5. 昔の感覚でUSビーフの輸入制限など、農水省の考え方は古過ぎる

見てきたように、日本人の生活、取り分け若い世代の生活には既に深く浸透した筈のUSビーフを、1995年のウルグアイラウンドの決定を振りかざして機械的に輸入制限するとは、あまりに「官僚的」な所作。日本人の味覚は確実に変わっている。そしてその根っこにある発想が、日本の畜産農家の保護の為であるならば、よりその決定は笑止千万である。コメの自由化についても、高い補助金を出して減反政策を続けるよりも、どうして輸出にガンガン回せという発想に繋がらないのだろうか?爆買い中国人が、ウォシュレットと共に買っていたのは日本の電気炊飯器。それすなわち、日本のコメの炊き方が美味しいからであり、原材料であるコメそのものを大量に輸出すれば良い。減反政策と補助金というのは、農水省の古い発想であり、政治家の票集めの為でしかない。そのつけは全て国民に税金として回る。

6. 社会保障も含めて、現代風に、そして未来志向に変えるべき

現在の健康保険組合の財政を圧迫しているのは、老人医療保険の為の拠出金であり、今後大企業向けへより負担を増やすという。年金しかり、健康保険しかり、すべて現役世代と後世につけを回そうとする発想はどうにかならないものか?畜産農家やコメ農家を補助金(税金)漬けで助けることを考えるよりも、その原因を質し、どうしたら現代に即した制度にし、後世に繋がる日本にするのかを農水省のみならず、政治家も安倍政権の倒閣ばかり考えていないで、真剣に議論して欲しい。それでこそ、日本の政治。50年後に2/3になってしまう日本人の人口問題を前提に、もっともっと真摯に取り組んで欲しいものだ。きっとこのままだとトランプ大統領は激怒する筈だ。