今朝の日経朝刊(7/26)、マーケット総合の「スクランブル」に掲載されている表を見て愕然とした。そこには中小型株の年初来上昇率と予想PERと、やはり日経平均株価指数の年初来上昇率と予想PERが比較されていた。個別のパフォーマンス良好な中小型株のそうしたデータと、全業種を内包する大型株の指数の比較では、当然にして日経平均などの指数の方の分が悪くなるのは当然の話なのだが、それにしてもその差が激し過ぎる。

因みに、日経平均株価は年初来上昇率と予想PERがそれぞれ4.4%と14.3倍に留まるのに対して、サンプルとして掲載されている5銘柄のそれは45.5%~90.9%、11.5倍から14.7倍となっている。本来ならば日経平均と比較するのは中小型株の何らかの指数を用いてあげないと、或いは、この5銘柄を選択した具体的な理由を明記しないと、インデックスと異常データの比較という可能性を排除出来ないので、鵜呑みに「ハイそうですか」と信じるわけには行かないが、それでも日経平均のデータ方がどう贔屓目に見ても芳しくないのは事実である。

本文中でも指摘されている通り、昨今の日銀のETF買いに加えてのパッシブ運用のブームが、少なからず大型株市場の市場本来の役割を失わせていることは由々しき事態である。これには証券取引所や、証券業協会などももっと魅力ある市場づくりということで真摯に受け止め対応すべきではないだろうか。市場本来の役割、機能と言えば、より良いものが高く買われ、より悪いものは売られる。最悪は市場からの退場を促されるというものだ。そうでないと、わけのわからない「アクティビスト」と言われるような暴れん坊を増やして、より市場の魅力を損なう結果にさせてしまう可能性を排除できない。

最近の内閣支持率の話では無いが「株価が○○円を下回ると黄色信号で、××円を下回ると倒産株価だ」などという言い方をかつてはしていた。事実、90年代後半から始まった銀行破綻ブームの時期には、その株価を見て、預金取り付け騒ぎ紛いのことが起こったりしていたのだから。しかし今現在はどうかと言えば、東芝のような状態になっても上場を維持し、また逆に「半導体部門が上手く売却出来れば立ち直れる」などと、話がコンプリートする前から買われるストーリーが生まれてきたりしている。本来ならば債務超過の上に、決算発表が立て続けに遅れるような事態(監査法人が首を縦に振らないような状況は異常)になれば、株価の額面割れは必至であり、銀行の融資も超慎重姿勢になり、余程のウルトラCが無い限り退場とならざるを得ない。それはどんなに過去に輝いていた時代があった企業であったとしても、それが市場の厳しさであり、市場の正常な役割/機能の本来あるべき姿と言える。それでこそ「あそこは一部上場企業だから安心ね」という評価も生まれる。

だが、市場全体を買う日銀のETF買いや、或いはパッシブ運用のような「ほぼ丸ごと全部」買いのような動きがあるせいで、本来退場勧告されるべき企業の株まで買われてしまう。これでは市場が機能しなくなって当然である。逆に言えば、パッシブ運用の最大の恐ろしさはここにあると言える。すなわち、駄目な会社、本来は投資すべきではない会社の株まで買ってしまって投資効率を落とすということである。貴重な虎の子の資金で、ゾンビ企業を作ってしまっているという事だ。

本来、ベンチマーク・インデックスをそのままなぞるのがパッシブ運用やETFではあるが、ほんのひと工夫して「ゾンビだけは除くETF」や「ゾンビ候補は避けるパッシブ運用」のような運用をすれば、この問題は解決出来る。当然にしてそのパフォーマンスはベンチマークのそれを上回る筈であるから、これは勝てるアクティブ運用ということにもなる。大手運用機関は市場の魅力を保つためにも、率先してそうした運用方法を取り入れるべきではないだろうか?恐らくこうした運用をするETFやパッシブ運用が「どうやらABC企業を組入から外したらしい」という噂が流れるか、或いはディスクロージャーで発表するなどすれば、それこそ市場は再び本来の役割/機能の最低ラインは取り戻すことが出来るであろう。

機関投資家の議決権行使の内容開示といったことが話題になっているが、その程度のことでは運用機関が本来のフィディーシュアリー・デューティーを果たしていると言えるのだろうか?随分と穏便な措置のようにも思える。寧ろ、「弊社は運用するETF及びパッシブ運用において、ABC企業と、XYZ産業は業況の改善が見込めるまで投資しないことを決定しました。またPQR企業についてはガバナンスの改善が見極められるまで、通常の半分だけ投資することにします」と開示した方が、市場が市場としての厳しさを示すことが出来るのではないだろうか。その時、冒頭の「年初来上昇率と予想PERの比較」は日経平均と中小型株の間でもだいぶ改善してくるように思える。また情報量の一番多い大型株への投資についても、その魅力が回復してくるものと思えるが如何なものだろうか?