FG free Report エヌビディアの「Blackwell」を知る(11月25日号抜粋)

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おそらく半導体周辺を扱う企業に投資しているみなさまなら、エヌビディアの「Blackwell」は聞き馴染みのある名前でしょう。

しかし、実際に「Blackwellって、何?どんな形のもの?」と問われると正確に答えられる方は少ないかもしれません。

今回は、半導体銘柄が専門のプロのファンドマネージャーがエヌビディアの「Blackwell」について解説します。

(なお、本記事の画像はhttps://nvidianews.nvidia.com/multimediaを元にFundGarageが作成しています)

投資での資産形成をお考えの方も、既に投資を始められている方も、ご自身の知識と照らし合わせながらご覧ください。

(Fund Garage編集部)  

「画像処理半導体」から「Blackwell」のエヌビディアへ

これまでのエヌビディアという会社は、「ゲーム用画像処理半導体のエヌビディア」と呼ばれてきた。しかし今や、「Blackwellのエヌビディア」へと急速な変化を遂げている。では「Blackwell」とは、一体なんだろうか。

そもそも「GPU」とは、「Graphic Processing Unit」という、本来はまさに「画像処理装置」という意味だ。ところが今のGPUは1999年にエヌビディアが「GeForce 256」をリリースした際に、初めて「GPU」という用語を使った時とは、かなり違うものとなっている。

“We are a data center scale AI infrastructure company.”

「当社はデータセンター規模のAIインフラストラクチャ企業です」

とジャンセンCEOが説明(※2024年11月に行われたテレフォンカンファレンスにおいて)した通り、今の時代の中心で最も耳目を集めている「GPU」とはつまり、データセンター向けアクセラレーテッド・コンピューティングの要としての「GPU」だ。

それを端的に証明しているのが、下のチャートだ。

これはエヌビディアの祖業とも言える伝統的な「GPU」(「GeForce 256」の流れを継ぐいわゆる正常進化系の「GPU」)のセグメントである「Gaming」と、AI革命の中心であるデータセンター向けアクセラレーテッド・コンピューティングを司るセグメントである「Data Center」の収益トレンドを示したものだ。

Jensen CEOが使い分ける、5つの「Blackwell」

今回の決算発表カンファレンスを聞いて私が気づいたことは、ジャンセンCEOは「Blackwell」について語る時、少なくとも5種類は違う言い方をしているという点だ。その5つとは、

  • 「Blackwell」
  • 「Blackwells」
  • 「the Blackwell」
  • 「The Blackwell systems」
  • 「our Blackwell products」

である。従来の製品、つまり「GeForceシリーズ」を語る時は、基本的に「GeForce」のひとつだけだった。だが、「Blackwell」についてはこんなにも使い分けがある。

そして、その使い分けの意味がリアルに理解できるか否かが、今とこれからのエヌビディアを評価する上で、とても重要になってくると私には思えてならない。

この5種類の意味をお伝えする前に、「Blackwell」の実態を画像を用いて説明していこう。

①「Blackwell」の原点

これは半導体チップそのものであり、実際にはこの状態のものを外から見ることはできないが、中央に2枚のGPUチップが並び、その周辺に8つのHBM(高帯域メモリ)がある。

この大きさは、ジャンセンCEOの手で上下に挟んで「これが新しいGPUのBlackwellです」と目の前に突き出せるサイズのものだ。

②「NVIDIA GB200 Grace Blackwell Superchip」

 

前掲①のBlackwellが2個と、その下にも似たような半導体チップが乗っかっているが、これが「Grace」という「CPU」だ。エヌビディアの製品であるが、アームアーキテクチャで設計開発されている。

③「GB200 Superchip Compute Node」

そして②のボードが2枚、「ブレード・サーバー」と呼ばれる箱組の中に納められる。「NVIDIA GB200 Grace Blackwell Superchip」が二基乗っているので、これで「『GPU』が4個乗っている」とも表現される。

また、データセンタで「GPU」が「GPU」として機能するためには、下の写真の両サイドにあるような「ネットワークSwitch」が必要になる。

④「NVIDIA GB200 NVL72」(一般的には「サーバーラック」と呼ばれる)

それぞれが「ブレード・サーバー」と呼ばれる形の箱に収まり、それがサーバーラックに納められている。この72という数字は「NVIDIA Blackwell」が72個、搭載されているという意味。「72÷4=16」ということで、③の「GB200 Superchip Compute Node」が16枚、ラックに差し込まれている。

⑤「NVIDIA DGX SuperPOD With DGX GB200 System」

④の「NVIDIA GB200 NVL72」を複数台繋げ、さらに液冷のシステムを接続した状態。2024年3月に実施されたGTC2024などでも紹介された写真だ。

 

最後に、やっと⑤がデータセンタに並んで「FULL DATA CENTER WITH 32,000 GPUs」となった状態が下の写真。つまり、これが32000個の「GPU」がひとつの「GPU」として稼働する「AI Factory」となる。

だいぶ前振りが長くなってしまったが、「Blackwell」の5つの呼び方について説明するには、ここまでのことが、ある程度理解してからでないと実は難しい。逆に、ここまでの建付けが分かってしまうと、「なるほど」と思っていただけると思う。

1. Blackwell

特定の製品やシステムではなく、NVIDIAの最新GPUアーキテクチャ全体、またはそのコンセプトを指す。

2. Blackwells

Blackwellアーキテクチャを採用した複数のGPU製品やシステムを指す。特に、大量に出荷される製品群やシステムを強調したい場合に使われている。

3. The Blackwell

Blackwellの具体的な製品の特徴や特定の用途について説明するときに使われることが多い。

4. The Blackwell systems

Blackwellアーキテクチャを基盤とする具体的なシステム(ハードウェアやソフトウェアを含む全体)を指す。通常、カスタム構成やデータセンターでの使用例を強調するときに使っている。

5. Our Blackwell products

NVIDIAが提供するBlackwell関連製品全般を指す。製品ライン全体を示し、顧客へのコミットメントや自社技術の強調する時に使っている。

 

…言うまでもなく、市場はここまでは未だ落とし込めていない例の方が多いだろう。

まとめ

いかがだっただろうか。

GPUPCパーツの1つとしての画像処理半導体から、AIファクトリーまで進化しており、一口にGPUBlackwellといっても様々な形態を指すことがお分かりいただけただろうか。これが最も重要なポイントであり、ここを理解していないと決算説明が腑に落ちないだろう。

また、エヌビディアといえばサプライチェーン問題がたびたび話題に上る。

しかしこれだけ複雑かつ緻密なシステムを抱え、また巨大なサーバーラックをどこにでも整然と並べられるわけではなく、各設置環境に合わせたエンジニアリングが必要なGPUなのだから、サプライチェーンが問題視されるのは当然だと言えよう。

したがって、メディアのマイナスな報道に踊らされる必要はない。

本記事の内容が、みなさまの投資活動に役立てば幸いだ。

編集部後記

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公開から半年以上経った記事になりますので、現在の情勢とは異なる部分がございます当時の市場の空気と、普遍的な知見の皆様にお届けできれば幸いです。
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