FG Free Report 「テクニカル分析」と「ファンダメンタルズ分析」(10月14日号抜粋)

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「株は安く買って高く売る」のが、株式投資の鉄則です。

しかし時には、「今は本当に高い(安い)状態なのだろうか」というように見極めが難しい場合もあります。

今回は、株価の値動きを予測するにあたり必要な「テクニカル分析」と「ファンダメンタルズ分析」という手法について、プロのファンドマネージャーが概念をお伝えしていきます。

投資での資産形成をお考えの方も、既に投資を始められている方も、ご自身の知識と照らし合わせながらご覧ください。

(Fund Garage編集部)  

株は安く買って、高く売るのが鉄則

「テクニカル分析」と「ファンダメンタルズ分析」の違い

投資家ならば誰もが「株は安く買いたい」と考えると思うが、その「安い」という定義について、読者のみなさまはどう捉えられているだろうか。

私が今まで数多くの機関投資家や個人投資家と話してきた経験を踏まえて正直に言えば、この質問に対して理論的な答えを持っているのは、株式担当のファンドマネージャーくらいだと思う。例えば機関投資家の方であっても、実際にポートフォリオ(=ファンド)をマネジメントする投資判断の実務をしている人と、実務とは距離がある仕事の人(役員を含む)では、やはり理解度に差がある。

たとえば、ごく短期間に株価が2倍になった銘柄があったとしよう。ここで論点になるのは、同じ期間にその企業の収益が2倍以上に伸びていた場合、その企業の株価を高いと考えるか、安いと考えるか、ということだ。

そしてそれを考える時に多くの人が用いるのが、「テクニカル分析」だろう。

テクニカル分析とは、過去の値動き(移動平均線などのチャート)から将来の株価動向を分析する手法である。つまり、テクニカル分析だけを頼りにするのなら、期間が短期間であればあるほどその分析結果は「高い」と評価される。

ただし同時に、この分析方法には問題も浮かび上がってくる。それは、そこにファンダメンタルズの判断、つまり「ファンダメンタルズ分析」が一切入っていないという点だ。

「ファンダメンタルズ分析」とは、その企業の収益や財務状況(ファンダメンタルズ)をもとに将来の値動きを分析するやり方を指す。

先の例え話に戻ると、仮にその企業の利益も2倍以上に膨らんでいるならば、ファンダメンタルズ分析において株価は高いことにはならない。もしその先も同程度以上の伸び率で収益が伸びるとするならば、むしろ株価は「割安」と判断される。

ただ、テクニカル分析ではサイコロジカル(市場参加者の心理)な視点を取り入れることができるのも事実だ。これは平たく言えば、人間の「強欲」との戦いを合理的に評価することであり、すなわち「ここまで上がったのだから、ひとまず利益を確定しておこう」というような心理が働くかどうかということだ。

短期間に株価が2倍にもなれば、とりわけ過去のバブル崩壊や○○ショックのようなイベントリスクの具現化で痛い思いをしたことがあるような投資家ならば、そこで利固めに走っても何ら不思議はない。しかし反対に、保有していた銘柄が何らかの理由で急落すれば、「ここまで下がったら、流石に安値だからナンピン※1のチャンス」などと考える心理もある。

このようなサイコロジカルなものによる売り買いの需給を反映するのが、テクニカル分析の特徴だ。

 

※1ナンピン(難平買い)とは、手持ちの株価が買値よりも下がった時、さらに買い増して平均購入単価を下げること(=株価が上昇すればナンピンをする前よりも利益を多く得られる)。

実際に数値で見てみる

さて、以上を踏まえたうえで、下記の表を見ていただきたい。これは、日経平均株価を予想PER※2の高いものから順番に上位30位までを並べたもの(左)と、下位30位をスクリーニングして並べたもの(右)だ。

トップのコニカミノルタ(4902)の予想PERは先週末現在で322.18倍、次の日野自動車(7205)は198.07倍と極端に高いが、問題はそこから下にある。多くが日経平均変動寄与度上位※3に出てくる銘柄になるが、指数全体の予想PERが15.77倍の時、ほぼその2倍かそれ以上となっている。

反対に右側の一覧を見ると、日経平均採用銘柄の中ではマツダ(7261)が予想PER3.72倍で最低となっている。それ以降の値位は「値がさ株」には程遠いが、流石に日経平均採用銘柄であるだけに、名の通った銘柄ばかりが並んでいる。繰り返しになるが、指数全体の予想PERは15.77倍だ。にもかかわらず右側に並んでいるのは、その半分から約1/4までの銘柄となっているのだ。

これらを指数のマニピュレーション(市場操作)の為に買っても、実際に日経平均株価はビクともしないだろう。この現象が、私が表現としてよく用いる「指数マジック」だ。つまり指数全体に均してしまうと、PER(バリュエーションの代表的指標)が仮に15.77倍でも高くなさそうに見えるが、実際は中身で見ると、指数変動に影響し易い銘柄のPERは平均の2倍以上も高いことがわかる。

ただしこれは全てファンダメンタルズの話で、テクニカルな話ではない。指数がこの先下がるとするならば、主に左側の高PER銘柄が売られ易いだろう。何故なら、高いからだ。

 

※2PER(Price Earnings Ratio)は、「株価収益率」と呼ばれる。「株価÷1株当たりの純利益」の計算式で求められ、株価上昇への期待が高いほど、この数値も高くなる傾向にある。

※3…日経平均株価は、全225銘柄の単純平均で算出されるため、株価の高い銘柄(値がさ株)の影響を受けやすい。つまり、「日経平均変動寄与度上位に出てくる銘柄」=値がさ株。

まとめ

いかがだっただろうか。株価が高い・安いの判断は、分析の仕方によって異なるということがおわかりいただけたと思う。

テクニカル分析自体を私は否定するわけではないが、現役のファンドマネージャー時代から、私はほとんどと言っていいほどテクニカル分析を使ったことがない。やはり、株価はファンダメンタルズだと信じて疑わないからだ。というのも、ある一定期間があれば株価は必ず収益トレンドに収斂することを知っているからだ。

つまり、投資を成功に導くためにはやはり右肩上がりのビジネストレンドを追うことが必要不可欠になる。

編集部後記

こちらは、Fund Garageプレミアム会員専用の「プレミアム・レポート」の再編集版記事です。
公開から半年以上経った記事になりますので、現在の情勢とは異なる部分がございます当時の市場の空気と、普遍的な知見の皆様にお届けできれば幸いです。
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