今朝の日経朝刊(7/27)を全体を通じてのみならず、このところの企業面の報道を見ていると、今年の京都(企業)の夏は暑くなりそうだと思われる。これは良いことだ。
1.京都企業って?
京都の企業と言ってまず思い出されるのは、日本電産、任天堂、村田製作所、京セラ、ロームなどなどであり、京都はある意味、日本のシリコン・バレーと呼べるようなハイテク産業集積地だ。任天堂は言わずもがなのゲーム機メーカーであり、最終消費者に繋がっているが、多くの京都企業はどちらかと言うと黒子の存在。ただ、村田製作所のセラミック・コンデンサーに代表されるように、それは世界のトップシェアを握る電子部品メーカーだけに、単なる黒子とは訳が違う。彼らの供給する部品が無い限り、スマホやパソコンに代表される多くのハイテク機器が生産不能に陥る。日本電産が作るモーターが、身の回りにどの程度あるかと調べてみたら面白い。驚くほど、今やそこら中にある。
2.どんな分野がどうして強いのか?
セラミック・コンデンサーの実物を見たことがある人はご存知だと思うが、回路基板の表面についているゴマ粒のような小さな存在がそれ。製作中にくしゃみでもしたら、全部吹き飛んでしまうだろうなと、思わず馬鹿なことを考えてしまうような小さな部品。しかしCPUや通信モジュールなどの高周波機器が発する電気的なノイズを消去するには、どうしても無くてはならない存在。おおよそデジタルと名が付くものである限り、その基板上には必須の存在と言える。そして品質のばらつきが許されない、極めて高いリクワイヤメントが要求される。だから日本企業がどうしても一歩リードしてしまうと言える。
世の中デジタル、デジタルと言われて久しいが、京都の企業の中で面白い存在なのがローム。ロームはデジタルの企業というより、アナログの企業である。どんなに世の中のハイテク機器のデジタル化が進行しようが、人間がアナログである限り、アナログ⇔デジタルの橋渡しをするニーズは絶対に消えない。以前、ロームにとっての危機感は何かと聞いたことがあるが「アナログ技術者の不足」ということだった。理科系大学生の多くが華やかなデジタルの世界を目指してしまうので、優秀なアナログ技術者を確保するのが悩みの為だと明かしてくれた。これは米国企業のアナログ・デバイスなどを訪ねた時にも、同様なコメントが聞かれた。
3.日本企業全体も研究開発費が増えているというが・・・
今朝の新聞一面には、日本企業の4割が研究開発費を今期最高にするとある。最初に勘違いしたのは「研究開発費を4割増しにする」ということ。これは日本も凄いことになると思ったが、それは誤解であった。4割の企業が研究開発費を増やすという事で、そのボリュームは僅か5.7%程度である。米国のように、産学共同(スタンフォード大学など特に有名)で基礎研究から行った上に、個々の企業が多額の研究開発費を投じて最先端を突き進んでいる現状と比較すると、何とも日本企業のそれはまだまだ水準が低いと言える。日本では、どこか研究開発費と言うのはムダ金扱いされやすく、何かあればそく削減の対象となり易い。不断の研究開発こそ、企業が長く生存する生命線の筈なのだが。ただそれでも、僅かであっても研究開発費を増やしているという事実はGoodインフォメーションであることに違いはない。
ただ企業の研究開発費の増加を見る上で注意すべき点が二つある。
① 単に目新しい金食い虫への研究開発費では無いかどうか?或いは用途が明確かどうか?
② 本当に研究開発に使う予定の増額かどうか?単に、収益予想のバッファー代わりに帳簿上仮置きしている数値ではないかという事だ。
4.だから京都の夏が暑くなる
その意味において、村田製作所などの京都企業は安心してみていることが出来る。その継続的な研究開発の成果が、今日の高いシェア確保に繋がっていることは明らかだからだ。一方で、注意しながら見ておかなければならないのは、今日的に言うと、AI向け研究開発費の増加が著しい会社であろう。如何にも最先端の研究をしていますという体を装いながら、蓋を開けてみると無意味な投資であったという事が起こりかねない。研究開発は地に足が付いたものでなければならないのは言うまでもない。
その意味では、トヨタグループやマツダのそれは手堅いと評価することが出来るが、言わずもがな、京都企業では無いので、この話はまたあらためて。