無料版の始めに
こちらは、Fund Garageのプレミアム会員専用の「プレミアム・レポート」の再掲版の記事です。公開から半年以上経った記事になりますが、当時の市場の空気と、普遍的な知見を皆様にお届けできれば幸いです。より最新の情報や個別企業の解説に関心をお持ちになられた方は、是非プレミアム会員にお申し込みください。
前置きが長くなってしまいました。ではこの後、「プレミアム・レポート 2021年11月8日号」の一部を無料抜粋という形でご覧頂きましょう。
———–<以下、プレミアム・レポートより抜粋>———–
斜に構えた予想や想定は外れるもの
メディアの予想はネガティブ・インディケーター
自民党総裁選の予想に続いて衆議院選挙の結果も殆どのメディアの予想は大きく外れた。普通なら出口調査を終えた段階で発表される開票速報開始段階では事前の空想からはかなり実勢に近いものに修正されて発表される筈なのだが、それでも誤差と呼べるようなレベルではなく、テレビ各局の予想と結果との乖離は惨憺たるものだった。幸いなことに、この選挙結果を受けて週明け11月1日の日本株式市場は日経平均ベースで前日比754円39銭もの値上がりとなって新政権誕生へご祝儀を送った。
たとえば海外投資家にとって母国ではない投資対象国のことを常識的に考えた時、
その国はどうあるべきで、どうなると困るのか
を考えれば、市場動向も把握し予測し易いだろう。自国以外の真実の情報を取ることは当然簡単なことではない。日本のメディアが報じていることが、この国のリアルだと海外投資家の目には映ってしまうということだ。メディアが報じることは「外から見たこの国の印象」となってしまうからだ。いつもお伝えしているように、投資は大多数と同じ考えで順張りをしていても決して上手くは行かない。長期的にはファンダメンタルズ、短期的にはマジョリティの需給の反対側に幸があるのだから。
先週の日米市場の騰落率
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最高値更新続く米国株式市場
大方の事前予想では、11月のFOMCでテーパリング(中央銀行による金融緩和の出口政策)開始が決定され、雇用統計も強ければ、インフレ懸念も手伝って早期の利上げ観測が浮上して金利は上昇、それに伴ってハイテク株を中心に株式市場は軟調になるということをメイン・シナリオに描いている人が多かったように思う。少なくとも現状を「バブル」だと喧伝する人達の多くはそのロジックにあったと思う。
ただ実際は金曜日の雇用統計の結果を受けても米国株は3指数共に上昇し最高値更新となった。そしてS&P500は元々の上昇トレンドに回帰したように見える。一方、恐怖指数と呼ばれるS&P500のインプライド・ボラティリティは16.48と悪くない水準にある。つまりそれなりに緊張感も持っているということだ。
その背景にある投資家がみるべきものは、やはり米国金利の日々の動向、すなわち債券市場の日々の動向だ。イールド・カーブと時系列チャートの両方を下記にご覧頂こう。まずはイールド・カーブだが赤い線で描いたものが最新の先週末金曜日、当然「雇用統計」も発表された段階だ。赤い線が一番下にあるということは、このひと月間で金利が一番低い状態だということだ。勿論、テーパリング開始も周知の事実、雇用統計も悪くない結果が周知されたあとだ。
そしてもうひとつ単純に各残存期間別の利回りの時系列を表示したチャートを次に示す。米労働省が5日発表した10月の雇用統計によると、非農業部門就業者数(季節調整済み)は前月比53万1000人増加し、失業率は4.6%に低下した。夏場に鈍化した労働市場の伸びが再び加速し、コンセンサス予想の45万人増を上回る伸びを示した。更に 8月と9月の就業者数はいずれも上方修正され、9月は速報値の19万4000人増から31万2000人増に、8月は36万6000人増から48万3000人にそれぞれ修正された。10月の失業率は4.6%と前月の4.8%から改善。予想は4.7%だった。労働参加率は横ばい。前月は低下していた。民間部門の平均時給は前年同月比4.9%上昇し、伸びが加速した。つまり金利が跳ね上がると予想されていた材料が全て出揃ったということだ。
事前の大方の予想では、これを受けてテーパリング開始と利上げがセットになると言われていたが、現実にはイールドカーブでも、年限毎の時系列で確認しても、金利は低下した。週中11月3日の金利は2年債が0.47%、5年債が1.19%、10年債が1.60%そして30年債が2.02%となったが、週末金曜日は2年債が0.13%、5年債が1.06%、10年債が1.45%で30年債が1.89%。実に全期間の債券で金利は低下している。これを受けて、米国株市場ではハイテク株、取り分け半導体関連株がよく値を上げた。正に予め喧伝されていた状況の正反対の動きになったということだ。
結局のところ米国の金利水準は、パンデミックが始まる直前の2月末頃までの水準までは戻したが、まだCovid-19ということを知らなかった長閑な時代までは戻り切れなかった。ただ最悪な経済状況になることを危惧して強烈に金融緩和をしている状態はひとまず正常化させようという水準に戻っただけだ。雇用統計については、失業率は相当元に戻ってきたが、それでも、米国の就業者数は新型コロナウイルス流行前の水準を420万人下回っており、コロナ禍が起きずに雇用拡大が続いていた場合に比べると、それ以上に少ないことになる。このことが物価安定と可能な限り完全に近い雇用の達成を責務とするFRBにとって、利上げを急がない主な理由となっているようだ。そしてパウエル議長は「まだ利上げすべき時期ではないと考えている」と言明し「最大雇用を達成するためにまだなすべきことがある」と言っている。
恐らくパウエル議長が再任されずにタカ派の議長が登場するか、もう少し最大雇用への道筋が見えてくるまで金利の実質的な上昇は無いだろう。為替見通しも、株価見通しも、当然にしてこの影響を大きく受ける。
資本主義が維持されることを好感した日本市場
FRBがテーパリング開始か否かで米国市場は右往左往していたが、日本は何よりも衆議院選挙の結果を好感した。資本市場にとって最悪な状態になることはひとまず回避されたことを市場は素直に評価したものと思われる。
下記に示すは日経平均、TOPIX、そしてその比率を割り算したNT倍率だ。青と緑の線が更に元気にリバウンドを続けていることは喜ばしい。こうした時は一般的に日経平均株価の方が上がり易いNT倍率が急騰する場合が多いが、今年の2月頃のような状況では無いことは安心感がある。また米国市場のハイテク株が強いことを考えれば、日本でも値嵩株の方が値上がりし易いのは自明の理だ。
だが、そんな思惑的なテクニカル議論とは別に、現在始まっている7‐9月期決算、或いは2021年度上半期決算の内容を反映して、バリュエーションの水準が改善したことは正にファンダメンタルズ改善の話なので、単にテクニカルに株価が上昇したと考える必要は無さそうだ。実際下のチャートを見て貰えば、赤いラインで示した予想PERが株価の上昇とは反比例して低下している。これは最新の決算発表内容を取り入れての変化だから安心して良い。予想PERは先週木曜日から金曜日になる段階で、日経平均株価で14.19倍から13.79倍へ、東証一部全銘柄で15.97倍から15.64倍にまで低下している。
実際、同水準の予想PER13.74倍を付けた10月8日の日経平均株価は何と28,048.94円でしかない。配当利回りも1.99%にまで上昇している。従って、単に選挙結果を見た買戻しによって株価が上昇しただけとは言えない。仮に予想PERで14.5倍まで市場が買い上がれば、日経平均株価は31,136円まで上昇してもおかしくは無いことになるからだ。
再び新型コロナウイルスの新規感染者の増加が起きている
<FG Free Reportでは割愛>
注目の決算から拾い読み
トヨタ自動車の決算
<FG Free Reportでは割愛>
注目のビジネス・トレンド
いよいよ始まったWindows11のインストールに感化される
6月に公表され、いよいよ順番に無料アップデートのお知らせが始まっているWindows11へのアップデート。私が使っているパソコンでも下記の表示が出てしまうものは当然あるのだが、現時点において「何ら不自由なく使えるパソコンを買い替えるニーズ」は喚起されるのかというのが素朴な疑問でもあった。ただ実際にこのメッセージが出るのを見ると気持ちが良いものでは無く、何らかの手を打ちたいと思い始めてしまった。つまり、まんまと私自身はパソコンの買い替え需要の1人となってしまったということだ。
私はノートパソコン以外は基本的にこの約25年間、Windows95の時代から自作し、何が実際に変わるのかを試し、実感し、それを投資判断に活かしてきた。パソコンを自作することの一般的なメリットは、通常全てのパーツを丸ごと買い替えて更新する必要が無いコスト・メリットがある。更に例を挙げると、音楽や動画、或いは各種ドキュメントを保存してあるドライブはそのまま使うことが出来る。これだけでも相当にコストも転送時間もカット出来る。
今回、Windows11への対応で何が「実行するための最小システム要件を満たしていない」と引っ掛かるかと言えば、CPUの世代がギリギリひと世代足りないだけだ。これによってセキュリティ対応の可否が起きてしまうということで、CPUの実質的な演算処理能力の問題ではない。それでも、もしWindows11にアップデートしようと思うのならばCPUを交換して世代を新しくしないとならないのだが、その為にはマザーボードの交換も必要となる。下記の写真が新しく届いたマザーボードの写真。ASUS製の Socket AM4対応 「ROG STRIX X570-E GAMING」 というモデルだ。規格はATX。ASUSは台湾のマザーボード・メーカーで、SONYのVAIOはASUS製を利用してたし、確かDellなどもその筈だ。チップセットはX570。
それでもはじめはCPUとマザーボードだけを交換し、そのまま再度OSのクリーンインストールをして使おうかとも考えた。ただ真剣にCPUの品定めなどを始めると、オタク系の悪い癖が出始め、結局はあれもこれも交換したくなってしまった。仮想通貨のマイニングはしないし、デジタル・コンテンツの作成を頻繁にするわけでも無い。ただオタクの本性として、スペックだけはある程度高くないという許せないという性が邪魔をし、結局はかなりハイスペックなパソコンを組むことになってしまった。
CPUはインテルCorei7からAMD Ryzen7へ
一番の今回のこだわりポイントはAMD製のCPUを使うことだ。AMD製のCPUはかつてAthronというシリーズがインテルのPentium4の牙城を脅かした2000年代初頭に使ったことがある。だがその後はCore2Duo、Corei7とインテルばかりを乗り換えてきた。それは結局インテルが製造技術において暗黒時代に陥った最近までは、半導体の技術のリーダーであったことは疑うことない事実であり、インテルの技術動向を追うことこそが半導体の最先端ビジネス・トレンドの把握に非常に役立ったからだ。
だが自前の製造に拘って技術の壁に突き当たってしまったインテルに対し、現在はCPUはAMDが先頭を走り、グラフィックボード(GPU)はエヌビディアがリーダーだ。
何もかも違い、結局は丸ごと新作を一台追加する
<FG Free Reportでは割愛>
まとめ
パンデミックの今後をどう読むかがひとつの鍵
一番の問題はパンデミックの行方がどうなるかだ。前述したようにとても世界的にはこのまま収束に向かうとは思えず、欧州の段階で何とか抑え込めるか、再度拡大するかだ。経済が巻き直されている米国での現状については、既報「【特別レポート】留学生が見たリアルな米国の新型コロナ事情」などをご参考頂ければ思う。また米国での人々のコロナに対する考えというのもリアルに分かるというものだ。間違いなく言えることは、日本の反応は「超ヒステリック」としか言いようが無い。それは国内の状況についてだけではなく、世界の動静についてもだ。
ただそのおおらかな米国でも、テーパリング開始や足元の四半期決算発表などを受けて、ポスト・パンデミックを睨んだドタバタが始まっている。ロビンフッドのようなオンライントレードなども手伝って、個別の銘柄の動きは結構荒っぽい時がある。
ポジティブな方に荒っぽい展開となっているのがイーロン・マスク氏が率いるテスラ(TSLA)だろう。レンタカー会社ハーツ・グローバル・ホールディングスがテスラを2022年を通じてテスラ車の保有を増やす約42億ドル(約4800億円)規模の計画を発表した事などもポジティブに後押しし、株価が急騰したことなどもあり、イーロン・マスクCEOは人類未踏のお金持ちになったなどと騒がれている。だがこれをバブルと評価する人がいることも事実であり、実際トヨタと比較すると、テスラは第3四半期に24万1300台を販売したが、時価総額で同社の約1/5しかないトヨタは逆に減産を強いられ、下方修正したと言っても、なんと今年も1029万台以上を販売しようとしている。その差は単純に考えて10倍以上だ。HEV、PHEV、BEV、FCEVを合わせた電動車だけでも265万台とテスラよりも多い。予想PERで比較するとトヨタ(7203)は10.1倍でしかないが、テスラは291.88倍にもなる。ヘッジファンドならば、トヨタ自動車の株を買って、テスラの株を売るペアトレードを仕掛けてみたいと思うレベルだろう。
だが、それでもテスラは間違いなく実車を販売しており、既に利益は出ており、PERも計算出来る。それは充分に評価出来る。その傍らで、実は多くの「夢語り」企業が実際に公道を走行出来る電気自動車を生産していない。EV関係に拘らなければ、このパンデミック騒ぎの中で人気になった企業に利益がまだ出せずにPERも計算出来ないところは沢山ある。バブル崩壊で一番底無しに転落するのはこの手の会社の株だ。
例えば、ホームフィットネス事業を展開するペロトン・インタラクティブ(PTON)などは全く利益を計上出来ていないところで先般更なる売上の下方修正をしたことで35%以上も叩き売られた。始まったという見方が出来なくはない。それでもまだ55.64ドルもの値段がついているから米国市場の懐の深さを感じさせるが、ポスト・コロナを考えた時にはこの手の銘柄のダウンサイドは歯止めを考え難い。同じようなケースは日本株にもある。
一方、このペロトンの下落につられた会社にビデオ会議システムのZOOM(ZM)がある。私自身、ZOOMは実際によく利用しているが、大事なことは同社は既に利益を出しているということだ。そのPERは80.12倍、これはamazonの86.22倍よりも低い。ビデオ会議システムの競争は確かにMicrosoftのTeams+などもあり激化はしているが、日本でもビデオ会議の代名詞として「ZOOMしましょう」と言われるぐらいとなった。何よりも、実際に利益を出しているかどうかということは、極めて重要な投資判断のポイントだ。
もしこの先、更にポストパンデミックを真剣に市場が考えるようになった時、恐らく幅広くバリュエーションの議論は起きる筈。その時、投資家として動揺しないためにはポートフォリオの中身を冷静に見直しておくのも必要なことだ。
「何故、何を追い掛けて、この投資をしているのか」
という基本は投資を始める時にメモを取っている筈。それを見返すだけで今を再評価出来る。
———–<以上、抜粋終了>———–
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このあと「My favorite Companies List(株主となって所有したい企業のリスト)」
が続きます。
(編集:Fund Garage編集部)
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