FG Free Report 投資家の心得:四半期決算の読み方と株式売買のポイント(9月9日号抜粋)

Facebook
Twitter

毎度好評の「FundGarage投資家の心得シリーズ」。8回目の今回は、株式投資の不安を払拭するための秘訣についてです。

投資活動を行っていると、特に企業が3ヶ月ごとに発表する四半期決算(あるいは半年ごとの中間決算)期、市場が荒れて株価が大きく変動する場面によく遭遇します。そんな時、私たち投資家の心理は不安定なものになりがちです。

では、その悩みを軽減・解消するにはどうすれば良いのでしょう。プロのファンドマネージャーがポイントをお伝えします。

投資での資産形成をお考えの方も、既に投資を始められている方も、ご自身の知識と照らし合わせながらご覧ください。

(Fund Garage編集部) 

自信を持って投資活動を進めるためには?

四半期決算の基本の読み方をマスターする

四半期決算の基本情報の中に、「YoY(=Year Over Year, 対前年同期比)」と、「QoQ(=Quarter Over Quarter, 対前四半期比)」というのがある。

前者は、前年の同じ時期と比較した場合の増減具合を確認するもので、その目的は季節性を排除することにある。ただ、これが有効なのは、”established industries(長期的に名の知られた既存の産業)”で継続的な状況をはかりたい時だ。例えば、Amazon.comやWalmartなどのリテール(小売)部門の場合。年末のホリデーシーズンと新年最初の四半期を比べるのではなく、前年の同じ季節と比較分析する。

一方、前四半期同期というのは、連続した四半期ということになる。だから、「季節的に夏休みは売上が落ちます」というような業種の場合、たとえ対前四半期同期比ではマイナスになっていても、前年と比べると「今年の夏は頑張っているね」というような結果が表れるということだ。

なぜ、あらためてこんな内容をお伝えしているかというと、先週のNVIDIA決算について強気派と弱気派の意見が対立した原因は、前年同期比の見方にあると思われるからだ。

前回のレポート『AIトレンドに終わりはあるのか?〜NVIDIA決算を振り返る〜』のおさらいをしておくと、NVIDIAのFY2025Q2決算は、

  • Non-GAAP EPS(1株当たりの純利益)は$0.68で、市場予想を$0.04上回った。
  • 売上は過去最高の$30.04B (前年比+122.4%) で、市場予想を$1.31B上回った。

であった。しかし、過去決算のプレスリリースを見ると、確かに「対前年同期比」の数字が過去3四半期は連続して+200%超となった一方で、今期は+122%止まりだった。※revenue=売上

  • (FY2024Q2)Record revenue of $13.51 billion, up 88% from Q1, up 101% from year ago
  • (FY2024Q3)Record revenue of $18.12 billion, up 34% from Q2, up 206% from year ago
  • (FY2024Q4)Record quarterly revenue of $22.1 billion, up 22% from Q3, up 265% from year ago 
  • (FY2025Q1)Record quarterly revenue of $26.0 billion, up 18% from Q4, up 262% from a year ago
  • (FY2025Q2)Record quarterly revenue of $30.04 billion, up 16% from Q1 and up 122% from a year ago

ただ、ここで下のチャートを見てほしい。

今期はFY2025Q2であり、YoYの比較対象はFY2024Q2だ。FY2024Q2というのは、2023年5月~7月の業績である。

そして、ちょうどこの時期はChatGPTが市場でも話題になり始めた時期にあたる。つまり、今期はChatGPTをはじめとした生成AIに絡むGPUの収益が大きく計上され始めた時期との比較であり、今回の決算発表で前年同期比のパーセンテージが低くなってしまうのは自然なことだ。

むしろそれより、市場コンセンサスは上回っていて、実際の売上高は過去最高を記録しているというのが重要なポイントで、つまりNVIDIAの業績自体が悪化しているわけではないのだ。

このように、決算発表への「正しい」理解が市場にないから、今回「NVIDIAの成長率は鈍化している」という悲観論にあふれ、同社の株が売られたのだと私は分析している。

株を買うのは簡単、売るのは難しい。でも一番の難題は?

みなさんが投資をする上で一番難しいと感じるのは、いつだろうか。

それはきっと、投資対象を見つけていつ買うかを決める時ではないだろう。なぜなら通常、「ここに投資してみようかな?」と思う時には、自然と「その銘柄」の話題が耳に入るような立場や状況が周りにあるからだ。つまり、マインドセットはすでにポジティブ寄りであり、最後にひとつ必要なものといえば少しの勇気だけかも知れない。

逆に、「売る」という判断は、「買う」という判断の数倍難しい。なぜなら、「売る」というのは利益の確定をする行為であり、発注した段階でその後の価格変動からは無縁となるからだ。その後急落すれば「売っておいて良かった」とご満悦になれるが、その直後に急騰でもしようものならその喜びも束の間、下手をすれば損切りをした時よりも後味悪く、いつまでも引き摺るのが人間の心理というものだ。

ところが、投資の世界で一番難しいのは「Re-entry」、すなわち株式を売った後に「再参入」を決めることである。

ある程度ほとぼりが冷めるまでの時間経過があれば別だが、「あの日、あの時、いくらで売った…」という記憶が生々しい間は、前回売却した値段よりも高いところで「買う」という判断はなかなかできないだろう。ましてやそれが損切りだった場合の買戻しは、本当に難しくなる。入り口(買った時点)で、充分に納得がいくまで分析して腹を括った以上、損を出してまでもそれを売るという決断は、自己判断に対する間違いを認めることを意味する。にもかかわらず、また同じものを買い戻す、買い戻すべきだという判断は、更にそれの上をいくほど難しい。

こうした事態を避けるためのひとつの方策は、「まず半分だけ売ってみる」ことだ。半分にポジションをしたことで、心持は随分と楽になるはずだ。でも、完全に全部手放したわけではないので、不思議と頭の中では、たとえそれが屁理屈になっていたとしても、自分を納得させやすくなる。特に、買戻しせざるを得ない状況下では、「最初の買いはタイミングが悪かっただけだ」と銘柄選びまでは否定しないで済むかもしれない。

まとめ

いかがだっただろうか。

先週のNVIDIA決算結果をめぐっての市場の混乱は、やはり決算への理解度の差によるものだと言えるだろう。YoYとQoQの違いが、意外にも大きな落とし穴となっていたことが明らかになった。

そして不思議なことに、多くの投資家が「All or Nothing」と極めて潔い。つまり「0か100か」、何かあれば迷わず「全売却」をしてしまう。

だけど今回のNVIDIAの例のようにマーケットが荒れて、もし気持ちがハラハラして気になって仕方がないというなら、一旦半分だけ売ってみるという選択肢はありだと思う。きっと想像以上に気持ちは軽くなるはずだ。

編集部後記

こちらは、Fund Garageプレミアム会員専用の「プレミアム・レポート」の再編集版記事です。
公開から半年以上経った記事になりますので、現在の情勢とは異なる部分がございます当時の市場の空気と、普遍的な知見の皆様にお届けできれば幸いです。
また、こちらは無料版記事のため、最新の情報個別企業の解説についてはカットしております。
<FG Free Report では割愛>となっている箇所に関心をお持ちになられた方は、是非、下記ご案内よりプレミアム会員にお申し込みください。

有料版のご案内

Fund Garageのプレミアム会員専用の「プレミアム・レポート」では、個別銘柄の買い推奨などは特に行いません。
これは投資家と銘柄との相性もあるからです。「お宝銘柄レポート」とは違うことは予めお断りしておきます。お伝えするのは注目のビジネス・トレンドとその動向がメインで、それをどうやってフォローしているかなどを毎週お伝えしています。
勿論、多くのヒントになるアイデアは沢山含まれていますし、技術動向などもなるたけ分り易くお伝えしています。そうすることで、自然とビジネス・トレンドを見て、安心して長期投資を続けられるノウハウを身につけて貰うお手伝いをするのがFund Garageの「プレミアム会員専用プレミアム・レポート」です。