FG Free Report オラクル決算が示したAI市場の構造変化(9月15日号抜粋)

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オラクルのFY2026Q1決算をうけ、同社の株価は異例の急騰を見せました。

しかし、この市場の反応は目先の数字ではなく、「構造の変化」によるものだったのです。

今回はオラクルの決算内容をもとに、AIインフラ構造がどのように変わっていきつつあるのかについて、プロのファンドマネージャーが解説します。

投資での資産形成をお考えの方も、既に投資を始められている方も、ご自身の知識と照らし合わせながらご覧ください。

(Fund Garage編集部)

オラクル・エヌビディア・パランティア「AIファクトリー三位一体」の構造

オラクル決算発表後に時間外で+33%上昇という驚愕

2025年9月9日にオラクル(ORCL)が第1四半期決算を発表した直後、時間外取引で株価が+33%も急騰した。さらに、翌日の本市場でも+35.95%となり、異例の上昇を記録した。

この数字を目にした投資家の多くは、まず「一体何が起こったのか」と首を傾げたに違いない。なぜなら、決算内容だけを表層的に眺めれば、EPSは市場予想をわずかに下回り、売上もコンセンサス未達だったからだ。

それでも、株価は上がった。つまり、市場が本当に反応したのは「将来の構造変化を裏付ける数字」であり、直近の収益指標ではなかったわけだ。これが今回の決算の本質である。

オラクル決算のポイント①RPO急増──未来需要の先取り契約

おそらく今回の決算で最も注目を集めたのは、残存履行義務(RPO)が四半期で3,170億ドル増加し、合計で4,550億ドルに達したという事実だろう。前年同期比で359%増という異例の伸びは、クラウド業界全体を見渡しても過去に例がない。

RPO(Remaining Performance Obligations)とは、すでに契約済みながらまだ提供されていないサービスの合計額であり、将来の売上の予約残高を意味する。つまり、オラクルはすでに数年先までのクラウド利用分を契約ベースで確定させたことになる。

ここで重要なのは、オラクルがもはやデータベース・ソフトウェアの会社の域を超えた点だ。今のオラクルは、OCI(Oracle Cloud Infrastructure)というクラウド基盤を世界規模で提供する事業者なのである。

さらに注目すべきは、その契約相手だ。そこには、OpenAI・xAI・Meta・NVIDIA・AMD といったAI業界の大物企業が名を連ねた。つまり、AI革命の中核プレイヤーがオラクルのクラウド基盤を今後数年にわたり押さえているというのが現状だ。

では、この動きの背景は一体なんだろうか。

それはズバリ、AI推論需要の急増である。AIモデルは学習が終わっても、運用フェーズに入れば毎日、膨大な回数の推論を繰り返す。さらに今後、AIの社会実装がさらに広がれば、この推論需要は爆発的に増大する

顧客はその将来のひっ迫を見越して、「これから数年分のGPUやネットワークを確実に利用する」契約を前もってオラクルに入れているのだ。

こうしてRPO急増は、オラクルが「クラウド後発組」という過去のレッテルを脱ぎ捨て、AIファクトリーの不可欠な構成要素へと変貌したことを示す最も強力な証拠となった。

オラクル決算のポイント②マルチクラウドDB+1529%増──CSPとの共生戦略

RPO急増に加えて市場をさらに驚かせたのは、マルチクラウドDB収益が前年比で1529%も増加したという数字である。

オラクルの「マルチクラウドDB」とは、AWSやAzure、GCPのデータセンター内部にOCIリージョンを“埋め込む”形で提供する仕組みである。具体的には、ユーザーはクラウド基盤としてAWSやAzureを利用しながら、その環境の中でOracle Databaseを使うことができるということ。

長年、大企業の基幹業務システムはOracle DBの上に構築されてきた。これをAWSやAzureへ完全移行することは、コストもリスクも高く、現実的ではない。だが、このマルチクラウドDBなら既存システムを温存したまま最新のクラウドサービスを利用できるため、「Oracle DBを使い続けられる安心感」と「CSPの利便性」を同時に享受できるのである。

つまり、マルチクラウドDBはいわばAIファクトリーの“データの血管”として機能するパイプラインとなっているのだ。

オラクルは従来、AWSやAzure、Google Cloudといったハイパースケーラーと激しい競争を強いられてきた。しかし現実には、競争ではなく共生によって、自らの強みを最大限に発揮する戦略に舵を切っているのである。

オラクル決算から見えてきたこと①ソブリンAIとパランティアへの接続

今期決算では、Dedicated Region(専用クラウド・リージョン)と呼ばれるユニークな展開モデルについても言及されていた。

これは、顧客専用のクラウド環境を構築し、その運用をオラクル自身が担うという仕組みだ。たとえば、顧客の施設内や特定国のデータセンターに設置することで、物理的にも論理的にも隔離されたクラウド環境を提供できる。

この「専用クラウド・リージョン」は、いま世界的に注目されているソブリンAI(Sovereign AI)の流れに直結している。ソブリンAIとは、AIの学習・推論に用いるデータを国家の主権下に置き、国外流出や外部依存を避ける取り組みを指す。

ということは、ここで、パランティア・テクノロジーズとの親和性が生まれるのだ。

同社は、企業や政府が保有する膨大なデータを「オントロジー」と呼ばれる意味体系で整理し、AIや人間が即座に解釈できる形へと変換する。

つまり、

  • オラクル:データを安全に保管・供給
  • パランティア:そのデータに意味を与え、意思決定へと変換する

という構造、言い換えれば、オラクル=データの血管、パランティア=意味を与える脳という構図が現実に動き出しているのだ。

今回の決算ではパランティアの名前は直接言及されていないが、オラクルとパランティアの連携は今後重要性を増すことが予想できる。

※パランティアのオントロジーについては、以前の無料記事『パランティアはなぜ強いのか?オントロジーが生む参入障壁』を参照。

オラクル決算から見えてきたこと②エヌビディアとの関係

そして、この2社の構造を成立させるために不可欠なのが、エヌビディアである。

先述のRPO急増が物語っているように、これからのAI時代において推論需要の拡大は無視できない課題だ。(実際、2026年3月に行われたエヌビディアのGTC2026では、「常時推論」の文脈で語られている)

そしてもちろん、推論の裾野を支えるには、膨大なGPUリソースが必要である。

エリソンCTO は、決算の中で「高速なネットワークにより処理時間が半分になればコストも半分になる」と語ったが、これはGPU世代の進化と直結する理論だ。つまり、

GPU性能が向上する→ 推論コストが下がる→ 利用が増える→ インフラ需要が拡大する

という需要と供給が相互に加速するループが形成される。したがって、オラクルのRPO急増とNVIDIAのGPUロードマップは表裏一体であるといっていいだろう。

オラクルは「血管」として推論のキャパシティを顧客に提供し、NVIDIAは「筋肉」として演算性能を拡大する。そこにパランティアのオントロジーが接続されれば、データは数値から意味へと変換され、意思決定を駆動する「脳」として機能するのだ。

まとめ:「AIファクトリー三位一体」の実像

今回のオラクルの決算で明らかになったのは、RPOやマルチクラウド戦略、Dedicated Region といった「未来を保証する数字と仕組み」が株価を動かしたということだ。

さらには、オラクルが「クラウド後発組」という従来の評価を脱し、AIファクトリーの血管系として不可欠な存在へと位置づけを変えつつあるという事実もハッキリした。

これまで投資家は、AWSやAzureといったハイパースケーラーとの競争でオラクルが劣勢に立たされると見てきた。

しかし実際には、推論という定常的かつ膨大な需要が立ち上がり、その血管としてのオラクル、筋肉としてのエヌビディア、そして脳としてのパランティアが不可欠な役割を果たし始めている。

これこそが「AIファクトリー三位一体」の実像であり、未来の成長はむしろこれからが本番なのである。

編集部後記

こちらは、Fund Garageプレミアム会員専用の「プレミアム・レポート」の再編集版記事です。
公開から半年以上経った記事になりますので、現在の情勢とは異なる部分がございます当時の市場の空気と、普遍的な知見の皆様にお届けできれば幸いです。
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